革命の果てに見えるモノは何か。俺たちの想いは。
最終回です。
「マリーが…殺された?」
衝撃は体を稲妻の如く貫く。ヴィランにとって実の姉で、俺にとって大切な味方で友人で、そしてこの国を変えるために努力した彼女が殺されたのだ。革命軍の手助けの為、屋敷の裏側へ回る最中に耳に挟んでしまった。このあまりにも残酷な報告を。
革命軍もまた王族警護隊や警察、軍により鎮圧されようとしていた。
「このままではいけない。」
わかっている。わかっている。だからこそ急ぐのだ。
「さて、愚民へ告ぐ。革命などという無礼な行為は、この国に置いて処刑の対象だ。」
王子は無情な宣告をする。
「マリーさんを殺しておいて!無礼なのはどっちなんだ!」
革命軍最後の足掻きである。
「やれ。」
「これ以上、仲間が殺されるのを見ているわけにはいかない。」
ついに革命軍の前に俺は立つ。
「ヴィラン、何をしている。これからこの愚かな民衆を始末する所だ。そこよりも、こちらの方が見やすいぞ?」
「革命軍へ。アーサー王子、その他王族警護隊、軍、警察を始末しよう。全責任はこのヴィランが負う!!」
この日、この瞬間初めて裏切った。悪役令嬢となった。生涯を共にすると誓った王子を今、ここで裏切った。自由のために。現実世界のような街にするために。そして、マリーのために。
「ヴィラン…お前、俺を裏切るのか…?」
「あなた…私はこの国を近代化して行った。バスや鉄道、インフラ面はかなり近代化したわ。でもまだ根本的な部分が残っていたの。そう、奴隷制度の撤廃よ。確かに私は最初こそ奴隷解放に反対だったわ。でもね、マリーが、国民が、革命軍のみんなが教えてくれた。自由という素晴らしさを。私は革命軍につく。あなたとはここでお別れよ。」
俺は元の世界に戻ったとして、この世界の住民はこの世界で生きていく。なら、せめて、自由な世界で生きて欲しい。
「わかった。ヴィラン。お前も、裏切り者は全員、俺の手で抹殺する。」
革命戦争が始まった。ヴィランの革命軍参戦につき、王族警護隊の一部はアーサーではなくヴィラン側についた。
アーサーの心の中は愛する妻に裏切られたということでいっぱいだった。
今までのような指揮が出来ず、鈍っていく。
戦況は革命軍有利へと傾いて行った。
仕方ない、逃げるか。
アーサーは残りを置いてこの屋敷から逃げることにした。屈辱の逃亡である。
廊下を走り抜け、目の前に外の光が見える。
「もうすぐで俺は」
「どこへいくのですか?王子様?」
「は?なんで、お前が」
「もうこの世界において、貴方の味方などいませんよ」
「な…ぜ…」
「サヨナラ」
アーサー王子は冷たい廊下に横たわる。独裁者の末路は銀色に光る鋭利な刃物により、その体を紅に染めるものだった。
「皆さん、ご報告があります。」
アリスが現れた。そして
「アーサー王子を討ち取りました。この戦いは革命軍の勝利です。」
非情な王子の首が民衆に晒された。マリーと違うのはそれを見た声が歓喜だったことである。
「アリス…よくやった。」
みんなの前で俺は、お嬢様言葉ではなく、川越として発言した。もう俺は悪役令嬢でもヴィランでもないのだ。ただの、川越稜なのだ。
「よくやった。よくやったよ!」
次の日、奴隷解放は高々に宣言された。ついにこの世界に自由が来た。そして、現実世界っぽくなったのだ。
「老人よ。俺を元の世界に戻してくれ。」
俺は元の世界に戻る決断をした。
「良いのか?お前一人で。こっそりと。」
「…そうだな」
俺はアリスを引き連れて行けないか相談した。アリスが良いならとのことだ。
「アリス…俺の世界に来ないか?日本という国に。」
「川越様…」
「わかりました。お供致します。」
アリスの賛同は簡単に得られた。簡単に。
「最後にみんなに伝えておこう。」
国民へ、最後のメッセージを…
「国民の皆様、ヴィラン=スカーレットです。この国は自由になりました。どうか皆様、この平和な世界を守ってくださいね。」
世界平和、現実世界に置いて戦争など必要ないモノだ。確かに自由を得るために戦争は起きた。多くの犠牲を生んだ。だからこそ、得られた自由を捨ててはならない。
「戻ろう。日本に」
夏だ。暑い。8月の東京は異常に暑い。
俺は六本木の働いているオフィスへ向かう。
「え?川越稜?解雇されましたよね?」
「はぁ!?」
俺と入れ替わりこの世界にいたヴィラン=スカーレットは悪役令嬢そのまま。サラリーマンなどやれるはずもなく会社をクビになっていた。
「うげぇ、マジかよ…」
帰りの日比谷線は妙に長く感じた。
「俺、クビになっちまった。」
俺はアリスに伝えた。
「では、何か会社を起こしてみましょう。」
「私は、貴方の味方ですから」
ここまで異世界に飛ばされたので現実世界っぽくしていきます。をご覧くださり、誠に有難う御座いました。筆者のばんえつPです。
この作品のテーマは、現実世界っぽくしていくという部分が大きく、最初は名前などを異世界あるあるな横文字から日本っぽくしていくという話でしたが、最後には現実世界らしくない奴隷という存在を無くそうという動きへ変わっていきました。
悪役令嬢というのも、元々が悪役令嬢というのもありますが、最後の最後でアーサー王子を裏切るという部分も含んでおります。今まで本物の悪役令嬢だった人を裏切るヴィランから、裏切らない川越となったが、最後に川越もヴィランのように人を裏切った。ここで初めて本物の悪役令嬢となったという形です。
この作品は私の書いている他の作品、孤独の棋士が行き詰まった時に思いついた作品でしたが、気がつけばなかなか良い作品になったと思います。
川越とアリスの物語…もしかすると続編。あるかもしれませんね。




