表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第3章 その兜は勇気をもたらす
98/234

第12話 裏世界を通って

 読んでくださりありがとうございます。さて古びた地図のどこを見ればいいんでしょうか。


 そう言ってマシューは古びた地図のある部分を指差した。穏やかに緩んでいた表情をサッと引き締めてエルヴィスとエレナはマシューの指先を目で追った。マシューが指差している場所は古びた地図で言うところの修羅の国辺りである。そしてそこに描かれているのはエルヴィスが持ち込んだ地図と少し変わっていたのだ。


「…………谷が描かれていない⁈」


「あぁ、そうさ。ここには谷らしきものは描かれていない」


「……なぜ?」


 エルヴィスの聞いたそれは当然の疑問である。もちろんこの古びた地図は他の地図とは少し描かれているものが違っており、古びた地図に修羅の国と嵐馬荒原の間にあるはずの谷が描かれていないのは単なるミスの可能性もあるのだ。だがマシューはそれとは少しばかり違うとある仮説を立てていたのだ。


「ここを見て欲しい」


「……何の変哲も無い平原に見えるが」


「……ん? これもしかして嵐馬平原が描かれているのか?」


「嵐馬平原?」


何かに気付いたかのようなレイモンドの横でエルヴィスは首を傾げた。エルヴィスは何のことだかさっぱり分かっていない。もちろん隣のエレナも同じである。何しろ2人は嵐馬平原の事を知らないのだから仕方ないとも言えよう。


「あぁ、恐らくそうだ。ここに描かれている平原は嵐馬平原だよ。そして今までの話を踏まえれば、この嵐馬平原は裏世界にあるんだ」


 そう断言してマシューは皆の様子を伺った。そして首を傾げたのだ。なにせ3人がそれぞれ別の反応を示していたからである。レイモンドは納得しているかのように小さく頷き、エルヴィスは険しい顔をして古びた地図をじっと見ていた。そしてエレナはポカンと口を開けた放心状態でただマシューを見ていたのだ。


「……ええと、みんなのその反応はどう言う意味だい?」


「ん? 俺は納得したぞ。つまり裏世界を通れば修羅の国へ行けるってことなんだろ?」


「簡単に言うね。……そもそも裏世界へどうやって行くって言うのさ。それにその君たちの言う嵐馬平原をまず僕は知らないぞ」


「私もそれが、……と言うより今の話の全部が分からないや」


「落ち着いてくれ。ひとつずつ説明しよう」


 マシューがそう言った瞬間3人が3人とも同じタイミングでマシューの方を向いた。それに面食らったマシューは一瞬固まってしまったがすぐに我に帰ると説明を始めた。


「……まずどういう行き方で修羅の国を目指すかだが、それはレイモンドの言ったように裏の世界を通って目指すことになる」


「おう、そうだと思ったぜ」


「……確かにこの地図を見る限りでは裏の世界を通れば修羅の国へは行けそうではある。だが、どうやって裏の世界へ行くんだ? 特別な方法でも無い限り裏の世界へ行くのは無理だよ?」


 エルヴィスはあまり納得していない表情である。それはマシューが簡単に言う裏の世界へ行くことがどれほど難しいことかを理解しているからである。


 そしてマシューが裏の世界へ行くことを簡単なことのように言うのもまたそれが簡単なことであることを知っているからである。表情を変えずにマシューは古びた地図を指差した。


「裏の世界へ行くのは簡単だよ。ここから【転移ゲート】を使えばすぐに行くことが出来るはずだ」


「【転移ゲート】? ……なるほど、誰でも使うことの出来る設置型のタイプか。それなら確かにすぐに行くことは可能だ。……だが、設置型のタイプでも裏の世界へ通っているものとなると」


 エルヴィスは考えながら独り言のようにぶつぶつと呟いていた。そしてようやく結論にたどり着いたのだろう。エルヴィスは顔を上げマシューをじっと見ていた。


「……以前言っていた高位の【転移ゲート】があるのか?」


「当たり。嵐馬荒原の入り口にそれがあるのさ。それを使えばここに描かれているすぐに嵐馬平原へ行くことが出来る。そしてそこから修羅の国へも行けるはずだよ」


「……なるほど。それじゃあさっき言っていた嵐馬平原と言うのはつまり裏の世界にある嵐馬荒原と言うことか」


「恐らくそれで正しいはずだよ」


「よし、それじゃあ修羅の国へ行くことは出来そうだな」


 ようやくエルヴィスは納得の表情を浮かべた。それを見てマシューとレイモンドは満足そうに微笑んでエレナの方へ顔を向けた。そして少し首を傾げたのだ。先程から特に何も言わないのでエレナは既に納得しているのだと思っていたのだ。


 しかし実際のエレナはずっと疑問を抱えていただけだったのである。


「うーん、考えても結論は出ないものだね。……ちょっと質問があるんだけど、聞いても良いかい?」


「質問?」


「そう、質問だよ。裏の世界を通れば修羅の国に行くことが出来るとして、どうやって表の世界に戻るんだ? 修羅の国には同じような高位の【転移ゲート】があるんだろうか」


 エレナのその質問に全員黙り込んでしまった。帝都へ帰還する際には何の問題も無い。行きと同様に嵐馬平原にある【転移ゲート】を使えば簡単に帰って来られるだろう。


 つまりエレナの言っている元の世界に戻るとは修羅の国へ着いてからの話である。裏の世界の修羅の国にエレナの父マルクがいるのなら何の問題も無いが、もし表の世界に戻る必要があるのなら修羅の国の中で戻る方法も考えておかねばならないのだ。


「……確かソフィアの話では修羅の国は表と裏が混在する国だって話だったよな? だったら表の世界と裏の世界を行き来くらい出来るんじゃないか?」


「言葉をそのまま捉えるならそうなるね。……ただ、流石に情報量が少ないまま突撃するのは危険かな。それじゃあひとまずは修羅の国についての情報をもっと集めることから始めようか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