結局華々しい世界というのは泥臭い世界が支えているんだ。
アリス、お前だけが頼りだ!
宮廷、海外旅行とか行ったら美術館とかになってそうな感じの凄い宮廷である。天井には某値段が安いファミリーレストランに飾られてそうな絵が沢山ある。
「アーサー王子の家すげぇわ」
純粋にそう思ってしまった。異世界なのは間違いないけど、海外旅行のような雰囲気もある。まぁ俺は日本こそ一番なので現実世界に戻りたいが。
「おはようございます。アーサー王子、ヴィラン王女。」
アーサー王子と婚約したことでヴィラン王女となっていた。「悪役令嬢、王女になる」である。なお今起こしに来た使用人はアーサー王子に仕えているシャロンである。そう、舞踏会の時にいた女の子である。
アーサー王子からすれば好きな人と一緒に寝るという幸せな展開なんだろうが、俺にとっちゃなんで知らんおっさんと寝ないといけないんだという気持ちである。やめてほしい。
朝食は豪華絢爛。正直胃もたれする。
なんとか平らげて国を良くする会議へ。俺はまずこの国の名前を変えることを提案する。フィレンツェ国なんて難しい名前じゃダメだ!ということで国名を日本帝国にするよう頼んだ。アーサー王子、最初こそ困り顔だが、愛する妻の頼みは受け入れられた。やったぜ。この国はこれから日本だ!
「あはは、ありがとう、あなた」
吐き気がする気持ち悪い言葉だ。だって言っているのは見た目こそ令嬢だが中身はただのサラリーマンである。考えてほしい。目の前のサラリーマンがあはは、ありがとう、あなたなんて言っていたら。
「それでは私は自室に戻りますわ。夕食の時間になったら教えてくださるかしら?」
シャロンにそう伝えて自室に帰る。何故か知らないが自分は自室で寝られない。アーサー王子の部屋で寝ていた。なんでだよ。
自室にはアリスがいる。そして川越に戻れる唯一の居場所である。
「お疲れ様です。川越様」
「あぁ、アリスもお疲れ様。いやぁお互い大変だな、宮廷ってこんな感じなんやな」
しっくりくる話し方ができるのもストレスに追い込まれそうな生活に光を差してくれる。
「とりあえずこの国は日本帝国となった。少しづつ現実世界っぽくしていくぞ」
「川越様にとって大切な国なんですよね、日本っていうのは」
「その通りだ。俺は日本が大好きだ。四季折々さまざまな顔があって、文化や伝統を重んじる。東京は世界一の大都市で、京都は世界一の歴史街なんだ。」
なんか外国人の言葉を日本語に翻訳しました感が否めないが、ヴィランが言っていると思えば納得できる…かもしれない。
「アリス、マリーの方は?」
「はい、大丈夫です。抜かりはありません。」
夕食である。サラリーマンの時は最寄駅である中目黒駅の駅前でよく食べていたが、ここではそんなことはできない。めっちゃデカい部屋でデカいテーブルに沢山料理が置かれ、それを上品に食べる。牛丼が懐かしくなるものだ。
「我が国の民が頑張っているお陰でこの国はその名を歴史に刻んでいる。王子として鼻が高いものだ。」
「あら、あなたがこの国を守ったからでして?」
ワインを片手にこんなこと話しているのだ。飯時の会話なんておかわりくださいぐらいしか言わなかったのに。
アーサー王子は先の戦で隣国に勝利した英雄であるが、奴隷からすればアーサー王子の評価は最低のものである。と前に言ったことがある。アーサー王子、奴隷からは金銭をかなり巻き上げており、それを自国民の富裕層に軍配しているのだという。その為格差がかなり大きく、革命も失敗に終わったというのだから東夢の人達はかなり大変だと思われる。
マリーはそんな東夢の人達を憂いており、解放したいと考えていた。しかしスカーレット家はそれを認めなかった。特に反対したのはヴィランである。アーサー王子に取り入る為には仕方のないことだった。まぁ行き過ぎた反対が虐めに繋がり、結果として島流しに合うのだが、スカーレット家も隣国奴隷の解放は反対であった。
「奴隷共から巻き上げたお金でこの料理が作られている。そう考えると凄く美味しいものになるだろう?ヴィラン。」
「えぇ、そうね、奴隷がお金なんて図々しいのよ。私たちが有効活用しているのだから、ありがたく思って欲しいわね。革命すら起こせない奴隷は一生私たちに献上すれば良いのよ、あはは」
上品とは言っても会話は非常に下品である。俺もこんなこと言いたくはない。ある意味スパイ活動である。どこの公安だよ。
夜、別々の部屋で寝たいとは言えないものなのか。結論から言うと言えない。言ってしまえば愛情はそんなものなのかとアーサー王子が病んでしまう。なんだよこのメンヘラめんどくせぇ!
なんとかして昼間の時間を少しだけ自室で過ごせるようにしたという感じなので、夜は一緒のベッドで寝るしかない。うげぇ。
さてついに始まった結婚生活。恋愛要素が出てきました…?
まずは日本帝国に名前を変えましたね。現実世界っぽくしていくのが川越の狙いですが、当然それ以外にも考えることはあります。アリスのこととか、東夢のこととか、マリーのこととか。