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ミーコ  作者: 相川 仁
8/8

ミーコ 第8話 完結

 夏祭り会場から事故現場までは近い。物の10分足らずでその場所に

辿り着いた。このトンネルには歩行者用の迂回路があって、ミーコも後

少し、10メートルも先の迂回路に入れば死なずに済んだんだ。


 やるせない気分でバイクを迂回路に停めた。迂回路は結構幅があって

バイク1台位は余裕で停められた。ミーコはここから見てるという。

それで良いと思う。先程沢山泣いたし、バカップルも繰り広げて、今は

澄んだ気持ちで事故現場に立つ事が出来た。


 カバンからカップ入りのババロアと花束を供えて線香にも火を付けた。

僕が祈る事ってなんだろう。膝立ちの姿勢で、目を閉じて手を合わせた。


「ミーコが沢山笑いますように。」


 その為に何ができるんだろうと思いながら、立ち上がった時、明らか

にヤバいスピードで車が突っ込んできた。


 忘れていた。ここはミーコの事故現場なだけじゃない。毎年の様に起

きる事故多発スポットだったんだ。


 白い車だった。ヘッドライトが眩しかった。僕も、僕もそうなのか。

幽霊と交わると死ぬという伝説は聞いた事があったけど、キスだけでも

アウトなのか?舌がまずかったのか?本当に事故の瞬間は時が止まって

走馬灯が駆け巡る。


 背中側から衝撃を受けて、ガードレールに叩き付けられた。また泣い

てる所を見られたく無かったので、ヘルメットを被ったまま祈ったけど、

これが無かったらヤバかった。鉄柱に頭をぶつけて意識が飛んだ。


 僕は大の字で倒れていた。起き上がろうとしたら、するりと脱皮みた

いに起き上がれた。ヤバイ。幽体離脱だ。ミーコは僕に馬乗りになって

泣き叫んでる。


「死なないで!死なないでよ!お願い誰か助けて!誰か!」


離脱しちゃった僕はミーコに見つけられた。


「出てきちゃ駄目だよ!馬鹿!馬鹿!馬鹿っ!」


 僕は凄い力で抱締められて、身体に戻った。その瞬間激痛を感じる。

痛いってことはまだ生きてるんだ。救急車のサイレンが近付いて来る。

ミーコは僕が出て来ない様に押さえ付けたまま泣きっぱなしだ。


 ごめんね。ミーコ。僕は泣かせてばかりだ。

また気を失ったけど、今度は離脱しなかった。大丈夫だよ。たぶん。


 気付くと病室のベッドだった。目をあけたらミーコがぐじゃぐじゃ

泣いてた。もう、目と鼻真っ赤じゃんか。


「あの時体に戻してくれてありがとう。」


左手が動いたので僕は左手でミーコの肩を抱いた。


 怪我は骨折6か所。酷くやられたけど、内臓と神経は無事で、後遺症

は無いとの診察だった。バイクは警察が保管してくれた。後はリハビリ

の日々だ。


 ミーコの様子がちょっと変だ。僕の守護霊にめっちゃ叱られて凹んだ

らしい。つーか、事故した時点で、俺の守護霊駄目なんじゃねーの?

ミーコは叱らないでくれって、どう言えば伝わるのか分からなかったか

ら、独り言で呟いた。


 それからミーコは毎日来てくれた。ただ、面会謝絶でもないのに、す

ぐに帰ってしまうのが不思議だったし。寂しかった。


「なんでいつも、すぐに帰るの?」


ミーコは笑って言った。


「だってここ、幽霊の先輩だらけで居場所がないんだもん。」

「え?」


 僕は周りを見回した。風も無いのに個室を仕切るカーテンが揺れた。


「またね。」


声を残して、ミーコは消えてしまった。









挿絵(By みてみん)

元は自分で漫画で描こうとしたネタでした。

バイクが描けなかったので挫折しちゃいました。


読了ありがとうございました。

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