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唯一無二のスリルガール  作者: 最上優矢
第二章 不慮の事故

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8/8

助け合い

 電話に出た片倉さんは、今の状況を早口で説明する僕を、どうにか落ち着かせると、状況整理をしてくれた。


「つまり、酒井くんは繁華街にある怪しいショットバーに入って、ハニートラップの被害に遭った、と。

 そんでもって、バー代として一千万円支払うように脅された挙句、酒井くんが“片思い”している私の命も脅した……そういうこと、なんだよね」

「うん、そうなんだ」

「……片思い、ね」


 ……?

 奇妙な違和感。けれど、その違和感の正体が分からない。

 しかし、それは片倉さんが恥ずかしそうに教えてくれた。


「私のこと……好き、なんだね」

「あっ……僕ったら、そんなこともきみに言っていたのか」

「だよ」


 まるで覚えていない。

 これだから、正気を失った人間は恐ろしい。


 羞恥心よりも性的興奮が勝り、僕は言い知れぬ高揚感を覚えた。


「それはそうと、酒井くんと話すの、高校の卒業式以来だから……七年ぶりになるね」


 そういえば、そうであった。

 冷静とは無縁の状態で電話をかけたものだから、そんなことは一切考えずに早口で話していた。


「そうだね。……というか、いきなり電話かけてしまって、なんだかごめんよ。迷惑だっただろう?」

「あ、それはいいのいいの。だって、始業時間前だしね」

「そっか、それなら良かった」

「どこの……ショットバーに行ったの?」


 緊迫した片倉さんの声。

 緊張のため、僕は震える声で答えた。


「いや、それがバーにフラッと入ったから、店名までは覚えていなくて」

「K駅の繁華街で、ラーメン屋が続けて二軒あるところの……バー?」


 絶句。


「そ、そうだけど」

「……やっぱり」


 やはり悪名轟くバーなのだろう、と僕は察した。


「ねえ、片倉さん……言いづらいんだけど、その、僕からお願いが――」

「分かってる。……酒井くんのピンチもそうだけど、私の命も危ういことだし、ここはお互い助け合おうよ」

「ありがとう、片倉さん……!」

「どういたしまして。――じゃあ、今日の夜六時半、私の職場近くのM駅前にある居酒屋『フクロウ』で話さない? 予定、空いてるかな」


 無職の自分に予定などない。

 僕は即座に「大丈夫」と返事をした。


「そう、分かった。――あっ、そろそろ始業時間みたい」

「分かった。ありがとう、電話に出てくれて」

「ううん、こちらこそ私のことを気にしてくれて、ありがとね」


 またね、という彼女の挨拶のすぐあと、電話は切れた。

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