表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第2章 知恵の果実は近くもあり遠くもある
66/234

第18話 畳みかけろ

 読んでくださりありがとうございます。キャッスルタートル戦の続きです。


 レイモンドのその言葉にマシューはなるほどと唸った。レイモンドは比較的重い装備のために早い動きは出来ないことが多い。だがそんなレイモンドでも【速度支援スピードアシスト】があれば早い動きが可能になると言う訳だ。


 こうして近い距離で発動されたキャッスルタートルの【水弾ウォーターショット】は防がれたのである。予想外なことに困惑したキャッスルタートルはしばらくただこちらを見てるだけであった。我に帰ったキャッスルタートルは首を振りこちらを威嚇するためかこちらに思い切り咆哮を放った。


「……ふぅ、中々怖いな。さて、キャッスルタートルが大分怒ってるみたいだし、一気に決めちまおうぜ。俺が手前からコイツで攻め込む。マシューは回り込んで魔法を撃ってくれ」


「了解」


 マシューが頷いたのを合図に2人ともキャッスルタートル目掛けて走り出した。マシューはまるで挑発しているかのように大胆にキャッスルタートルの正面を横切ると左手前の位置で止まり【火球ファイアボール】を発動させた。そしてレイモンドは立っていた位置から最短で武器が届く場所まで駆けたのである。


 2人の動いた方向が異なることからキャッスルタートルはどちらを目で追うか迷いが生まれた。そこで判断が少し遅れるのである。少し迷って結局マシューを目で追ったキャッスルタートルはマシューが【火球ファイアボール】を発動しようとしていると見て甲羅の色を青に変色させた。


 確かにそれにより【火球ファイアボール】からのダメージは無くなっただろう。しかしその代わりにほぼ同時に食らったレイモンドのシュバルツスピアからのダメージは減らすことが出来ないのだ。目で追っていない方からの手痛いダメージに思わず唸り声を上げた。


 今ダメージを与えて来たのはこいつか。


 キャッスルタートルはそう言いたげに恐ろしい形相でレイモンドを睨みつけた。だがレイモンドからすればしてやったりであり気にする素振りを見せない。それどころか再びダメージを浴びせようとシュバルツスピアを構えていた。


 そして視界の端からこちらへ飛びかかろうとしている人の姿もキャッスルタートルには見えた。先程魔法を撃って来た者が今度は攻撃を仕掛けて来たのだろう。だが2秒と言うものはあまりに短いのだ。いくら畳み掛けるように攻撃されようとも甲羅の色を赤に変えればダメージを無くすことが出来る。攻撃を仕掛けようとする2人を嘲笑うようにキャッスルタートルは甲羅の色を赤に変えた。


「やはり見えていない攻撃には反応出来ないようだね。食らいなよ、僕の渾身の魔法をさ」


 2人を目で追うのに必死なキャッスルタートルは遠距離から密かに狙っていたエルヴィスに全く気付いていなかった。こうして甲羅を赤く変色させたキャッスルタートルにエルヴィス渾身の【闇弾ダークショット】が直撃したのである。そのダメージはキャッスルタートルの残った体力では到底耐えられるものではない。討伐完了である。


「……討伐完了か。すげえ魔法だな」


 力無くその場に倒れたキャッスルタートルを見届けたレイモンドは後ろを振り返った。照れくさそうにエルヴィスはゆっくり歩いてこちらへ近付いて来る。その姿は以前よりも数段頼もしく見えるのだ。


「どうやら見えていない攻撃にはさすがのキャッスルタートルも対処出来ないようだったからね。遠距離から狙ってみたよ。上手くいって良かった」


「やっぱり魔法に関しては俺たちよりも遥かに上だ。……これから詳しく魔法を教えてくれるんだろ? 結構楽しみにしてるんだぜ?」


「確かにね。それは俺も楽しみだ」


 2人は期待のまなざしでエルヴィスを見ていた。そのまなざしは曇りひとつない純粋そのものであった。それをまともに浴びたエルヴィスは照れくささが限界に達したのだろう。は2人から顔を背けながら口を開いた。


「それはもう良いだろう? 今はとにかく目的のものを早く回収しよう」


「そうだね。……ところでキャッスルタートルの討伐の証はどの部位なんだ?」


「……どこだろうな。そのレベルのモンスターに遭遇するなんて思っても無いから確認してないや。……とりあえず丸ごと持って帰ったら?」


 さすがのレイモンドもキャッスルタートルの討伐の証がどこであるか把握していないようだ。それほどのモンスターを倒したのだと今更ながらにマシューは実感しながら丸ごと収納袋に仕舞い込んだ。相変わらず容量がいっぱいになる気配が無い。いつかこの収納袋が満杯になる時が来るのだろうかとマシューはひとり首を傾げた。


 そんなマシューをよそにもうレイモンドとエルヴィスは台座の近くまで行っているようだ。慌ててマシューも2人の近くまで駆け寄った。レイモンドもエルヴィスもその間じっと目的の本を眺めていた。その本の表紙には中級回復魔法と記されている。探していた目的の本で間違いない。


「……これが目的の本か」

 

「あぁ、これを手に入れるためにここを攻略していたんだ。……この本を手に取れば【転移ゲート】が発動してダンジョンの入り口に戻ることが出来る」


「なるほど。魔法を覚えられる本がダンジョンの到達報酬と【転移ゲート】の発動条件と両方を兼ねているんだね。さ、エルヴィスが手に取りなよ。この中で一番これが欲しいと思っているのはあなただろう?」


 マシューはそう言ってエルヴィスに本を手に取るよう促した。レイモンドも同じことを考えていたようで無言で頷いている。そんな2人を見てエルヴィスは微笑み目的の本を掴んだ。そして3人は光に包まれダンジョンの入り口まで転移したのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