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『とあるサンタと召喚大戦』そして"最終回"へ――



さてさて、昨日に続きましていよいよこのとんでも物語も今回で無事に最終回を迎える事が出来ました。



そして。このクリスマスイブの大切な日を皮切りに契約を交わす大切なパートナー…その二人の運命は!?果たしてハッピーエンドに終わるのかっ!



そんな訳でっ



響『始まりますよっ』



    ◇◆



     π


 目の前で行われている残酷な殺戮劇が現実的に俺を襲う。

 たとえこれが只の"夢"――と言う一文字で済ませるのはあまりにもリアル的過ぎて。



「あのさ? 響。アタイね?…さっきはごめんなさい。まさかあなたがこの場所に来るなんて」



「それに――」



「ああ。分かってるよ」



 別に違う世界だからと言ってこのまま見過ごす訳にも行かず。今現在俺が腰を降ろすこじんまりとした空間。その狭いコクピット内で俺の隣から顔を出すカレンの息遣いが荒いのに気が付く。



 多分彼女も同じ意見なのだろう。逃げ惑う人々が二人が見下ろす映像期しに映る。その遥か先を仰ぎ、俺達の視界に入る何処かの駅ビルらしき箇所の一部が崩れ落ちる。

 どす黒く立ち込める煙の中を勢い良く飛び出す防衛軍らしき――いや。防衛軍なんかじゃない!



「まさか…ここは?」


「うん。私も今気付いたんだけどね。多分ここは別世界じゃなく…」



「「自分達の世界!!」」



 あり得ないような非現実に頭がくらくらする感覚を押し殺す。

 目の前の映像期しに見える破壊された街並みに所々見えるクリスマスを飾る景色。

 そして甲高いターボジェットサウンドを轟かせながら空対地ミサイルを巨大な化け物に向けて放つ航空自衛隊のF15戦闘機。

 下方からも市街地の一角から一斉に120ミリ砲弾を浴びせる陸上自衛隊の90式。


 しかし奴の深紅に染められた硬い甲羅は貫けず只闇雲に無駄に戦禍を拡大するだけのようだ。



 小さく舌打ちを促すカレンの表情に気付く。例えそれが只必然的であったとしても現にあの忌まわしき化け物は、紛れもなく彼女が招いた惨状なのだから。

 小さな肩を震わせ煮え切らない表情を押し殺すカレンの身体にそっと触れる。 暖かな温もりが手の平から伝わる。

 そして彼女の震える肩にあてがう俺の左手を。小さな彼女の右手が掴む。

 かなり力を込めているのかお互い住む世界は違う二人は手を取り合い決心する。



「ねえ響…」


「ああ。分かってる…奴を俺達の手で、元ある世界に戻そうぜ」



 一体どんな表情で彼女に対して告げたのか。俺のその一言を待ち侘びていたようで。カレンはコクリと元気良く頷き俺が腰を沈めるシートから一旦離れる。その背後にあるセカンドシートに腰を下ろし一呼吸置いてから周りを囲むコンソール等をか細い指を滑らせ読み上げて行く。


 え? まさか今現在俺が座るこれ。このシチュエーション何処かで――

 そんな思考を泳がす俺の真正面に見える計器類から、何故か先程前に出くわした彼。サンタの衣装に身を包むある人物の表情が映り、通信に割って入る。



『ふんっ。ようやく貴様とまともに会話が出来るようになったな…まずは一言礼を言うぞ少年』



「――え?」



『驚くのはまだ早いとは思うが…ここには絶望と言われとる闇が存在する』



「いや…あのですねっ! 話が良く分かんないんすけど」



『うむ。先ずは貴様が今現在乗り込んでいるこの機体は貴様がは良く知っている筈だ。このサンタクロスをね』



 俺が乗り込むこのマシン…思い出した! このリアル過ぎる街並み。そしてこのシチュエーション。

 俺が小学生の頃に住んでいた東京都吉祥寺だ。

 そして記憶にあるかどうか定かではないが…こいつの操縦法は、昔良くこの街のゲーセンで、馴れ親しんだ。全てが分かる!



『そうか――漸く思い出したか。貴様には早速悪いが目の前のあの化け物を退治し、既に失われた子供達の夢と希望の光を取り戻し――ぐはぁ』



「おい! サンタのおっさん。 どうしたっ。しっかりしろ!」



 既に子供達の"夢を"取り戻す為に待ち続けすぎたのか。厳しげな表情を俺に向ける。そして口元を押さえている右手を深紅に染め上げながら…絞りだす最後の一言が俺の心に深々と突き刺さる――『夢を取り戻し、お前自身が"サンタ"になれ』と…。



