異世界召喚されたヤニカス勇者がタバコを求めて暴れる話
俺が異世界に召喚されてしまったときは今でも覚えている。2010年の9月30日だった。
この日は──正確には翌日に大きな事件が起こる。具体的にはタバコの値上がりだ。
俺の愛するタバコちゃん、セブンスター様が300円から410円と大幅値上がりするというクソッタレな事件だ。
生活必需品が三割以上も高くなるなんて国民は暴動を起こさないんだろうか。怒れ国民。今こそ立ち上がるとき。
そう誰もが願っていたのだが、残念なことに交番や国会の焼き討ちだとか、首相を血祭りにあげるとかそういう派手な動きは無いまま、最後の9月は過ぎ去っていった。世の中間違っている。
義の心に震える俺だったが、いかんせん焼き討ちするには問題があった。執行猶予期間中であることとか。大人しくしていないとパクられる。別に悪いことをしたわけじゃない。軽く法律を違反しただけだった。あるいは人間は誰しもがなにかの罪の執行猶予期間中とも言えるかもしれない。
それはともかく、世間を変えることのできない俺に行える最大限の抵抗はタバコの買いだめだった。行きつけのタバコ屋でセブンスターを100カートン購入した。お値段30万円なり。なんてお国のために奉公する納税者の鑑だろうか。それを考慮して罪を帳消しにして欲しい。余罪の部分だけでいいから。
とにかく、俺は1000個分のタバコを旅行カバンに詰めて家に戻る途中で、異世界とかいう最低最悪な世界に召喚されたのだ。
「おお! 勇者どの! この国に蔓延る魔物共を倒し、魔物の首魁である邪悪なる竜を退治してくだされっっっつ熱っっつぁあああ!?」
なんか目の前に現れた不審な女(後で聞いたら巫女だったらしい)の額に吸っていたタバコを押し付けて俺はポカンとした。
変なところに来ちまった。
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明日は仕事で忙しくなる予定だった。朝早くから仕事場に並び、熟練の目利きで選んだ仕事用マシンを確保し、呼び水となる現金をつぎ込んでは大きな対価を得るカタギの仕事だ。パチスロとも言う。新台入れ替えだったのだ。
だから早く還せと要求したのだが、国の大事な巫女様に根性焼きを入れた俺をなんか兵士どもが囲んで警戒しつつこう言われた。
「そなたをすぐに帰すわけにはいかぬ! 魔物と邪悪な竜によって国は滅びる間際なのじゃ! それらを退治してくれねば帰すことはできんっっ熱っっ!」
スパー。タバコの火を巫女の顔に押し付けながらその要求を聞いて眉根を寄せた。
俺も周囲を観察してみた。おかしな映画撮影やドッキリじゃないことを。ここは屋外の変な遺跡みたいな場所で、夜空には月が三十もズラリと並んでいる。多すぎる。
巫女は魔法で根性焼きの傷を癒やした。なんかペカーって光ったら傷が回復していた。ホイミ的なやつだ。
どうやれば自力で日本に帰れるか。さっぱりわからない。ミャンマーに仕事で密出入国したことはあるが、それとはわけが違う。
イライラしてタバコがすぐに無くなる。とりあえず俺は話を聞くことにした。
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幸いなことに伝説の勇者の剣みたいなのが保管されていて、それを使って戦えばいいらしい。
見た目はライトセーバーみたいな光る棒で、タバコに火も付けられる。便利かって言うと、百円ライターの方がマシだ。
戦っている間の衣食住は保証するらしい。パチスロは無いようだ。クソ。
果たして魔物どもを退治して家に帰るのに何日掛かるのか。俺は不安になって聞いた。
「タバコあるのか?」
「なんじゃ? タバコとはっっつぁあああ」
はいクソ。この世界にはタバコが無い。根性焼きを再び入れて悶絶した巫女以外にも聞いて回ったが、本気でタバコは無い。葉巻も無い。そんな文化は存在しないようだ。
異世界に来て一日目で残り97カートン。ヤバい。俺は吸う量を減らすことを決めた。
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魔物というのはなんか気持ち悪い肉の塊に手足や翼を付けた生き物だった。
それが城壁の外にはうじゃうじゃといる。巫女たちが籠もっていた城壁に囲まれた都市は完全に孤立していて、もうあと数ヶ月以内に外に出れないと都市の住民が飢えて死ぬらしい。
