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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第2章 知恵の果実は近くもあり遠くもある
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第23話 《知恵》の象徴

 読んでくださりありがとうございます。知恵の樹上とはいったい何なのでしょうか。


「知恵の樹上は紅玉の森の木の上にあるダンジョンのような場所さ。そこを攻略すれば黄金の林檎が手に入ると言う噂があるんだ」


「黄金の林檎って言うと……、紅玉の祠にあったあれかい?」


「そう、まさにそれだ。帝都にいれば誰でも一度は見たことのあるものだが手に入れた人は数少ない。6年ほど前に1人の勇気ある人が単独で獲得したという噂は聞いたことがあるんだけど、それ以降全く誰かが獲得したと言う噂は聞かない」


 2人は黄金の林檎があった場所を思い出していた。一際大きな木にたったひとつだけなっている金色のりんご。確かに特別なものにも見えたがそれほど手に入れた人が少ないとも思わなかった。なにせ目に見えるところにあるのだ。知恵を絞れば誰でも手に入れることが出来そう。マシューもレイモンドもそう思っていたのだ。


「……それほど手に入れるのが難しそうには思えないけどなぁ。普通に木に登っても届かないのか?」


「無理だね。結界のようなものが張ってあるんだ。だからちゃんとした道順で近づかないと弾かれてしまうのさ。つまり手に入れたければその道順を見つけるしか方法は無い」


「……なるほどね。確かにあれは特別なものには見えるが、そこまでして手に入れる価値があるものなのかい?」


「もちろんだよ。なにせあの黄金の林檎は《知恵》の象徴。手に入れば神の叡智に一歩近づけるとも言われる代物だよ。僕ら魔法使いなら誰しも一度は手に入れてみたいと思うものさ。……それに、君たちも手に入れたいんじゃないかい? 象徴について知りたがっているんだろう?」


 虚をつかれマシューは黙り込んでしまい、レイモンドは瞬きの回数が露骨に増えてしまった。これでは何を言っても誤魔化すことは出来ない。エルヴィスはマシューたちが《七つの秘宝》を探していることを知っているのだ。


 黙り込んでいる間マシューはエルヴィスと出会った時を思い出していた。そしてなぜエルヴィスがそんなことを言い出したかに思い至った。あの時2人が調べるために閲覧室に持ち込んでいた本の中にたった一冊象徴について書かれた古い本があったのを思い出したのである。


「……確かに俺たちは象徴について知りたがっているよ。だが、なぜそれを? あんたにはまだ何も言っていないはずだぜ?」


「それは書庫で会った時に積んでいた本の中に象徴について記された本があったのを見たからだよ」


「……だが、それでなぜ象徴について知りたがっていると? いくらそれについて書かれた本があってもすぐにはそう結論出来ないはずだ。……だよね?」


 そう言ってレイモンドはマシューに振り返った。確かにそれだけでエルヴィスがそう判断するのは無理がある。せめてもうひとつくらい決め手が無ければその結論は出ないはずだ。


 だがマシューはその決め手に心当たりがあった。恐らくそのタイミングでエルヴィスはは自分たちが象徴について知りたがっており、《七つの秘宝》を求めていることを知ったのだ。


「……黄金の林檎について知らなかったから……かい?」


「そう言うことだね」


「……どう言うことだ? 俺にはさっぱり分からない」


「大丈夫、私も全然分からない。エルヴィス! 私たちにも分かるように説明して欲しいな」


 2人の視線がエルヴィスに集中した。流れで説明をしても良いかとエルヴィスはマシューへ視線を送り、マシューが無言で頷いたのを確認してエルヴィスの説明が始まったのである。


「……ええと、僕とマシューたちは書庫で会ったんだけど、その時君たちが読もうとしている本の中に象徴について記された古い本があったんだ。中々人に読まれる頻度が多くない文献だから印象に残っていたよ。でもなぜそれを読もうとしていたのかはあまり考えてなかった。大方、黄金の林檎について知って詳しく調べようとしたんだろうと言う予想がすぐに立ったからね。……ところが」


「俺もマシューも黄金の林檎を知らなかったと」


「そう、2人とも初めて見るリアクションだった。だからさっきの予想は違うなと思ったんだ。だとしたら2人があの文献を読もうとした理由が分からない。考えられるとすれば、既に何らかの象徴を知っており他の象徴について知りたくなったのではないかと結論づけたのさ」


「……すげえな、素直にすごいよ。黄金の林檎なんて手に入れなくても充分賢いんじゃないの?」


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