殿下、そのサプライズはいただけません。
一週間かけた原稿がどうにも気に入らず、急遽書いてみました
前の原稿もそのうち出します
労力が勿体ないから
年末年始の休みにゆる~く読み流してください
「公爵令嬢エリーチア、この場を以ておまえとの婚約を破棄する」
…………は?
破棄?
婚約を?
一国の王子が卒業祝賀会の席でなにを言ってるの?
今日は凄いサプライズがあるとは聞いてたけどさ……。
「そして、この男爵令嬢リジィと新たに婚約を結ぶ。エリーチアなどと違い心優しいリジィなら将来良き国母となるだろう」
あの、殿下、無茶です、それは。
将来の王妃舐めてます?
一国の王妃ともなれば教養があり政治に明るくないといけないんですよ。
外交するのには多言語をマスターしてなきゃいけないし、流行の先端を行くというか、流行を作るセンスもいるんです。
ドレスにしろ小物にしろ、下手なもの身につけたら影で笑われます。しかも、王族が侮られますよ。
100を超える貴族家当主の顔は当然として、彼らの家族の顔だって覚えてないと。
挨拶されて、どこの誰だったか分からないとまずいでしょ?
爵位なんか間違えたら反乱起こされますよ。
国の歴史についてだって当然精通してないといけないって分かってます?
外国の特使なんかと会ったとき、壁にかかった肖像画が4代前の国王陛下で、狩り嫌いなくせに狩りの衣装を着て見栄を張って描かせたとか、ちゃんと知らなかったら恥ずかしいでしょ。
王宮に飾ってある肖像画や風景画について、「ちょっと知らないですね」とか、絶対駄目ですからね。
陰険な夫人たちを招いて上辺だけ笑って腹の中で罵り合っての嫌味の応酬なんて、精神がグラインダーに掛けられるように削れて、常人なら3日保ちません。
現王妃様がお茶会の度に体重が減ってるって知らないんですか?
いいですか、子供の頃から上位貴族の空気に馴染んで、ありとあらゆる教養を詰め込まれた王妃様でもそうなるんですよ。
王妃としてなんの教育も受けてない、生まれてから数年下町で育ったような男爵令嬢に務まるわけがないじゃないですか。
「身分は確かに低いが、私は真実の愛を見つけたのだ」
勝手にそんなありもしないものを見つけないでください。
恋愛に夢見るのはいいですけどね、現実を見ましょうよ。
将来は一国を背負って立つんですから。
この王子、悪い人じゃないんだけど、どうにも思い込みが激しいし、夢見がちだし。
大丈夫かな、この国。
まあ、殿下がなにを言おうともこんな話が通るわけない。
こんな思いつきの婚約破棄や新しい婚約認められるわけがない。
……いや、陛下、高いところから難しい顔をして見てないで、なにか言ってください。
駄目ですよね、こんなの。
殿下の婚約は貴族間のパワーバランスを考えてのものだし、公爵家は殿下の有力な後ろ盾ですよ。
ここで破棄なんて認めたら、王家と公爵家の間に溝ができちゃいますよ。
陛下も公爵家との関係は良好に保ちたいですよね。
現状から考えて公爵家と揉めても良いことなんてなにもありませんよ。むしろ、デメリットだらけ。
別に結婚せずとも、愛人とか側室とかあるじゃないですか。それで十分なんですよ。無理に正妃にしなくとも。
正妃はちゃんと公務ができる優秀な女性じゃないと駄目ですよ。
「エリーチア、なにか言うことはあるか?」
「いえ、殿下の仰せとあらば受け入れましょう」
え、ちょっと、エリちゃん。
今、頭を下げた瞬間笑ったよね。すっごく嬉しそうに笑ったよね。ちゃんと見てたからね。
殿下との婚約が嫌だったの知ってるけど、それを人に押し付けちゃいけないと思うんだ。
エリちゃんだから王妃なんて大役やれるんだよ。
公爵令嬢だから殿下にも意見できるんだよ。男爵令嬢だったらそれができないの。
殿下がなにかやらかすと分かっても止められないの。
だから、ね、エリちゃん、良い子だから考えなおそ。
国のためだから。
わたしもさ、少しなら手伝うから。
手伝えるよう頑張るから。
この前、靴に虫入れたのも忘れるから。わたしが入れたのを返されただけだけど。
噴水に落とされたのも水に流すから。先に蹴飛ばしたのわたしだけど。
「うむ、殊勝なことだ。さあ、リジィ。これで障害はなくなった。私と結婚してくれ」
……出来ることなら全力でお断り申し上げたいです。
実は公爵令嬢と男爵令嬢は仲良し……たぶん
この後、公爵令嬢は隣国の王太子に嫁いでさっさと逃げ出したとか