見た目がグロテスクなだけではなく、魔物は怪力と強靭な爪や牙、触手を使って人間を襲う。
試しに視察に来ていた巫女を魔物の前に投げたら、魔物の細い触手で気軽に締め付けられただけで巫女は肋骨をベキべキにへし折られる音を立てて悲鳴と共に血を吐いた。
そこらの雑魚Aみたいな敵なのに凄い力のようだ。
俺は勇者のレーザーソードを持って魔物を斬り殺して巫女を救った。巫女はホイミ的なので回復していた。もうこの国では回復魔法を使えるのも巫女ぐらいしか残っていないとか。
「おええええっっゲホッっ死にゅっっ……でも勇者どの鬼強えええ! 醜悪な魔物共を皆殺しにしてくだされええええ!」
それはともかく仕事だ。早く魔物を絶滅させて家に帰らないと、タバコが無くなる。一日一カートンに抑えているから、あと三ヶ月ぐらいで帰らないといけない。
近づく魔物を次々にレーザーでぶった切っていく。当たればそれで楽に切れるからバッティングセンターよりも簡単だ。
*****
魔物を殺しに殺し続ける。城壁の外を開放し、魔物の巣を焼き払った。
それだけで一ヶ月は掛かった。タバコの量は減らない。クソったれな魔物を殺すストレスに耐えるにはタバコがどうしても必要だった。
毎日殺して殺して殺して殺した。魔物は次々に湧いてくる。邪悪な竜とやらはどこだ。魔物が死に絶えるか、タバコが尽きるかのレースだ。
あまりにイライラしている俺を見かねたのか、巫女が紙巻煙草をどこからか調達して持ってきた。
「勇者どの! 薬草で再現してみましたのじゃ!」
ほほう。中々いい心がけではないか。俺は薬草タバコを咥えて火を付け、深々と吸い込んだ。
ゴボッグゲエエエエエ!! クッッソ不味い!! ふざけんな!!
巫女に舌を出すように言って、馬鹿面晒したそいつのベロにタバコを押し付けた。巫女は転げ回った。
*****
タバコがどんどん無くなっていく。魔物の生息域は小さくなりつつあり、数少ない生き残りの国民どもは俺を英雄と褒めそやす。
タバコという文明が存在しない野蛮な国の土人どもに褒められても嬉しいことは一つもない。そんなことよりタバコだ。
連中は機嫌を取ろうと酒を持ってくる。女を連れてくる。美味い飯とか装飾品とか渡してくる。だというのにタバコの一つも出しては来ない。ふざけやがって。
ムカついたので灰皿に酒を入れて持ってきたやつと巫女に飲ませ、女どもは巫女と並べて根性焼きした。飯の味はタバコが無いと美味さ十分の一だ。黄金とか宝石とか使った豪華な灰皿だけ溜まっていく。
「灰皿があるからそっちを使って欲しいのじゃっっっ熱ううう!!」
巫女の手のひらにタバコを押し付けながら、俺は地図を見て次に攻め込む場所を探す。今日は2カートンも吸ってしまった。残りの命は少ない。
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この世界なのか? 国なのか? とにかく俺がいるところは大きな島だ。大陸ってほどじゃない。北海道みたいなもんだ。
殆どこの国の人間は魔物に追い込まれて死にかけていたわけだが、幾つかの城塞都市が残っていて、そのうち一つが俺を召喚した。
それ以降都市の周辺を開放し、それからまだ残っていそうな大きな街を目指して魔物殺しロードを作った。そんで三つ四つは魔物に囲まれていた都市を開放してやった。
情けねえことにこの国の兵士どもは殆ど魔物を倒せていない。税金泥棒だ。日本の警察と同じだ。あいつらは善良な俺が違法行為をしたというだけで捕まえやがる。
魔物がぶよぶよした肉みたいな姿をしているが、それで剣で切ろうが槍で突こうが肉が裂けても再生してしまうんだと。
その点、勇者の剣であるレーザーソードは焼き切って再生不能になるので殺せる。
しかし俺一人が暴れても埒が明かないので兵士どもに火炎放射器を作らせて武装させた。これは魔物にそこそこ効く。まあ、全身焼け焦げても魔物は死なないようだが、暫く行動不能にはなる。
「人類の反撃のときじゃ!! 勇者どのに続け!! 醜い魔物どもを焼き殺すのじゃ!!」
「おい灰皿」
「はいですじゃ!」
なんか巫女の目がギラギラ逝かれて来てる気がする。最近灰皿扱いしても文句も言わず、腹だろうが太ももだろうが根性焼きを受け入れるようになってきた。
大丈夫かこいつ。正気か?
