2.外で話しませんか、タバコ吸いたいので。
「イザベラ、ルイ王子殿下と婚約をしようと思っているんだ」
父親らしきピンク髪の男が私に言ってくる。
優しそうにしているが、幼い少女を武器に王家とのパイプを作ろうとするクソ野郎だ。
「イザベラ、よくそのような悪役のような名前を娘につけたものですね。ほんの少しでも幸せを願うなら私の名前はフローラでしたわ。」
如何にも悪役らしい名前で呼びかけられて自分がざまぁ要員だと確信した。
仲良くなったら「ベラ」とでも呼ばれるのだろう、どこぞの妖怪人間ではないか。
ルイとかいう王子の名前も私が聞くと、断頭台に向かう未来しか見えない。
「ルイ王子殿下、娘が体調が悪く発言が不明瞭になっております」
私がした発言に私の父親が動揺したように幼い王子の顔色を疑う。
この家はその程度の親子関係しかないということだ。
娘への愛情が深ければ、まずいつもとは違う言動の娘を心配するだろう。
「ルイ王子殿下、私はあなたと婚約する気はございませんよ。王子殿下は見た目は良いですが、ルックスで判断する愚かさをもう知っておりますゆえ。」
私が言った言葉に、金髪碧眼の如何にも王子のルイ王子は私を凝視していた。
「すみません。外で話しませんか?タバコ吸いたいので」
私は40歳手前で浮気されたショックと、異世界転生あなたは悪役令嬢破滅を回避してみてね的な展開にうんざりしていた。
そして言ったあと、自分が子供で酒にもタバコにも逃げられないことに気がついた。
「タバコとはシガーのことですか?」
震える声で言ってくる、ルイ王子多分10歳くらいに私は笑いを堪えるのが大変だった。
「シガーかもしれませんね。よくできました。外に行きますよ、王子殿下」
私がそういうと、王子殿下はなんだかわからない顔で私について来た。
「とりあえず、婚約とやらはやめてもらいませんか。あなたと結婚しても幸せな未来が見えないので。あなたはキングオブヘル。あなたと結婚したらこの先は地獄しかないことが経験上私にはわかるのです」
私の言葉に美しさと可愛らしさが共存した王子が動揺しているのがわかる。
「イザベラ、あなたは私のことを愛していると言ったではないですか、あれは嘘だったのですか? 」
明らかに子供の姿の私が愛などと語ったのは金目当てか、将来王妃になりたかったのだろう。
「子供の言うことを間に受けてはなりません。多分、王妃になりたくて言ってみただけだと思いますよ 」
私が言う言葉に彼が顔を顰める。
「国王には兄上がなるので、イザベラは王妃にはなりません。」
彼が寂しそうに呟くが、全く私は同情できない。
私は子供が嫌いなのだ。
仕事中はいつも子供が好きなふりをしていたが、本当は好きではない。
それにしても沖縄便では明らかに座席を買うべき大きな子を膝上に乗っけている非常識な客がいる。
私が本当に嫌いなのは非常識な子供の親だ。
「ルイ王子、国王にならない王族など何の価値もありませんよ。あなた幾つですか?私、子供は嫌いではないと今気が付きました。アドバイスしてあげても良いです。とりあえず、兄を引き摺りおろして国王の座を目指しなさい。それだけで、あなたはSランクの男に生まれ変わります」
私の言葉に王子が目を見開いた。
開眼したようだ、これから強くなりそうだと私は少しワクワクした。
「僕はイザベラと同じ10歳です。どうしてしまったのですか?何だか、イザベラがいつもと違っていて夢を見ているみたいです。父上が兄弟間で争うのは自分の代でうんざりしているらしく、長子である兄上が王位を継ぐことになっています」
話を聞けば聞くほど、彼に魅力を感じない。
「では、あなたは特に夢もなく毎日ダラダラと生きている訳ですね。10年後絶対に後悔しますよ。実はここからの10年はその後の10年とは違います。ちなみに夢である可能性はあります。私は今が現実でも良いかなと思ってたりします」
私は自分が現実世界で婚約者に裏切られ、退職届まで出していてしまった39歳だということを思い出した。
10歳の金持ちの少女とは持っている将来性が違う。
私は今、この世界で人生がゼロからはじまることを願った。
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