第2話 どこへ行こうか
読んでくださりありがとうございます。レイモンドは盾に決して泣かないという誓いを立てました。
この剣は自分の家の地下で見つかり、自分の父が誰かに託したものである。それも多分自分では無い誰かに。だからこの剣に自分の決意をこめるのはどこか筋違いのような、そんな気持ちが少しばかりマシューの心を揺らしていた。
いったい父は誰に自分の使命を託していたんだろうか。誰に未来を託していたんだろうか。いや、そんなことは誰にも分からないのだ。
なら自分がそうであると信じたって良いだろう。
ケヴィンは息子のマシューに自分の使命を託したのだ。そして託された自分は過去をいつまでも引きずる訳にはいかない。今日、この日からこの剣に誓いを立てようじゃないか。
「……俺もそうするよ。」
「……誓うのか? その剣に?」
「あぁ、……俺は弱いから誓っても泣いてしまうかもしれない。泣かないなんて決意は俺には出来ない。……でもその代わりに俺はこの剣に誓うよ。……絶対に《七つの秘宝》を集めてみせる! 俺の父さんの使命は俺が……。俺が受け継ぐんだ‼︎」
気付けばマシューは自信にあふれた顔をしていた。《七つの秘宝》を集めることがどれほど大変なことなのか、レイモンドは想像ひとつついていない。……だがマシューならきっと叶えられる。自分とマシューならその使命を達成出来る。なぜかレイモンドはそう確信出来たのだ。
「あぁ。……その思い、絶対にかなえような!」
マシューのその誓いにレイモンドは力強い言葉で答えた。俺たちならきっと叶えられる。そんな思いをこめて。
「さて、それじゃあ早速出発しようぜ。まずどこを目指そうかな」
「今のところ手がかりはこの古びた地図だけだからね。けどこれだけじゃあバツ印の場所に行くことはおろか、近づくことも出来ないかもな。出来ればこれ以外からの情報が欲しいところだよ」
そう言ってマシューは手元の古びた地図に目を落とした。地図といっても詳細な場所が描かれている訳では無い。バツ印が記されている近くがどんな地形でどのような場所かが大雑把に描かれているだけに過ぎない。そのため実はそもそも今マシューとレイモンドがいるこの田舎町がこの地図で言うところのどこであるかすら分からないのだ。
「それならあそこを目指せば良いんじゃないかな。多分情報を集めるには一番だろ」
「あそこって?」
「帝都だよ。あそこには冒険者が集まる場所があったり、すごい量の本が置いてある場所があるって俺の親父が言っていたよ」
「レイモンドの親父さん? ……あぁ、確か仕事で帝都に行ってるんだっけ? それじゃあまず帝都に行ってみるか」
どうやら行き先は決まったようだ。一つ息を吐いてマシューが出ようとした時レイモンドがじっと家の奥を見ているのに気がついた。振り返ると少し寂しそうなそれでいてその感情を悟られまいとしているレイモンドの母親ハンナの姿があったのだ。
「母ちゃん、俺ちょっと行ってくるわ」
「お金も持たないでどこへ行く気?」
「…………ちょっとね」
《七つの秘宝》を探すことで頭がいっぱいであり、2人ともお金のことは全く頭に無かったのだ。だがレイモンドは家を出る理由を伏せたいらしい。それだけに言う言葉が見つからず、かなり苦しい答えになってしまった。
その様子を見ながらハンナは呆れたように笑うと何かを投げてよこした。どうやら革袋のようであり中に何かが入っているようだ。レイモンドはそれを拾うと中を確認しすぐにハンナの顔を見た。ハンナは静かに笑っていた。
「……止めないわよ。あんたがどんなことを考えているかなんて私には全部分かっているんだからね。……必ず帰って来るのよ」
「! ……もちろん。必ずここに帰って来るよ」
「……約束よ。……マシュー! 何自分は関係無いって言う顔をしてるのさ!」
鋭い指摘にマシューは目を見開いた。完全に図星である。親子の会話なんだから自分は関係無いとマシューは勝手に思っていたのだ。
「マシュー、あんたが本当に小さい頃から私は知ってる。そしてかれこれ3年間一緒に過ごしたんだよ? 私からすりゃあんたも私の家族さ。……あんたはとても無理をしそうだ。なんだったらレイモンドよりも心配してるね。……だからあんたも約束するんだよ! ……必ず、必ずここへ帰って来るんだよ!」
「……はい! 必ず、必ずここへ帰って来ます!」
「……良い子だ。約束は守るんだよ、絶対にね。大丈夫! あんたたちならきっと全部上手くいく! 胸張って頑張るんだよ‼︎」
そう言うとハンナは笑って2人を見送った。思わぬ激励をもらった2人は胸を熱くさせながら胸を張って帝都へと出発したのであった。
マシューたちの住む町から帝都までは歩くと最短で30分ほどである。だがそれはあくまでも最短なのであり、帝都まで行った経験があまり無い2人には実現不可能である。2人は周囲を警戒しながらとある森の入り口まで辿り着いた。この時既に出発してから30分が経過していた。
「ようやくここまで来たか。……帝都まで大体あと半分ってところかな」
「あと半分ならもう30分くらいで到着するってイメージで良いのか?」
「普通ならな。……ただ目の前のこの闘猿の森を抜けるのは一筋縄じゃいかねぇだろうな。何でも一部の人からは“モンキーパーク“なんて呼ばれてるらしいぜ」