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各地で大規模破壊をしていた魔物四天王とかいう大物が現れた。
肉ウルフ。肉ベアー。肉イーグル。肉ゴリラ。俺が命名した。どれも、元の動物を五倍ぐらいに巨大化して肉でデロデロにした感じのキモイやつらだ。
大きすぎて火炎放射器も効かず、調子に乗っていた兵士どもが次々に殺された。
しかしなんというか勇者のレーザーソードには無力だった。近づいて足とか翼とか頭とか切ったら死んだ。俺はタバコが残り少なくてイライラしてるんだ。
「ヘヘッ勇者どの今日もお疲れ様ですのじゃ。おタバコの火をお点けしますのじゃ」
「……」
なんか巫女がやけに卑屈だ。腰が低くてペコペコしながら俺のカバンを持って付いてきて、舎弟のようにタバコの火を点けたりしてくる。
今日なんて俺が肉イーグルをぶっ殺している間、邪魔されねえように肉ゴリラ相手にデタラメの手話で気を引くように命令して殺されかけてたってのに文句の一つも言わない。
変な裏があるんじゃないだろうな……
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魔物の大幹部、邪悪な竜を生み出したとか自己紹介をした暗黒魔導師をぶっ殺した。
突然闇から現れたそいつは巫女を人質に取って目の前で脅してきたので、巫女が死なない程度に一緒にぶった切って、そいつの頭を焼いた。
とりあえず巫女は切れた体をくっつけてホイミ的なので回復したようだ。
「いっそここで死んでれば……」
「おいタバコ」
「はっはいですじゃ!」
まずい。タバコがもうガチで少ない。だが邪悪な竜はもうすぐそこだ。ギリギリ持つだろう。
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邪悪な竜を殺した。その竜が吠えた瞬間この国の人間が三分の一ぐらい発狂して死んだらしい。ギャアアーとかなんか吠えていたので、近づいて首を落とした。
念の為にその後体を寸刻みで切って再生しないようにしておいた。心臓も潰しておいた。俺は深々とタバコを吸った。記念に一カートン丸々全部一気に吸った。これで帰れる。
「おい巫女」
「はっ……はい!」
「苛ついていてお前には悪いことしたな。帰る前に謝っておくぜ。ごめんよ」
「……」
何故か巫女は白目を剥きながら汗をダラダラ流している。
「そのぉ……勇者どの」
「なんだ」
「帰れるって言ったの……実はぁ……ウソ的なアレでぇ……その……騙してましたのじゃ!」
スパァー。1カートン吸った。
「ごめんなのじゃ! でも帰れるって言わないと協力してくれなさそうで……ああっ残り少ないのにそんな吸い方しちゃ……」
スパアアアアアア!!! 2カートン吸った。
「ごめんなのじゃ! ごめんなのじゃ! 私なら灰皿にしてもいいからどうか暴れないで欲しいのじゃああ!」
スパパパパアアアア!!! 3カートン吸った。
どうやら俺は帰れないらしい。俺は気絶した。
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巫女がビクビクしながらその後事情を説明したところによると、勇者という名の鉄砲玉を呼び出す術を使って、呼び出したやつを煽ててどうにか城塞の周辺だけでも奪還できればいいぐらいのやけっぱちな計画だったようだ。
あんなレーザーソード使えたからって魔物の群れや竜を倒せるはずがない。だけど俺はなんとなくやってしまった。おまけに機嫌は最悪なまま。
このままだと竜も倒すかもしれない。でも倒したあとで帰れないとなるとブチ切れて国を滅ぼすかもしれない。そう考えて、巫女はここ最近卑屈にビクついていたようだった。