「ああ。その事なら心配ないよ、俺と"あいつ"カレンとであの魔物を倒し。そして失った夢の欠片を取り戻すさ」



「えっ? ねえ…まさかそれって――やっぱりアタイを魔物から救ってくれたあの時の響に戻ってくれたんだねっ! お帰りっ!」



「ん? まぁ…えっと。もう大丈夫だよカレン。本当にごめんな。今までええっと」



「んもぅ! 言わなくていいっ! なんだかアタイまで恥ずかしくなって来たじゃんかよ」



「あっはは。毎度の事だけどさぁ〜。今回も魔物退治。気張って行くよ! そしてみんなが待っている(うつつ)に無事に帰って来ようぜ!」



 その毎度となくテンプレになる一言を左隣のシートに腰を降ろすカレンに告げる。彼女は何故かそんな常日頃からの魔物退治でのセリフに何故か目尻に涙を浮かべコクリと頷く。



 一体俺がなにをしたんだ? なにかいじめる事をしたか? その疑問を投げ掛けようとカレンの表情を覗いた瞬間俺の唇に暖かな感触が走る。



「んなっ!?」



「んもぅ少しはましな反応して欲しいな。それに――この私との契約は絶対なんだから」



 何故か。特徴のある赤髪から突き出した両耳を可愛げに立たせながらかなり真っ赤な表情を向け俺に謎の契約宣言を投げ掛ける。

 意打ちを食らったとはいえその意味に優しく答えてあげる。

 こんな可愛らしく笑う笑顔をけして曇らしてはいけないと心に誓いながら、

 俺は両手に握る操縦桿に力を込め。目の前に未だ暴れ狂う魔物に向け、全力で立ち向かった。



 再びこの世界を、冷めきった子供達の夢を再び光を与えるために。

 そして目の前の魔物を倒し、今度は俺とカレンの夢を再び取り戻す為に――




    ◇◆




     м



「どうだ? カレンの様子は」


「うん。とりあえずは彼女の身体を乗っ取ってた魔物の排除になんとか成功したって感じかな」



 不安げな表情で今現在カレンの身体を抱き抱える私の後ろからじっと様子を伺う光雄と哲也。

 無理矢理身体事乗っ取られるって…一体どれだけのクラスの悪魔を召喚したんだよ。



 ふとそんなマイナス思考を押し殺しながら先程までうなされ気味なカレンの険しい表情が段々と穏やかになる様子に気付く。

 額に付着する脂汗を青いハンカチを懐から取出し優しく撫でる。

 ふと私が気付くと目の前で抱き抱える彼女の身体がぴくりと反応した。

 そっか――あちら側で響上手くやってんのか。

 その表情を治療の術式を行使しながら覗く。

 彼女の口元がやんわりと緩む。そこからこぼれた一言に、私は思わずクスリと苦笑した。

 やはりなんだかんだ言ってもあの今現在隣に寝かされている彼。響の事がよっぽど気掛かりなんだなぁ〜と――



「おいおいおいっ。なぁまさかこれって! 光雄さんもマリオンさんも見て下さいよ」



 突然私の背中が賑やかになる。私の後輩の一人。哲也が何気なくグレーのコートから手の平サイズのモバイルを片手に光雄と騒いでいるようだ。



 ったく…こんな大事な時にあんな物取り出して。

 イラつく気分を押し殺す。うん。ガマン――ガマンするんだよマリオンと自分自身に言い聞かせる。

 本当はこんな大事な時に背後で遊び惚けるバカ二人の首根っこを掴み思い切りぶっ飛ばしてやったらどれだけスッキリするねかと――



「くっ…いけない。いけないよっ」



 それこそせっかく治療の術で彼女の身体を蝕んだ魔物を排除している最中だっつーのに。ここで台無しにしてしまったら。再びあの魔物が…又々一からやり直さなくてはいけなくなる。


 その事を脳裏に踏まえて気分を押し殺すように私は背後ではしゃぐ"バカ二人"に投げ掛けた。



「てめぇぇら。いい加減にしねぇぇと凍り付けオブジェにするぞコラッ――」



「「いひっ!?」」



 そう――落ちついた言葉で…というか。はれれっ? なんか違う事告げちゃったのかな。何で二人して抱き合い固まりだすんだか。


 そんな事を首を傾げながら考えている最中――今度は私が抱き抱えるカレンの身体。そしてその隣側に寝かされている響の身体が再びぴくりと反応する。



 私の見てる目の前でモソリと動き出す二人。ああ…あちら側で解決して来たのかと告げるようにゆっくりと両瞼を開き。朦朧としているのか周りを見渡しながらキョロキョロしだす二人に私は何時もの一言を告げる。

 


「――お帰りっ。もうその様子だと、あちら側の仕事。片付いたみたいだね」



「ふにゃ?…ここ…わわわぁぁあっ! まっ、ままっ! マリオン先輩ぃ!?」



 私の一言にかなり驚いたのか。カレンは、可愛らしく大きな栗色の両瞳をパチクリさせ勢い良く私から飛び退く。その行為に続き隣に寝かされている響のわき腹に「コラッ起きろバカ!」と思い切り蹴飛ばし、かなりキツかったのか。

