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ミーコ  作者: 相川 仁
7/8

ミーコ 第7話 夏祭り

 夏祭りは割と大きな神社だった。鳥居まで続く参道は夜店が店を連ねていた。


 まさかミーコが浴衣姿だと思わなかった。慌てて僕も奥多摩周辺の店を探し

回って浴衣を用意した。ライダースーツと浴衣じゃ流石に合わないから。


 これは浴衣なのか?寝巻と書いてあったぞ。病院で御爺ちゃんが着る奴じゃ

ないのか?パッケージには床ずれ防止とか書いてあるし。


 でも他に無いから仕方なかった。なんとか夏祭りの浴衣のカップルになれた

と思う。病院から抜け出した患者と幽霊とか、勘違いされなければ。


 ミーコのはしゃぎっぷりが凄い。射的!輪投げ!ヨーヨー釣り!金魚すくい!

殆ど全部僕がやるだけなんだけど、大はしゃぎだ。一番喜んだのは綿飴だった。

綿飴は幽霊でも食べられるらしい。


 実際買って渡したら、みるみる減っていく。どうなってんのか、もう考える

のも止めた。


 綿飴を食べ終えて、ミーコと手を繋ぎ直そうとしたら、腕を組んできた。

もう僕たちはバカップルだ。開き直ろう。ミーコはもう開き直ってるんだし。

腰に手を回して無理やりキスした。綿飴の味がした。嫌だったかなと思ったら

キスのお代わりをねだってきた。


 何か・・ちょっと前までコミュ障だった僕には刺激強すぎるんですけど。

GOサインなんだよね。今度は長めに、ちょっと舌を入れてキスした。


 ミーコはデレデレで真っ赤だ。酔っぱらった人みたいに少しフラついてる。

ミーコにも刺激強いんじゃないのかこれ。たぶんさっきの学校のがファースト

キスだし。それは僕もなんだけど、違ったらまぁいいや。


 境内の奥は盆踊り会場だった。電球で光る提灯が幾つも連なって、いかにも

夏の風物詩って感じだった。


「どうする?ミーコ?踊る?」

「少しだけ、やろうよ。恐怖!死霊の盆踊り。」

「あはは!いいね!できる時にやらなきゃね。」


 僕達2人は飛込みで盆踊りの輪に加わった。踊り方なんか知らない。

前の人を真似るだけだ。何だか愉快だ。御霊を奉る盆踊りで幽霊が踊ってる。

当人はキャハハと笑ってる。


 凄くシュールな場面なんだけど、ミーコの笑顔で何もかも、「アリ」なんだ。

ミーコの笑顔を大切にしようと、僕は最初心に誓った。少しだけ、叶えてあげ

られたのかな。


 盆踊りの最後は東京音頭。これで夏祭りが終わる。夜店も店を畳み始めた。

僕はミーコの手を掴んで踊りの輪に入った。ミーコは少しムッとしたけど。


「思い出いっぱい作りたい。」


 僕のその一言で笑顔になった。実際本心なんだ。いつ消えるのか、いつまで

一緒に会えるのか、全く分からないんだから。最後の1曲は踊り通した。

不思議な達成感があった。


 祭りも終わって、僕とミーコは社殿の裏側に腰かけて、長ーいキスをした。

1秒でも長く、触れ合いたかった。バカップル全開でした。


「アキラ、これからどうする?」

「ここまで来たんだし、ババロアと花束を供えに行くよ。約束だから。」

「えへへ。ババロア♪」

「早く食べたい?」

「んーアキラが着替えてからでいいよ。」


 当たり前だ。こんなのでバイク乗ったら、チェーンに裾が絡まって即死だ。


「それじゃ着替えて戻って来るから。」


 夏祭り会場近くに隠したライダースーツに着替えて、数分で愛車のバイクと

共に帰ってきた。


「ミーコも行く?」

「うん。なんか少し嫌だけど。あそこ。」

「やっぱ嫌かぁ。まぁそうだよね。」

「アキラ、私、ちょっと遠くから見てて良い?」

「いいよ。全然オッケー。それじゃ行こうか。」


 僕はミーコをタンデムシートに座らせてバイクを発進させた。ノーヘルで

浴衣って、本来絶対載せないけどこれ、オバケだから。大丈夫でしょ。たぶん。


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