5.私は彼の評価を1ランク下げた。
「俺の方が2歳も年上なんですけど⋯⋯お前ごときになんでアドバイス貰わなければならないんだよ!」
明らかに兄ルイスは怒っていた。
西洋風のこの世界では王族や貴族は表情管理とかして、もっと感情を隠したりするべきなのではないか。
2歳年上ということは、彼は今年アカデミーに入学したということだ。
つまり、私たちが入学する頃には最上級生。
最上級生のお色気次期国王というポジションはやはり脇役とは思えない。
「兄上、申し訳ございません。今、一番苦しいのは自分を見失ってしまったイザベラなのです。広い心で接して頂けるとありがたいです」
またしても、ルイ王子がひたすらに兄に謝っている。
それにしても、レオ王国というしょぼい国名、次期国王の人格の残念さを鑑みるにここはメインステージでない可能性が出てきた。
「この国もしかして、帝国に隣接してたりします? 私、実は自分が可愛くて驚いているんです。目なんか金色で丸々してピカピカじゃないですか。ルイ王子に婚約破棄された後、私は帝国の皇太子か皇帝あたりに溺愛されたりする気がしてきました」
メインステージならもっと長い国名のはずだ。
そして私は今ピンク色の長いウェーブ髪にキラキラの黄金の瞳をして意地悪さのかけらもない極上の可愛さを持っている。
イザベラがもしかしたらヒロインではないかと思い出したのだ。
ヒロインである私が実は聖女の力を持っていて、帝国に私が行ったらレオ王国が悪天に見舞われ「ざまぁ」されるという展開だ。
「帝国は隣接していませんよ。レオ王国は周辺諸国では1番の大国です。自分が婚約破棄されるなんて思わないでください。僕はイザベラにとって頼りないかもしれないですが、大国の王子としてあなたを守る力があることを信じて頂ければと思います」
ルイ王子が私の手を包み込みながら優しい眼差しで言ってくる。
このような心の綺麗そうな子が、私をざまぁしたりするのだろうか。
しかし、恋は人を変えてしまうからアカデミーに入学してから彼を翻弄する平民が現れるのだろう。
「ルイ王国の小さな太陽ルイス・レオ王太子殿下にイザベラ・バーグがお目にかかります。アカデミーについて提案があります。平民の入学は認めないことにしませんか?」
私はとりあえず現在アカデミーに入学しているだろう権力を持つ兄ルイスに挨拶をした。
それにしても太陽に大きいも、小さいもない。
笑わずにするのが、難しい挨拶だ。
「挨拶今更だし、元々アカデミーは貴族の為につくられた教育施設だから平民に入学資格はない」
兄ルイスは明らかにイラついたように私に言ってきた。
ヒロインは平民ではないということなら、男爵令嬢とかだ。
「それでは、向こう3年はたとえ平民が光の魔法が使えようと入学を認めないでください。それから、下位貴族の入学も認めない方向でお願いします」
「お前、自分が公爵令嬢だからって、下位貴族への差別が酷くないか? 等しく教育の機会を設けるのは当たり前だろう。それから、魔法って何だよ。夢でも見てるのか」
今、夢の中でレオ王国にいるならば、あと5年は優雅な生活ができるこの夢が覚めないでほしい。
兄ルイスはどうやら、差別意識はないようだ。
意外と良いやつなのかもしれない。
「やっと、次期国王らしいお言葉を頂けましたね。私は、あなたを再評価しはじめましたよ、兄ルイス。魔法はこの世界にないのですね、私は現実主義なのでその方がやりやすいです」
魔法がないというだけで、かなりありがたい。
魔法要素が出てきてしまうと、地道に生きていても大逆転される展開が予想されてくる。
「だから、どうしてそんなに偉そうなんだよ。兄ルイスって何だよ。せめてルイスって呼べよ」
また怒りを隠せない兄ルイスを見て、私は彼の評価を1ランク下げた。
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