 むぐぅと妙な声の後に響もわき腹を押さえながら勢い良く飛び起きる…



 まったくもぅ! この二人は、こんなに元気がいい姿を見せちゃって。一時はどうなる事かと可愛い後輩のあなた達にヒヤヒヤもんだったんだよ。




    ◇◆




     κ




 昼間の騒ぎがまるで嘘のように感じられる。

 時刻はあっという間に過ぎてもう夕日がこのアミューズメントパークをオレンジ色の綺麗な世界に染める 未だにあの時の嫌な感覚がアタイの脳裏に焼き付いている。どうしてこんなバカな事しでかしちゃったんだろうな――



 今はアタイと響の二人だけ。えっ? あのピンク先輩や水色達はどうしたっ? あの出来事の後。結局あのサンタは今アタイの隣を歩く響に託して何処か消えちゃったんだよね。

 まぁなんにせよこの依頼は肝心な捕まえる筈だったサンタが不在――そんで保留所か取り消しになっちゃったって訳よ! まぁ何時ものアタイ等オカルト部はこんなオチっつ〜訳なのだ!にゃははっ



 そんで特にやる事無くなったピンク先輩や水色達はもう既にアタイ等を残し解散っ!



 そんな感じで――



「はぁ〜もう俺っ。クタクタなんだけど」



「むむっ! 昼間散々部長と遊び惚けてたくせにアタイとは遊んでくれないんだ」



 まぁ…そんな皮肉めいた事を言うつもりは無いんだけど思わず口を滑らしてしまう。

 はぁ〜本気じゃないのにやはりアタイ…ほんっと嫌な奴に見えるんだよね。



 しかしそんなアタイの手を掴み「だったらさぁ〜最後にこれっ。折角だから乗って行こうぜ」

 と元気良くハニカム笑顔で背後に聳え建つドデカイ観覧車を指を差し誘うのだ。



 そして響にエスコートされたアタイは夕日に照らされ、綺麗な藍色に染まる髪を揺らす響の右手を掴む。 何? このシチュエーションってまさか恋人? いやいやいや。

 かなりヤバゲな思考を掻き消すのに必死に頭を左右に振る。

 目の前にゆっくりと降りて来る"それ"に足元に注意しながら二人で乗り込んだ。



「――なぁ。響。知ってる? アタイが昔住んでいた世界。その世界の何処かにある魔法の国に迷い込んだ天使さんの話…」



「――おっ? 天使か? 俺が住むここ(うつつ)でもあるぜ」



「うん。アタイがねまだあの世界に住んでいた小さい頃によくお父さんが聞かせてくれたんだ。その天使さんはねぇ――」



 そんな他愛のない会話を響と始める。そうアタイがいた世界の何処かにある魔法の不思議な国にふとした切っ掛けで迷い込んだ一人の天使の話を



 響は、観覧車の密閉された空間にお互い向かい合うゆうに藍色に染まる髪を器用に片手で掻き上げながらアタイの話を外の景色を眺めるように聞き入っている。


 先程までアタイ達が居た場所がみるみる小さくなる。その内一大パノラマになる景色を眺めながら、今日一日の疲れも手伝いアタイの話を子守歌にしてうたた寝をしていた。



「それでね。その魔法の国で知り合った綺麗なお姫様と――って…」



「響? まったくもぅ…そっか、疲れたんだね。でもさぁ〜あの時も。そして今回もこんなアタイの手を取ってくれて本当うれしかったわ」



「ありがとなっ響っ」



 スヤスヤと小さくいびきをかく響の唇にアタイはそっと近づき再び大切なパートナーと契約を交わした。


「響っ。これからもこんなアタイをよろしくな」




   END





 〜後書きコーナー〜



マリオン「さてさて。様々な謎を残したまま何とか無事に完結になり!?……はれ?」



哲也「なぁなぁ…やっぱりあのモバイルで見た"映画のプロモ"ってさぁ〜」



光雄「ああ! さっきも俺様は見たぜっ劇場公開の"超絶ロボッ!"」



哲也「『"サンタクロス"』っ!しかも新主役は!」……チラ



響「ひぃっ!?」



カレン「いや…あのww」



光と哲「「こうご期待i?」



ばきぃっ!!「「ぷぉらっ!?」」



マリオン「ったく! ちったぁ最後くらいビシッとしねぇぇかこのバカ共わぁぁぁ!」





    ◆◇




響「いやまぁ〜…ええっとww」


カレン「うん。気にする事は無いわよ! いつも"あいつ"等あんな感じだからっ」


響「……(汗)」




マリオン「キャハッ♪」




お疲れさまでしたぁ〜ヽ(´▽`)/




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