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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第2章 知恵の果実は近くもあり遠くもある
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第25話 象徴とは…?

 読んでくださりありがとうございます。エルヴィスは象徴について詳しく知っているようです。


「あぁ、構わないよ。象徴は初代勇者様が魔王を討ち取った時の装備品とも言われる不思議な力を持つ代物で全部で七つあると言われているんだ。《知恵》の象徴の他に《探究》、《勇気》、《正義》、《自由》、《幸運》、《希望》の象徴がある。君たちの持っていた文献には《知恵》の象徴である黄金の林檎と《勇気》の象徴の獅子頭の兜、それから《希望》の象徴の虹色の紋章が記されていたよ。僕が知っているのはここまでだね」


 エルヴィスは黄金の林檎を手に入れるために相当象徴のことを調べていたに違いない。その一切の澱みない説明は2人にそれを伝えるのには充分である。そして象徴は全部で七つあることと《幸運》の象徴が存在することから2人が求めている《七つの秘宝》がエルヴィスの言う象徴だと言うことが完全に一致してしまうことに気付くのにも充分すぎた。


 2人ともそのことに思い至りエルヴィスたちに何も言えなくなってしまった。マシューたちもまた黄金の林檎を手に入れなければならない理由が出来たからである。そうなればエルヴィスたちは言ってしまえば黄金の林檎をめぐるライバルになり、協力関係は取れないのだ。


「……どうしてあなたたちはそんなにテンションが下がっているの? そんなにテンションが下がることをエルヴィスは言ったかしら?」


 唐突にエレナからそうぶつけられ2人は何も言えなかった。そして2人が何も言えずにいる理由が分かっているのだろう。エルヴィスは小さく頷いた後で口を開いた。


「多分2人は、……迷っているんじゃないかな」


「迷っている? 何を?」


「このまま僕らに協力していて良いのかをさ。今までの話から考えるに、マシューたちもまた僕ら同様黄金の林檎を手に入れようとしている人たちになるんだ。だからこそ2人は今迷っている。……どうだい、違うかな?」


 エルヴィスの言う通りである。2人はエルヴィスたちに協力するべきか悩んでいたのだ。普通に考えれば協力関係は取れるはずが無い。なぜならエルヴィスたちの目的は黄金の林檎を手にすることで修羅の国へ行くための手がかりを知ることであり、マシューたちの目的である《七つの秘宝》を探すことでは無い。たとえ目的が同じでも目指す目標が違うために協力関係は取れないのだ。


 もし黄金の林檎が2つあるのなら2人はエルヴィスたちに協力することを何ら迷わなかっただろう。だが、黄金の林檎はたったひとつ、どれほど願ってもマシューたちとエルヴィスたちの両方が手にすることは不可能なのである。


「……正直に言えば……迷っているよ。エルヴィスとエレナが欲しがっている黄金の林檎が《知恵》の象徴だと知ってしまった以上、僕らもまた黄金の林檎を手に入れる理由が出来たんだからね。もし、分け合えるのなら是非とも協力したいが……、実際には無理だろうね。《知恵》の象徴なんて言うくらいだ。きっとこの世にひとつしか無い貴重なものに違いない」


「……ふふ、君たちはやっぱり優しい人たちだよ。黄金の林檎を分け合うなんて話僕は聞いたことが無い。……分け合えるなら是非とも協力したいと言ったね? その言葉は本心で言っているのかい?」


「……? 本心だが、……分け合う方法でもあるのか?」


「分け合う方法は無い。……いや必要無いと言う方が正しいのかもしれない。だって僕とエレナは修羅の国への出入りが出来ればそれで良いんだからさ」


 その言葉にマシューは急いで記憶をたぐり寄せた。確かにエルヴィスは修羅の国へ行くために黄金の林檎を手に入れようとしていた。それはつまり修羅の国への行き方さえ分かれば黄金の林檎を手に入れずともどうでも良いのだ。それが分かった2人は2人とも呆けた顔で口を開けていた。


「……なるほど、それじゃあ俺たちが黄金の林檎を手にしても問題無いと言う訳か」


「そう。僕とエレナは入手自体にこだわっている訳ではないからね」


「……それなら目指す目的が一致するのか。ふふ、良かったよ。さっきまで仲良く一緒に行動していた人と争うことになるのは戸惑いが凄いからな。……俺たちは《知恵》の象徴の黄金の林檎を是非とも手に入れたい。だから俺らとすればエルヴィスたちが手伝ってくれると非常にありがたい。……マシュー、そうだよね?」


 レイモンドはにっこり笑ってマシューへ振り返った。もちろんマシューにも反対する理由が無い。マシューもまたにっこり笑って頷いた。それを見てエルヴィスとエレナも微笑んでいたのだ。


「こちらこそお願いするよ。古代樹の空洞で君たちがどれほどの実力がある人たちなのかは分かっている。きっと君たちとなら黄金の林檎まで手が届きそうだ」


 そう言ってエルヴィスは微笑みながら右手を差し出した。その手をマシューが取り両者の間で固い握手が交わされたのである。その光景を見ながらレイモンドとエレナは微笑んでいた。


 その時エレナの部屋の扉がノックされエマが中へ入ってきたのだ。何の用だろうかとマシューは様子を伺っているとエレナが立ち上がりエマのもとへ駆けて行った。すっかり忘れていたが石化から復活してからエレナはこの部屋を出ていない。つまり今は石化から復活したエレナとエマの再会の場面だと言うことだ。


「エレナ、……エレナ。無事になおって良かった。とても心配したのよ」


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