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勇者御一行様の案内係  作者: 丸もりお
第一章『エレジア王国旅記録』

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第八話 勇者パーティ結成パーティー 王命の儀 其の三

「それではこれより、我から彼らへ、王命を授ける」


王は、そう言って剣を右手で掲げた。

そして今度は、その剣を勇者の近くまで持っていき、剣先を彼の右肩の上に乗せた。


「我は、汝に命ず。古より復活せし魔族の王、魔王を倒し、世界の安寧を取り戻すべし」

「汝らが失敗することは、すなわち、この世界の滅亡である。ゆえに失敗は許されん」

「未来の光となり、世界に平和をもたらしてくれ」


王の命を受け、勇者は目を伏せたまま、こう答えた。


「身命を賭して、必ずやこの使命を果たしてみせます」


こうして、勇者パーティは魔王討伐の大任を引き受けることとなった。


「お、そうじゃ、せっかくじゃから、汝らの旅を案内してくれるものを紹介しよう」


王が、勇者の右肩に乗せていた剣を鞘に納めながら言った。


「おーい、フィンよ。前へ来るのじゃ」


フィンは急に呼ばれて焦っていたが、


「作法など気にせんでもよい。とりあえず前に来るんじゃ」


王のその言葉を聞いて、戸惑いながらも前へ出た。

騎士はその間に、王から剣を受け取り、下がっていった。

フィンが前へ来ると、王はフィンを紹介した。


「こやつも、案内人公募にて採用した、ちょ~~~優秀な案内人である」

「名は、フィンという」


正式な儀式が終わったこともあり、勇者らは、顔を上げ、フィンを見ていた。


「フィンは、汝らと共に旅をし、おそらく汝らの活躍を一番近くで見届けることになるであろう」

「何かわからないことがあったら、なんでもこやつに聞くといい」


こんなにもハードルが爆上げされている中、フィンはというと、


はい!?

本当に魔王討伐なんですか?

あの?

無理なんですけど?

まだ、死にたくないんですけど?

今すぐ、この場から逃げたいんですけど?


一番考えたくなかったことが現実だったということに、絶望していた。

これが、後に世界中の人々に、聖人、刃姫、賢者と呼ばれる三人とフィン、そして勇者の最初の出会いだった。


「それじゃ、おぬしらも、みな、席についてくれ。」


そうして、勇者パーティの各人も席に着き、晩餐会に入っていく。

晩餐会は、初めに王が乾杯のあいさつをして、始まるようだった。

事前に準備されていたグラス全てに白ワインが注がれていく。

乾杯の前に王室料理長が、今日の飲み物の紹介をしてくれるようだった。


「本日のお飲み物は、『湧水の里』リヴァルナの天然の湧き水と、ワルデル平原でとれた白ブドウを使用した白ワインの二種でございます」

「白ワインの方は、味が最も良くなるとされる二年間熟成のワインをご用意させていただきました」

「まずは、白ワインでご乾杯を」


そうして、王室料理長が下がると、王の乾杯のあいさつにより、晩餐会が始まった。

王の乾杯のあいさつが終わると、再び王室料理長が出てくる。


「本日は、勇者御一行様の結成の宴にあたり、皆様が未来の英雄となられますことを祈念して、『英雄』の名を冠した二種類の叙事詩料理をご用意いたしました」

「一つ目の叙事詩料理は『始まりの英雄譚』でございます」

「これは、のちに偉業を成すある英雄の、まだ旅立ったばかりの頃、すなわち始まりの旅路を綴った叙事詩をもとに組み立てたコース料理でございます」

「二つ目は『英雄の旅路』でございます」

「こちらは、ある英雄の一生を描いた叙事詩をもとに組み立てたコース料理でございます」

「どちらもエレジア王国内で採れた新鮮な食材を用いております」

「どちらか一方だけでも十分に満足いただけるコースとなっておりますので、お好みの方をお選びください」


王室料理長がそういうと、執事たちが各人の希望を丁寧に伺い始めた。

銀盆を手にした執事たちは、列席者の背後に静かに立ち、声を荒げることなく、しかし確かにこう告げる


「お客様のお好みの叙事詩料理を、どうぞお申し付けくださいませ」


王族や貴族たちの席では、やはりみなこういう場には慣れているようで、滞らずにどちらかを選択している。

どうやら、『始まりの英雄譚』を選ぶものが、多いようだった。

一方、この会の中で数少ない平民の出である、フィンと勇者は、どちらにしようか迷っているようだった。


うーん…どちらかを選ぶなんて難しいですね。

どんなものなのかどちらも想像がつかないです。

おそらくもうこんな機会なんてないと思いますし、出来るものなら、どちらも食べてみたいのですが……


フィンが、そんなことを考えつつも、しかたなく、『始まりの英雄譚』を頼もうとしたとき、


「うーん……両方は無理なのか?」


そんな声が響いた。

場が一瞬静まり返る。

そう一声を発していたの『勇者』こと、レオだった。

王室料理長は微笑みを浮かべ、こう答えた。


「もちろん、可能でございます」


その言葉を聞いたレオは、


「じゃあ、両方で頼む!」


そう元気に言った。


「承知しました」


料理長はそう言葉を発しながら、深く一礼した。

フィンもその一連の流れを見て、執事に


「あの……僕も両方でお願いします」


そう静かに伝えていた。


「両方の叙事詩を召し上がるとは、まことに光栄でございます」

「あなた様ならば、彼らに勝るとも劣らない世界を救う英雄となられることでしょう」


王室料理長の勇者へ向けたその言葉に、王がゆっくりと杯を掲げる。


「この宴は、物語の始まりである。選ばれし者たちよ、食卓にて誓いを立てよ」


そして、最初の二つの料理が左右から同時に運ばれてくる。

晩餐は、静かに、しかし確かに物語を語り始める。


勇者様だけではなくて、僕も二つ頼んでしまったんですけど………


しかしフィンは、気まずくなっていた。

【わかりやすく解説】

■勇者パーティ結成パーティーでのフィンの席の事情


     ユリ

  ツバ シア セル リュ 貴族───→

  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

レオ                   王

  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  リオ フィ ユリ 貴族──────→

        ウス


こんな感じの席です。


※ちなみに儀式中のフィンの心の声はこうです。

「あの、騎士団長様が、大きすぎてよく見えないんですけど………」

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