そういや俺は悪役の令嬢だったな!でも悪役ってどういうことだ?
こんな男な悪役令嬢見たことない!?
朝目覚めると…元の世界ではなかった。残念、俺はまだこの世界で悪役令嬢やってないといけないのか。
「おはようございます…川越様…」
アリスがボソッと呟いた。金髪少女なんて別に日本にも沢山いるので問題はない。
「おはよう、アリス。今日もいい天気ね」
女口調なんてあんま良いモノじゃない。俺は俺だ。ということで、例の老人をここまで呼び寄せてみた。電話、スマホとかでやりゃ簡単なのだが、どうやら中世らしいのでアリスが伝えに行ってくれるらしい。
6時間後、老人が来た。この老人、俺が川越だと知ってるので、女口調をやめて良いか聞いてみる。聞くまでに6時間。やっぱり異世界なんてよろしくない。
「うむ、アリスには今までの口調で良いぞ。ただし、アーサー王子の前では悪役令嬢として接するのじゃよ」
老人の答えはこうである。とりあえずアリスには俺の身分を明かすことにする。まぁ当然最初は驚かれたがまぁすぐに納得した。すげぇ、俺と全然違う!
ところで悪役令嬢だと言われ続けている。俺は悪役なのだ。ヴィラン=スカーレットという名前からも、悪役という言葉が似合うのだが、俺は悪役なのか、悪役らしい、自問自答していった。あーもうわかんねぇ!
老人にそのことも聞いてみた。
「ヴィラン=スカーレットは、実の姉であるマリー=スカーレットを虐めていた。スカーレット家の令嬢として相応しいのは自分であると信じていた。だからこそ、マリーの存在を抹消したかった。その事が父上にバレて、この家に島流しされたのじゃ。今、スカーレット家はマリーが令嬢として君臨している。そのマリーが狙っているのがアーサー王子であり、其方はマリーからアーサー王子を奪う必要があるのじゃ。」
なんで虐める必要があるんだ?と俺は思った。だってそうだ。何故家族である実の姉を虐めるのか。俺は父親、母親どっちも平凡な家庭出身だが、絶対虐めたりしない。
「あれ?舞踏会俺参加できんの?」
「やっと気がついたか」
「いや、お前がその設定教えてくれねぇからわかるわけねぇだろ!」
「そうじゃったな。すまん。スカーレット家当主、まぁ父上じゃな。どうやらその日は遠くの国へ出発するそうじゃ。舞踏会でスカーレット家といえばマリーしかいないんじゃ。舞踏会はチケットを持って入るのじゃが、そこにあるじゃろ?チケットが。アーサー王子はどうやら著名な家には基本全員に配ったようじゃよ。」
ここまで見た読者なら、なんて都合が良いのだろうと感じたことだろう。大丈夫だ。俺もそうである。
と、ここで老人はまた3時間かけて戻った。大変だ。東京から新神戸までの時間をかけて移動なのだから。
「アリス、アーサー王子って奴はフィレンツェ国を好き勝手弄れるのか?」
俺は気になって聞いてみた。
「恐らく、アーサー様は、王子であることから、国王への意見も簡単だと考えられます。川越様が結婚された場合、家族となるわけですから可能性は高いでしょう。」
アリスは素直で良い子である。頑張って日本に連れて帰って結婚したいモノだ。
舞踏会まで後8日。それまでにこの国と悪役令嬢に慣れつつ、この国の改造計画を生み出す必要がある。
「そうだ。俺の大好きな六本木という街を紹介しよう。」
唐突な話は人を驚かせる。アリスは目が点になっている。
「六本木…?」
よく考えたらこの国、六本木なんて地名無名なのだ。ジェネレーションギャップ!
「ははは!まぁ俺の住んでた日本って国の地名だ!まぁそうだな、プールトゥジュールという田舎とは違う。大都会だ!」
「ここが、田舎というと相当発展されてらっしゃるのですね。」
よく考えろ、中世に六本木のあのビル群があるわけないのだ。
さーて、六本木も知らない人に日比谷線とか地下鉄とか電車とか話してわかるか?
この時代は馬車である。史実ではそれがイギリスの産業革命で蒸気機関によるものへ変わり、鉄道として誕生。その後電気へ発展した。それをアリスは知らない。
ただ俺はそんなことお構いなしに語った。アリスの目から光が消えたのが見えたのは大体日比谷線の歴史を話していた頃だった。
「まぁすまんな!悪役みたいになってしまったな!」
俺は笑って誤魔化した。アリスもすみませんと謝る。
悪役…令嬢かは怪しいが、とりあえず六本木に帰るため、この国を日本っぽくして安定剤にしていこう!
この作品は大体1話2000字以内で書こうかなと思っています。孤独の棋士は大体3000字〜5000字ですからだいぶ少ないのではないでしょうか。
川越稜の元ネタですが、川越は埼玉県川越市。稜は孤独の棋士河津稜からです。