3.サクラとして私の結婚相談所に登録しては頂けませんでしょうか?
「ダラダラ生きてはいません、僕は将来、国王になった兄上のサポートができるように日々勉強しています。再来年からアカデミーに通いますし、より自分の力をつけられればと思います」
ルイ王子はかなり真面目なようだ。
次男だからといって、最初からサポート人生を受け入れるつもりでいるらしい。
この世界では長男より次男の方が我慢強いと言うことだ。
「アカデミー頑張ってくださいね。あと、婚約は破棄してください。アカデミーの卒業式あたりに、あなた私とのこの婚約を破棄すると思いますよ。私は預言者です。未来が見えています」
おそらく、アカデミーで平民の女と恋に落ちて私がいじめたとかでっちあげて婚約破棄の流れになるんだろう。
私がそのような茶番に付き合ってあげる義理はない。
「イザベラ、あなたも一緒にアカデミーに行くのですよ。私は婚約破棄をするつもりはありません。今のおかしくなった婚約者を放って置けません」
ルイ王子はかなり親切らしい。
性格的にも彼がヒロインの相手役の可能性が高そうだ。
いじめられているヒロインを自分が守らなければという気持ちから恋心をが生まれ、私を切るということだろう。
「今更、アカデミーのようなものに通う気はありません。将来何をやるか決まってない自分探しのようなことをしに行くところですよね。私はもう自分探しが終了しています」
とにかく、椅子に座って勉強のようなことを今更やりたくはなかった。
再来年ということは12歳からアカデミー通いがはじまるということだ。
何の罰ゲームでそのような多感な時期の子供の相手をさせられなければならないのだ。
「アカデミーに通うのは貴族の義務ですよ。イザベラ、本当にどうしてしまったのですか?僕にできることがあれば何でも言ってください。あなたが本当の自分を取り戻せるまでサポートさせて欲しいのです」
ルイ王子はかなりサポートが好きらしい。
それにしても彼は性格が良すぎではないだろうか。
兄のサポートをするという一生日陰の生活を目指して努力しようとし、いかれた婚約者がいればまたサポートすると言っている。
正直者が馬鹿を見る世界で、性格の悪い奴ほど成功する。
むしろ、サポート人生しか歩むのを当然と思っている悲しい彼を私が意識改革してあげた方が良い気がする。
「ルイ王子、ここで出会ったの何かの縁です。私、事業をはじめようと思っているのですが、投資していただけないでしょうか」
とりあえず、私は仕事で成功してしまおうと思った。
仕事で成功してしまえば、2年後、アカデミーのようなところに行くようにと言われない気がする。
多くの起業家は大学を中退したことを、偉そうに語っているではないか。
そんな実業家として成功している私を間近で見たら、彼も兄のサポート人生で良いのかどうか考え直すだろう。
「事業ですか? イザベラがやりたいというのなら応援します。失敗しても良い経験になると思いますし⋯⋯」
ルイ王子はネガティブ思考のようだ。
すでに私が失敗することを考えている。
それに私が何をやるか全く言っていないのに、金を出すことには何の異論もないらしい。
親の金だろうが、王子ならば打ち出の小槌のように金が出てくると思っているのだろう。
私は彼のいくらでも金を出しそうなところは気に入った。
そして、私が自由に話してもおかしくなった婚約者としてどんどん心配してくれる。
好感度が上がっているような様子さえ見られて、一緒にいて気楽だ。
「私は結婚相談所をやろうと思っています。男と女をマッチングさせて結婚させるのです。私は通ったことがないのですが、もう少し若ければ通っても良かったかなと思ったりもしています」
私の言葉にルイ王子は首を傾げていた。
この世界に結婚相談所はなさそうだ。
貴族は家と家での政略結婚が基本なのだろう。
「ルイ王子にお願いがあります。まずは、あなたが広告塔というか、サクラとして私の結婚相談所に登録しては頂けませんでしょうか? 」
私は王子が登録していれば、姫に憧れる女どもが集まってくると睨んだ。
別に政略結婚するような貴族を相手にしなくても、商人でも何でも登録してくれれば良いのだ。
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