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5話 精霊さんのお願い

パニックになりそうな頭をなんとか落ち着かせる。

この剣は当然偽者だろうし、彼女のコスプレ姿から見てアニメかなんかの行動だろうと想像する……ほんっっとうに残念な美人さんですね!


「あ、あの、偽者とはいえ危ないですから」


そう、あくまでも冷静に対処しないと。この手の人間は興奮すると何をするか分からないってテレビでやってましたし。

それに日本語が通じたのです。きっと話せば分かり合えるはずです!

そう思って、剣先を手のひらで押し返します。


「っいた!」

「馬鹿っ! 何してる!?」


え? え? き、きれ、切れました??

ま、まさかこれは……?


「剣先を素手で触るなんて」


ほんものでしたーーー!!

手のひらからはだくだくと血が流れて痛いです。なんだかジンジンしてきました。

……うぅ……家を出たら突然森の中で、人に会ったと思ったら残念な美人さんで、更には真剣突きつけられて……ぐすっ……


「…………手を貸して」

「え?」


思わず涙ぐんでいたら、残念美人さんが傷ついた手を引っ張ってきました。


「いたっ!」

「……すまない」


そう謝ると腰に下げてある布袋から、白い布を取り出し、グルグルと巻いてきます。恐らく治療してくれているのでしょう。


(うん? この残美(ざんび)さん(残念美人は長いので略しました)は強盗じゃないのでしょうか?)


何故か急に優しくなった残美さんを見て思わず首を傾げてしまいます(それにしても臭いますね)


「え~と、あの?」

「……すまなかった」


なんでも事情を聞いたら、食べるものが無くてついやっちゃったらしいです。

そのボロボロな姿はコスプレじゃないらしいです。

そして話を聞くうちにここは聞いたことも無い世界だったのが分かりました……ハッハッハ、マジデスカ……


とりあえず彼女から聞いた話を整理します。


ここは剣と魔法の異世界です。

まぁ! それなんてファンタジー♪


……お願いです……帰らせて下さい。


――たすけてあげて


何だか絶望感に打ちひしがれていたら、再び脳内から声がしてきました。それは先ほどと同じ声です。


「だから誰を助ければいいの?」

「ん? どうかしたの?」


し、しまった……残美さんが心配そうにこちらを見てきます。

そりゃ突然変なこと言い出したら心配しますよね。何だコイツ? ってなりますよね。頭がおかしいって思いますよね……いや待って、ここは剣と魔法のファンタジー世界。こんな事は日常茶飯事かもしれないじゃない!


「えーと、なんといいますか、頭の中で声がしてまして……」

「貴方は精霊の声が聞こえるの?」


ビンゴ! やりましたよ! やっぱりこんな事ファンタジー世界では日常茶飯事なんですよ。みんな頭がおかしいんですよ!


「珍しいね、精霊士なんて初めて見る」

「……そうなんですか」


どうやらおかしいのは極少数らしいです。


「精霊はなんて?」

「たすけてあげて、って言ってます。この状況からすると貴方の事ですかね?」

「いえ、聞かれても困るんだけど……」


まぁ、でも多分そうでしょう。精霊さんはきっとこの残美さんが余りにも惨めな姿なので哀れに思ったのでしょうね。私もそう思います。

という事は私がこの世界にやって来た理由は残美さんを本物の美人に仕立て上げ、立派なレディにする事でしょう。ふふふ、なんだかやる気が沸いてきました。

やっぱり目的ができると人間変わりますね。

それに何より、こんな綺麗な人を自分色に染め上げる……それは、すごく楽しそうです。


「それで、貴方はここで何を?」


おっと、私の事を話すのを忘れていましたね……とはいえ恐らく異世界にやってきました。それも貴方を綺麗にするためになんて言って通じるのでしょうか? う~ん、無理があるでしょう。それに貴方は残念な美人です、私が綺麗にしてあげます、なんて言って素直に聞くでしょうか? 私ならブチ切れますね。という訳でそこは隠しつつ、けれど異世界の話はしないと私がすごい常識知らずの馬鹿扱いされそうなので話しました。

当然、向こうは怪しんできましたが、私の服を見せ、向こうの世界の話をしたら多少は納得したようです。


あ、後は精霊士の事を聞きました。

なんでも精霊の声を聞くことが出きて、天変地異による災害や、術士に対して悪意を持った人間を教えてくれるといった事ができるようです。

簡単に言うとアドバイザーみたいなものですね。とはいえ残美さんも余り精霊士に関しては詳しく無い様でしたので、他にも何か出来るかもしれませんが。

ちなみに精霊で攻撃、みたいな真似は伝説ではあるようですが実際にできた人間はいないらしいです。


そこまで話終えると、ふぅ、と疲れたのか残美さんは一息吐きました。なんだか疲れてますね、そういえばお腹が空いていたと言っていました。しかし、残念ながら私は手ぶらです。近くに村があるらしいので、とりあえずそこへ行きましょうという事になりました。


それと残美さんの名前はレンファと言うそうです、家名無しの名前のみです。まぁでも私の頭の中では残美さんで変わりませんが。私も自己紹介したら、カナデと呼ばれました。なんだか残美さんの私を見る目が子供扱いなのが気になりましたが、恐らく残美さんは年上(多分20歳前半ぐらい?)だと思われるので仕方ありませんね。


――ちなみにオブラードに包みつつも臭いますと伝えたら今度は向こうが泣きそうな顔になって少し距離を置かれました。よかった、気にしてたんですね、これが普通とか言われたらどうしようかと思いました。

中々話が進みません……ちなみにここからシルファの呼び方はレンファとなります。



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