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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第2章 知恵の果実は近くもあり遠くもある
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第29話 その木の一番上に登れば

 読んでくださりありがとうございます。知恵の樹上の入り口へはもうすぐです。


「知恵の樹上の入り口はここからさらに奥だよ。ここから先はモンスターと遭遇する確率が高い。注意して進もう」


 そう言ってエルヴィスはマシューからもりんごを受け取ると森の奥へと歩いて行った。どうやら古代樹の空洞の時とは違う道に進むようだ。エレナとレイモンドもそれに続いて歩き始めた。これから先はいつ戦闘になってもおかしくはない。腰に下げたウェイトソードを手にかけながらマシューも3人に続いて森の奥へ足を踏み入れたのである。


「……そういえば、知恵の樹上にはコカトリスがいるんだよな?」


「そうだよ。結構な割合生息しているみたいだから今回の攻略でも何匹か遭遇するかもしれないね」


「……だよな。でも今のところ遭遇する気配はないぜ?」


 レイモンドはそう言って首を傾げた。確かに今のところ紅玉の森の中でコカトリスには遭遇していない。と言うより鳥型モンスターを一体も見ていないのだ。もっとも遭遇した数自体少ないので下振れしている場合も考えられるのだが。


「だろうね。まあ、知恵の樹上に着けば分かると思うよ」


「着けば分かる? どういうことだ?」


「……静かに。近くにモンスターがいそうだ」


 モンスターの気配を察知したらしいエルヴィスが歩みを止めた。するとその次の瞬間不思議そうな顔のレイモンドのすぐ横の茂みが揺れた。わざわざモンスターが飛び出して来るのを待つ必要も無い。レイモンドはその茂み目掛けてシュバルツスピアを突き立てた。


 何かの叫び声が聞こえたかと思うと茂みの奥は再び静かさを取り戻した。茂みをかき分けてみるとなるほど、見覚えのあるモンスターが茂みの奥で息絶えていたのだ。


「エイプウォリアーか、懐かしいな」


「あぁ、多分隠れて騙し討ちでも狙っていたんだろう。回収したらすぐに進もう」


「そうだな。……あれ? そういや俺ら古代樹の空洞で討伐した討伐の証納品して無いんじゃねぇの?」


「……そう言えばしてないな」


「収納袋の中に入れてあるなら大丈夫だよ。帝都に帰ってからまとめて納品すれば良いさ。遭遇するモンスターは全然違うだろうから問題ないはずだよ」


 なるほど、収納袋の中に入れてあるなら大丈夫らしい。恐らく知恵の樹上でも数多くのモンスターを討伐するはずなので納品した際の報酬金が楽しみである。エイプウォリアーの右耳を削いで収納袋に入れるとマシューは顔を上げた。エルヴィスが杖を掲げたのはほぼ同じタイミングである。目を細めてエルヴィスの視線の先を伺うとマウスラビットがうずくまっていたのだ。どうやら既に討伐したようである。


「あれ? いつの間に討伐したの?」


「さっきだよ。僕らに気が付いて近づこうとしていたからね。遠距離で攻撃することにしたんだ。……ちょっと遠いからあれは回収しないで先に進もうか」


 見晴らしの良い場所なら討伐したモンスターは全て討伐の証を回収しても問題無い。それは他のモンスターに遭遇するのを未然に防ぎやすいからである。だが、紅玉の森のように障害物が多い場合は回収に無理をする必要は無いのだ。エルヴィスにならって3人は回収を諦め先に進んだのである。


 そしてさらに数十メートルほど歩きエルヴィスは歩くのを止めた。目の前には少しばかり大きめのりんごの木とその幹に絡みつくように生えるツタがある。ここが知恵の樹上の入り口なのだろうか。


「さ、ここが入り口だよ」


「もしかしてこのツタを使って木の上に登るのか?」


「ご名答。エレナ、マシューたちに手本を見せてやりな」


 その木は低い場所の枝が少なく登るのはやや難しそうである。ツタを使えば登れそうではあるがどこに繋がっているのか分からない以上は掴みづらい。エレナはどうやってこの木を登るのだろうか。興味半分不安半分で2人はエレナを振り返った。


エレナは軽くストレッチをしてその木に近づくとツタを手に取った。なるほどどこか頑丈なところに繋がっているらしい。エレナが手に持ったツタは引っ張る力に合わせてピンと張り詰めた。そしてそのツタを器用に使ってスルスルとエレナは木の上に登りやがて見えなくなった。


「見えなくなったぞ?!」


「それはそうだよ。知恵の樹上は紅玉の森とは全然違う場所だからね。君たちも行けば分かるよ。さ、やり方は見ていただろう?」


 そう言ってエルヴィスは2人にツタを差し出した。マシューより近い位置にいたためレイモンドが先に、その次にマシューが木の上に登っていった。なるほど、このツタは木の一番太い枝の先に繋がっていたようだ。


 そしてその枝を踏めば上手く上に出られそうである。レイモンドも既に上に登りきっているようだ。落ちてしまわないよう注意しながらマシューは枝を踏みつけさらに上に登り葉の生い茂る間から顔を出した。なるほど、確かにこの場所は紅玉の森とは全然違う場所である。照りつける太陽が眩しくマシューを照らしていた。

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