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あやかし古書店の名探偵 〜銀髪の狐と巻き込まれた孤独な書店員〜  作者: 上下左右


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第三章 ~『遅刻と心配』~


「西住くん、遅れてごめんなさい!」


 明智と話していたこともあり、扉を開けた時には三分遅刻していた。申し訳なさそうに頭を下げると、西住はほっと息を吐く。


「遅刻のことなんていいさ。もともと僕から頼んだことだしね。それよりも東坂さんが事故に巻き込まれてなくてよかったよ」

「西住くん……本当にごめんなさい。次からは絶対に遅刻しないから!」


 遅刻よりも自分の身を案じてくれる西住に対して、申し訳なさが心を埋め尽くしていく。


「この遅れを挽回するためにも、さっそく仕事を任せて頂戴。重たい荷物でも何でも運ぶから」

「女の子に重い物を持たせたりしないさ……東坂さんには、このダンボール箱に詰まっている本を棚に並べる仕事をお願いしたいんだ」

「うわー、凄い量ね」


 ダンボールが十箱積まれており、箱の中にはギッシリと本が詰まっている。本を取りだすと、西住の指示に従い、整理を開始する。


 二人で肩を並べて、黙々と棚に本を差していく。静寂が支配するが、心が落ち着くような静けさだった。


「この本、どういう人が売りに来たの?」


 作業を止めないままに、質問だけを投げかける。どうせ働くなら楽しんでやる方がいい。西住は口元に笑みを浮かべたまま、彼女の質問に答える。


「実は山崎くんたちが売りに来たんだ」

「もしかしてお父さんの遺産を?」

「趣味のコレクションが書庫に眠っていたそうでね。どうせなら同好の士に楽しんでもらった方が良いって、タダ同然の価格で投げ売りに来たんだ」

「へぇ~、あの山崎くんがねぇ」


 金に五月蠅く、自らの損失を許容するようなタイプではないと思っていただけに、心底驚かされる。


「この前の推理の代金だってさ。そうそう、東坂さんにも感謝していたよ」

「私に?」

「あれから千鶴さんが自分の意思を主張するようになったそうでね。なんでも、男性相手でも怖気づかない君に憧れているそうだよ」

「私に憧れかぁ~えへへ、なんだか嬉しいなぁ♪」


 気恥ずかしさで頬を掻く。人に尊敬された経験が少ないためか、仮にお世辞だとしても喜びを隠しきれなかった。


「でも山崎くんが来てたのかぁ。もしかして由紀が来ていたのもそれが理由なのかな?」

「明智さんがどうかしたの?」

「実は店の前で入り口を監視していたの。私を気遣ってくれたことも本心だとは思うけど、本命はやっぱり彼だったのね」

「でもだとしたら明智さんはどうやって山崎くんが店に来ることを知ったんだろう?」

「さぁ、でも私が西住くんに雇われてバイトすることも知っていたし、顔が広いのかも」

「…………」


 西住は何か考える素振りを示すように、顎に手を当てる。


「どうかしたの?」

「いや……ただの杞憂さ。気にしないでよ」

「西住くんがそういうなら……」

「それよりもさ、楽しい話をしよう。この本なんだけど――」


 西住は古書のウンチクを楽しそうに語る。そんな彼の表情を見られただけで、バイトを受けて良かったと、彼女も心を躍らせながら本の整理を続けるのだった。



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