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唯一無二のスリルガール  作者: 最上優矢
第一章 スリルガールとの出会い
5/5

ジャッジメントの時

 二度目のチャイム、三度目のチャイム……。

 四度目、五度目。

 六度目……。


 僕はそろそろと手を挙げた。


「あのう、客人が来たんだ。入れてやってくれ」


 心なしか、レイナさんの顔色は悪かった。


「レイナさん……?」

「マジメな話なんですけどね」

「うん」

「昨日お酒を飲みすぎて、二日酔いで嘔吐しそうです……うっ」

「ささっ、お手洗いはこちらですぞ」


 好機とばかり、僕はレイナさんの手を引き、彼女をトイレに案内する。

 レイナさんはトイレに入るなり、便器に顔を突っこむようにしていたが、思い出したかのようにトイレの扉を乱暴に閉めた。


「ゴミの分際で、何を堂々と見ようとしているんですか……?

 ドアホンじゃないから分からないんですけども、もしかしたらサツかも。

 玄関の扉は絶対に開けないでくださいです……絶対に」

「ああ、そんなことは分かってるとも」


 僕はうなずきながら、玄関の扉を開いた。


「あっ、やっぱりお前か」

「おはよう、こんにちは、こんばんは。ハニートラップにかかった気分はどうですか」

「余計なお世話だよ」


「否、余計なお世話というのは、ワタシが言うべき言葉でして。

 ワタシはアナタのような余計なトラブルを巻き起こす人のことを、やれやれ、と愚痴とヨダレをこぼしながら世話してやるのが役割なのでして。

 ですから、アナタのようなトラブルメーカーを見捨てるなど、論外中の論外!

 ……ちゃんと今回も、アナタがしでかした悪行の尻拭いはさせてもらいますよ」


「やっぱりお前のような奇妙な奴は、この世界には貴重なのかもしれない。まあ、入れよ」

「ありがたき幸せ」


 案の定、チャイムを何度も何度も鳴らしていたのは、僕の友人である山崎幸威やまざき・こういだった。


 幸威は玄関に入ると、堂々とトイレの扉を開けた。

 そこには嘔吐の苦しみを絶賛体験中のレイナさんがいて……僕は声にならない悲鳴を上げた。


「おはよう! こんにちは? こんばんは……どうかお元気で」

「うっ……!」


 レイナさんの口から虹が放射される。

 幸威は「南無阿弥陀仏……」と合掌してから、トイレの扉を静かに閉めた。


「幸威……」

「修哉さん、彼女はどこの誰です?」

「例のハニトラの彼女、だよ」

「ハニトラの仕掛け人……えっ、この世界で一番哀れな彼女がですか?」


 確認のためか、もう一度トイレの扉を開けようとしたので、さすがに僕は幸威の暴挙を止めた。


「ノー! ワタシを止めるなど、なんという不可解。そうですとも、不可解ならば、理解させればいいだけの話……さあ、対話のお時間です」

「外道か、お前は」


「果たして、世間でいう外道はどちらでしょうかね。この無遠慮なワタシか、ハニートラップを仕掛けた彼女か、はたまた彼女にわいせつなことをしたアナタか……どうやらジャッジメントの時が来たようです」


「やめてくれ。彼女のついた嘘を真実に近づけるような真似は、もう二度としないでくれ」

「それでもジャッジメントはしなければいけないのですよ、修哉さん」


 僕の肩に手を置く幸威の言葉は、残念ながら何も響かなかった。

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