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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第3章 その兜は勇気をもたらす
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第11話 ともに行こう

 読んでくださりありがとうございます。古びた地図の中心に描かれたものが何か判明しました。これにより色々と考え直さなくてはならなくなりますね。


 エルヴィスは《知恵》の象徴がある黄金の林檎の位置がバツ印と重なっていることからマシューの仮説が正しいと判断したようだ。そしてマシューたちはバツ印がある嵐馬平原で《幸運》の象徴である蹄鉄の鎧を手に入れている。すなわちマシューの仮説を裏付ける事例が2つあることになるのだ。他の《七つの秘宝》も同じように見つかるかは分からないが信憑性の高い仮説と判断して良さそうである。


 それ故にマシューは記されたバツ印を目で追いながら困った顔をしたのだ。中心に描かれているのがマシューたちがかつて住んでいたあの田舎町だとするならば、そこにもバツ印が記されているのだ。つまりあの田舎町のどこかに《七つの秘宝》があったという訳である。


「…………ュー! マシュー‼︎」


 深く考え込んでいたためエルヴィスが自分を呼んでいたことにマシューはすぐには気付かなかった。気付いてもらおうとエルヴィスはかなり大きな声で呼びかけていたらしい。横でエレナが耳の辺りを手で押さえていた。


「あぁ、ごめんよ。ちょっと考え事をしてたんだ」


「……結構大きい声で呼びかけても気付かなかったからびっくりしたよ」


「本当だよ。結構うるさかったのにマシューは全然気付かないんだから」


 言葉では文句を言っているようだがエルヴィスもエレナも何か嬉しいものを見つけたように微笑みを浮かべていた。いったい何を見つけたのだろうか。


「マシューがさっき言った仮説のことなんだが、話を進めていいか?」


「もちろん」


「さっきの仮説を正しいとするなら君たちはバツ印のところへ行きたいんだろう? これまでに黄金の林檎以外のバツ印の場所のどこに行ったかは分からないけど、ここならまだ行って無いんじゃないか?」


 そう言ってエルヴィスは古びた地図のバツ印を右手の人差し指で、大きく広げられた地図のある部分を左手の人差し指で指差した。その場所は嵐馬荒原をさらに進んだ奥にある小さな町のような場所である。それを認識した瞬間エルヴィスが言いたいことをマシューは理解したのだ。


「……なるほど、修羅の国に《七つの秘宝》があるのか」


「あぁ、そう言うことさ。つまり君たちもまた修羅の国へ行く理由があると判断して良いんだよね?」


 エルヴィスのテンションはかなり上がっているようだ。どうやらマシューたちと共に行動出来る事を喜んでいるようだ。マシューからするとそれは願ってもないことであり、喜ぶべきことである。


 だが、それはマシューだけで決めて良い事ではない。マシューはちらりとレイモンドの様子を伺った。レイモンドはこちらを見ながら頬杖をついてニヤニヤ笑っていた。なるほど、レイモンドもこの状況を楽しんでいるようである。それならマシューの言うことはひとつしかない。


「まあ、そう言うことになるかな。……修羅の国に行ってからも一緒に行動してくれるのかい?」


「もちろんさ! ……実のところを言うと心配してたんだよ。君たちとの関係は修羅の国以降無くなってしまうんじゃ無いかと思ってね」


 どうやらエルヴィスはマシューたちとの関わりを相当大事にしており、どうにかそれっきりになるのを防げないか気を揉んでいたようなのだ。それをよく知っているエレナは含み笑いを浮かべながら口を開いた。


「……あなたたちがどこまで知っているのか分からないけど、エルヴィスは過去に色々とあったのよ」


「あぁ、エルヴィスの過去の話なら昨日聞いたよ」


「ならエルヴィスがあなたたちとの繋がりを大切にしているのか分かるんじゃない? ほら、何の偏見も無しに関わってくれる人はかなり限られているからさ」


 エレナのその言葉にエルヴィスは少し恥ずかしそうである。確かにマシューもレイモンドもエルヴィスの過去に何があったのかを全く気にしていなかった。だがそれはエルヴィスにとってはとても珍しいことだったのだろう。何しろエルヴィスは神聖の騎士団の騎士団長の息子でありながら追放された身である。追放されてからどのような扱いを受けたかは想像に難くない。


「……そう言えば、エルヴィスとエレナはいつ出会ったんだ?」


「エルヴィスと私は割と腐れ縁だよ。……あんまり覚えてないけど5歳くらいの時じゃなかったっけ?」


「そうだね。その辺りだったと思うよ」


 エレナのその言葉にエルヴィスも頷きながらそう答えた。エルヴィスとエレナは同い年であることを踏まえると2人の出会いは大体10年以上前の話である。頭の中でそう計算したマシューは感心したように何度か頷いた。その表情を見てレイモンドはニヤリと笑って口を開いた。


「なら俺たちの方が腐れ縁だな。何せ俺たちは生まれた時には既に出会っているからな」


 レイモンドはそう言って胸を張った。なぜそこまで誇らしげなのかは分からないがその計算ならマシューたちの方が腐れ縁であることは間違いない。


 もっともそれはただ年数が多いだけであり、仲の良さを裏付けるものではない。確かなことはどちらも昔から仲の良い2人組がいて、その2人組同士がここに集まっていると言うことだけである。


「どちらが腐れ縁かはひとまず置いておいて、不思議な縁であることは確かだな。……そんな2人組がこうしてここに集まっているんだからさ」


「そうだね。……ふふ、本当に不思議な縁だよ」


「さて、それじゃあ話を戻そうか。みんなこの古びた地図のこの部分をもう一度見てくれ」


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