確かに今現在の俺は生まれて一番カスみたいなコンディションだろう。年齢=喫煙歴である俺にとって、タバコというのは空気同然。なければ窒息してしまいそうだ。
暴れてやりたい気持ちも無くはない。だが暴れてもタバコが出てこない。どうあがいても俺は元の世界に戻れない。
国を取り戻した功績で俺は、生き残った民衆からは神の如き扱いを受け、望めば王にでもなれるとまで言われているのだが。
タバコのない国なんてまっぴら御免だ。しかし世界はこの島以外に、あるかどうかもわからないとされている。
生きる希望が無くなりそうだ。俺は与えられた屋敷で、タバコをそっと一本ずつ大事に大事に吸う余生を送っていた。
一本ずつ吸うなんてまるでサナトリウムの病人のようだ。
それが尽きたら死ぬときだろう。そう考えながら。
「勇者どのー! 材料を持ってきたのじゃ!!」
残り寿命を数えながら生活していると巫女がやってきた。そいつは山程の草を、俺が預けていたもうタバコの入っていない旅行かばんに詰め込んでいる。
胡乱げにそいつを見ると、彼女はこう主張する。
「とりあえず食用や薬効のある草をありったけの種類持ってきたのじゃ! この中なら、吸ってタバコみたいになる種類が含まれているかもしれないのじゃ!」
巫女のその言葉に、俺は身を起き上がらせた。
このまま少ないタバコを抱えて不満に嘆きながら生きていくか、あるいは自分がタバコを生み出すか。
確かに以前巫女が用意した薬草タバコはゴミカスのような風味だったが、植物というのは様々な種類がある。この世界でも知られていないだけでタバコに似た葉っぱがあるかもしれない。
「巫女! ……でかした」
「へへっ」
じゅっ。久しぶりに巫女のベロに根性焼きをしてから、俺と巫女はタバコ探しに様々な草を吸って試した。
*****
死にかけた。この世界の植物はことごとくタバコに適していないウンコみたいな草か毒草ばっかりだった。
世界ごと焼き払いたい。紙巻き猛毒を巫女に飲み込ませて悶え苦しませながら川に投げ捨てた。腹いせだった。
もう俺が生き残る術はないのだろうか。
タバコ禁断症状で死ぬぐらいだったら素直にこのレーザーソードで自殺した方がマシではなかろうか。
最大出力で使ってこの星が真っ二つにならないか試してから死んでやろうと思った。
「死ね! 下等惑星!」
別れの言葉を掛けながら全長数千キロぐらいに伸ばしたレーザーソードで地平線の彼方から切っていこうとしたとき──
「ゔぁあああ! ゆ、勇者どの! 今! 神から新たな魔法を授かったのじゃ! 今度こそタバコが作れるのじゃ!」
「嘘だったらてめえの半月板を抜き取って割ってからもとに戻してやるからな」
「怖いのじゃ!?」
死にかけている巫女が自分にホイミしながら寄ってきた。壮絶な顔だ。
星ごとぶっ殺されかけて神が本気を出したのだろうか。全身から変なオーラみたいなのを出している。
「つ、使えるようになったのは『蘇生魔法』なのじゃ!」
「そんで?」
「勇者どのが吸っているタバコに含まれる植物の部分を蘇生すれば、新たに生きている植物として復活するはずなのじゃ!」
「巫女!」
「へへぇっ!」
以心伝心で巫女は舌を出してタバコを根性焼きされる。
そして巫女にシケモクを渡して蘇生魔法を使わせることにした。
「いいか、全力でやれ。お前の生命力が干からびてでもタバコを全力で最大限復活させろ」
「が、頑張りますじゃ……!」
「上手いことできたらお前を一生灰皿にしてやる」
「やる気満々になってきたのじゃ! オメガリザレクションエコサイド!!!」
血涙と鼻血を出しながら巫女がシケモクにパワーを込めるとやがて紙に巻かれた茶色い粉みたいなタバコ粉末は瑞々しい緑色になってきた!
