第十話 勇者パーティ結成パーティー 立食会
王城では、晩餐会は無事に終わり、部屋を変えて、立食会が行われていた。
その部屋では、いくつかの丸テーブルの上に、一口で食べれるような軽い料理が様々置かれている。
しかし、立食会に参加している者はみな、晩餐会に参加していたため、料理に手を伸ばす者はほとんどおらず、そこは、立食会とは名ばかりの、片手にワイングラスを持った参加者たちの雑談の場となっていた。
王はこの立食会に参加しなかったが、他の貴族達やフィンも含めた勇者パーティの面々は、参加していた。
どうやらこの場は、中流・下流貴族達の有力な後ろ盾を得る場としても使われているようである。
様々な貴族が、上流貴族たちの機嫌をうかがっていた。
勇者パーティの勇者以外の三人は、三大団の団長たちと話していた。
さすがは、三人とも家名持ちである。
彼らの育ちの良さが、ふるまいに出ていた。
エレジア王国では、通常、平民は家名を持たず、貴族は家名を持つのだ。
もちろん、貴族だからといって、その家系が永遠に家名を持っているわけではなく、しばらく国に貢献していなかったり、罰を与える程度では許されないほどの罪を犯したりすると、もちろん家名は没収される。
だからこそ、貴族の家に生まれた者たちは、みな、厳格に育てられるのである。
しかし案の定、勇者は、一人料理を爆食いしていた。
晩餐会でも、二人分食べていたというのに、さすがである。
あの体のどこに、あんなに入るというのだろうか。
そんな中、フィンは、勇者パーティの四人の用事が終わったら少し話しておきたい、と思いつつも、晩餐会の途中に王様が話していたことを思い出していた。
「そういえば、魔王は、まだ復活したばかりで力が弱く、世界を滅ぼし始めるのは、数年後であると聞く」
「本来であれば、弱っている今こそ、魔王を打ち滅ぼす好機であるが、奴は腐っても魔王、おそらく、エレジア王国軍全軍と今の汝らで討伐に出たとしても、魔王はおろか、魔族の軍勢を壊滅させることすらできないじゃろう」
「仮に、魔族の軍勢を壊滅できたとしても、消耗した戦士たちが、すべての魔族が束になっても負けることはないといわれる魔王に勝てるじゃろうか?」
「いや、魔王に全滅させられるのが関の山じゃろう」
このじじいを肯定するのは癪だが、そのとおりである。
「わしは、そうなるくらいじゃったら、魔王が弱っているうちに、こちらも奴と戦える力を身につけ、万全の状態で戦い、討伐するのがベストじゃと考えておる」
「幸いなことに、奴は側近を持たず、ただ一人で魔族全民を従わせている、独裁者だという」
「そのおかげで、おそらく、奴が自らの本来の力を取り戻すまでは、こちら側に攻め入ってくることはないじゃろうと踏んでおるのじゃ」
「もしかすると、想定していたよりも早く汝らが力をつけることができれば、奴が力を取り戻す前に、討伐に出れる可能性じゃってある」
「そうならなくても、今より被害を抑えて魔王を討伐することができるじゃろう」
なんか、このじじいに名君の気配を感じるのは、本当に嫌である。
いや、たしかに名君ではあるんだけど。
だって、フィンのこと嵌めたし?
認めたくなくない?
「しかし、いきなり強くなることなど出来ない」
「力をつけるには、順序というものがある」
「つまり、わしが言いたいことはこういうことじゃ、勇者一行諸君」
「汝らには、まずは、エレジア王国内をめぐり、勇者パーティとしての名声を獲得しつつ、信頼を得てもらいたい」
そう言い放った王の顔には、どこか小さな悪意が含まれていた。
このじじいは胸の奥底に、
ああ、ついでに各地の問題も解決してきてくれないかのう。
政策とか出すのめんどくさいし。
あと、名が売れてきたときに、勇者パーティのグッズとか売り込めば、一儲けできるのではなかろうか。
こんな思いを秘めていた。
ほら、このじじい、やっぱ悪だくみしてる。
なんでこんな奴が、名君なんだ。
世が世なら、お前が魔王になってるよ。
だから嫌いなんだよ。
フィンはそのどれにもまだ気づいてないけど。
なんて純粋でいい子なんだ。
と、ここまでが、回想であるが、簡単に言えば、こういうことだ。
まずは、エレジア王国内を旅してくるということが、勇者パーティの第一の任務である。
うーん、どのような順番で巡るのがいいんでしょうか。
フィンがそんなことを考えてしばらくたった時、三大団の団長の一人、セラフィーナがフィンに手招きをしてきた。
さすがに見てないふりをすることも出来ず、フィンは、六人のところに近づいていく。
「いいんですか、僕なんかがこんなところに混ぜていただいても」
フィンがそう言うと、ユリウスがこう答えた。
「混ざるも何も、フィンはこいつらの案内係だろう」
「明日からいろいろと忙しくなるだろうし、こういう場で仲良くなっておくのも大事だと思ってな」
確かにこれから、一緒に旅をすることになる皆さんとは、仲良くなっておきたかったのですし、明日からの準備もやりやすくなると思うので、思ってもみないことなんですが。
でも、やっぱり、まだ騎士団長様の威圧感には慣れません。
そんな四人のちゃんとした初会合をよそに、
レオはもう少しで、一つのテーブルの料理を、全て食べつくしかけていた。
【簡単な勇者パーティ内での役割】
レオ 前衛
ツバキ 前衛 レオのサポート・後衛をカバー
ユリシア 後衛 魔法で後ろから前衛の援護・破壊力のある魔法で一掃
リオ 後衛 医療魔術などで支援
フィン 戦闘不参加 パーティの旅の案内




