表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

人ならざるもの。

人ならざるものの独白。

作者: そんなり


「…っは、ぁ……」


 甘美で、蠱惑的で、扇情的な声が響く。

 異様に白くて細い腕が僕の髪を梳いて、頰まで滑り降りる。僕はその掌にすり寄って、柔らかくキスをした。手首をとって指を噛み、舌を這わせ、その存在を味わい尽くす。


 ーーあまい。


 そう感じた時、随分と昔に言われた言葉を思い出した。


『女の子はみんな、砂糖菓子でできてるのよ。あなたみたいな殿方を惑わすためにね』


 そう言った彼女は、僕とは違う男と結婚をした。

 幸せそうに手を組んで、幸せそうに子を見つめ、幸せそうに死んでいった。

 僕はそれを遠くから見守っていた。



「なにを…誰を思って貴方は、涙を流しているのですか……?」


 そう問われて僕は、意識を取り戻した。

 興奮と欲情で頬を上気させた、その視線に射抜かれた。


 ーーああ、言えない。


 別れには慣れたつもりでいたのに。

 お前ともいつか。

 そう思うと切なくて仕方ないなんて言えない。


「お前には、一生教えてやんないよ」



 不機嫌そうに顔をしかめながら、それでも僕のキスを拒まないお前が好きだよ。

 わかりづらい、お前の不器用な優しさが嬉しいんだ。


 だからこんな、情けない僕なんてお前には一生教えてやんない。


 優しいお前はきっと、僕を突き放すだろうから。

 そんなのは嫌だ。



 お前が死ぬまでは、そばにいさせて欲しいから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