そして質量が膨れ上がると何枚もの大きな植物の葉になり、葉から茎と根が再生されていく!
しかも粉末の粒子一つ一つから別々のタバコ(植物)が発生して溢れるように巫女の手からこぼれ落ちていき、すぐさま地中に根を張って成長をする!
「おお!!」
「灰皿にぃぃなるのじゃああぁぁぁ……!」
巫女が更に力を込めると成長したタバコは種を作り出し、種は周囲に弾け飛んで更にその数を増やしていく!
種から新たに生まれたタバコは見た目こそそのままだが、力強く巨大なタバコになっている!
そしてそのタバコからまた種子が生まれて更に巨大なタバコを周辺に拡散していった!
「しゃあ! 吸い放題……いやそれどころか、もっとだ! 巫女! もっと最強のタバコを作り出せ!」
「へっへっへっ」
「オラッ!」
「キュン」
犬のように舌を出して催促してきた巫女のベロに焼けたタバコを押し付けて更にブーストをかけさせる!
際限なく巨大化していくタバコはもはや巨大樹ほどの大きさになる。
そして見渡す限り、地平線の彼方までもタバコの葉が広がりつつある。他の植物を駆逐してタバコ一色の植生になりつつあるのだ!
「よーし、いっそこの一番クソでけえタバコをダイレクトに吸うぜ! オラッ!」
本来は加工するものだが、もどかしいのでレーザーソードで巨大樹のてっぺんに火を付けてやるといい感じに点火されて濃厚な煙が滝のように空から降ってきた。
「すぅー!」
世界の大気がすべてタバコの煙になったかのような快感に俺は深く深く深呼吸した。吸っても吐いても周囲は煙に巻かれている。
メラメラと燃える巨大樹の葉が周辺に飛び散り、他の大樹となったタバコの木にも引火していって煙が次々に発生していった。
飛び火は地面まで落ちても下草までびっしりとタバコが生えているのでどこまで行ってもタバコを燃やして煙となる。
世界はタバコの煙で包まれた。
「あー……いい……」
「げほげほげほっ!! ごほっ! 息が……! 死ぬのじゃっ……!」
呼吸困難になっているらしい巫女がホイミで強制的に回復しつつのたうち回っていたみたいだが。
俺は幸せだった。この世界に来て初めて、良かったと心底思えた。
濃密な煙の中で、更に残った一本のタバコに火を付けて深く深く吸い込み、吐き出すとなんとも風流な気分になれた。
いつまでも晴れない煙に包まれながら、苦しむ巫女の体にタバコを押し付けつつ俺は身も心も開放されたようにリラックスしていた……
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かつてその星には文明があった。
人が住み、国を起こし、更には魔法といった超常の力を用いる者までいた。
しかし、地表を覆い尽くした上で更に生え続ける植物と、それを燃やす止まない山火事による大気汚染によってやがて人々の痕跡は消えてなくなった。
数千年の後にその星は人類に発見されたものの、大気を覆う煙と灰によって水まで有毒になった星は、居住可能惑星としては最下等である七等惑星──セブンスターと呼ばれるようになった。