早起きは
「早起きは辛い。心底辛い。惰眠という至高の幸福から、日常という最低な現実に戻される瞬間。それが目覚めだ。それを少しでも早く迎えるのだから、早起きなどというのは拷問以外の何ものでもない。いつまでも眠っていたい。だらだらしていたい。夢の中で見たいものだけ見ていたい。だが残念ながら世の中そうは問屋が降ろさない。今淡い夢を見ていれば、後で痛い目を見るのは、火を見るより明らかだからだ。いろいろと夢見がちな俺。このまま眠っていても、大丈夫んなんじゃないかなといつも起きる前は思ってしまう。勿論現実はそうはいかない。俺は二度寝の後に慌てて飛び起き、転びそうになりながら朝の準備を整えて部屋を飛び出す。いつもそうだ。今日もそうだ。いや、今まさにそうだ。もうすぐ起きなければならない。このとりとめのない思考という半覚醒の状態から、曲がりなりにもしゃきと目を覚まさないといけない瞬間がやってくる。この状況では今日も無理かもしれない。いつも起きる前は言い訳めいた夢を見るからだ。だが今日は少しだけ状況が違う。友人が泊まりにきているのだ。友人は早起きできない俺の為に、今日の朝は起こしてくれると約束してくれた。ありがたい。何故なら最近寝坊が過ぎて、周囲から冷たい目で見られていたからだ。今日は何とかなりそうだ。この友人が俺を起こしてくれる。ああ、だけど何か寝る前に友人は言っていたな。何だっけな。確か、何か頼まれた。そしてその頼み事を聞いてくれるのなら、俺を起こしてくれると約束してくれた。俺は確かに友人の言葉に納得して、それを約束したのだ。ええっと、何だっけな。確かにそれなら確実だと思ったんだ。ああ、そうだ。俺を起こす為に友人を起こさないといけないんだ。そして確実に目を覚ました友人が、俺を時間通りに起こしてくれるんだ。そうだ。友人が俺を起こす一分前に、俺が友人を起こしてやると約束した。よし、完璧だ。これで、早起きできるぞ。ぐぅー」