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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第2章 知恵の果実は近くもあり遠くもある
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第12話 引き返すなら今

 読んでくださりありがとうございます。どうやら先に攻略の始めている人がいるようです。


 それはあり得ない話ではなくむしろ良くある話のように思われる。そもそもダンジョンというのは魔法が覚えられる本が手に入る故に入り口が見つかれば皆が攻略をし始めるようなものなのである。ここ古代樹の空洞は手に入る魔法か中級回復魔法だっただけに攻略されずに残っているだけなのだ。


「……ちなみに先に攻略すると何か良いことがあるのか?」


「もちろんある。そもそもダンジョンは誰かに攻略されればそれ以降2度と新たにその場所には入れなくなるものなんだ。それ故に攻略して手に入るものは最初に攻略した人がそのダンジョンの奥にある全てを手に入れることが出来る」


「それって攻略中だった人はどうなるんだ?」


「追い出されるようなことは無いが、その代わり攻略しても何も手に入らないだけだ」


「……つまり攻略するだけ無駄になるってことか?」


「そういうことだ」


 先に攻略している人がいる。その事実は思った以上に重いようだ。これから意味の無い行動をしようとしているのではないか。そんな考えが2人に過ぎった。


「……一応これを見る限りでは攻略すると言うより偵察が目的のような感じではある」


「……なぜ攻略が目的じゃないと思ったんだ?」


「君たちは知らないと思うがダンジョンの奥は大抵魔法で入り口と繋がっているんだ」


「……【転移ゲート】?」


「お、よく知ってるな。そう、その【転移ゲート】で大抵入り口まで帰ることが出来る。だから攻略が目的なら帰るための目印は本来必要ないはずなんだ」


悪い予感が過ぎっている2人を励ますためかエルヴィスは明るい材料も口にし始めた。だがそれは気休めでしかない。攻略するつもりではあるが万が一に備えて目印を設置したという可能性は充分あるのだ。


 3人は古代樹の空洞の入り口で進むか進まないかの決断を迫られたのである。考えながら少し喉が渇いたレイモンドは収納袋から魔水晶が入った瓶を取り出した。魔力を注いで出て来た水は冷たく喉の渇きを潤すのには充分である。これは水分補給には最適だとレイモンドは満足そうであったのだが、そんなレイモンドをエルヴィスが怪訝な顔でこちらを見ていることに気がついた。


「……なんだ? 何かあったか?」


「いや、それ……何だ?」


「これか? 魔力を注げばいつでも綺麗な水が飲める優れものだよ。良かったら使うか?」


「いや、全く要らない。何でそんなものに魔力を使ってるんだか、魔力がもったいないよ」


 そう言ってエルヴィスは呆れたように手を広げてみせた。それを見てレイモンドは少し苛立ったが口に出す前に踏み止まった。エルヴィスの言うことはそれすなわち、魔力を全く使わずに綺麗な水が飲める方法があるということなのである。


「それじゃああんたはどうやって水分を補給するんだ? まさかしない訳では無いだろ?」


「レイモンド、今それはひとまず置いておこう。そんなのいつだって話せるだろう? 今はまずダンジョンの攻略を進むか否かを決めないと」


 エルヴィスがどのようにして水分補給をしているのか気になったレイモンドだったがマシューに制止されてしまった。確かに今言う話では無かったと納得したレイモンドは先程のエルヴィスへの質問をひとまず置いて新しい質問を投げかけることにしたのである。


「それじゃあそれをさっさと決めよう。俺は進む派だ。先にいる人が断念するかもしれないし、進むのが遅くて追いつく可能性だってある。分からない内から断念するのは趣味じゃないね」


「それは俺も同意見だな。攻略を進める意味が無いのかもしれないが、かと言って諦めるのもどうかと思うんだ」


「僕も同意見かな。先に進む人が攻略出来るとは限らないからね」


「……ん? もしかして全員同じ意見なのか?」


 3人は思わず顔を見合わせた。全員が全員先に行く人がいるため無駄になるなら攻略を諦めた方が良いと考える人がいると思い込んでしまっていたのだ。


「全員進むって考えなら進むべきだね。それじゃあ先に進んでいる人に追いつくためにも急いで進もうか」


 マシューのその言葉に2人は頷き3人はダンジョンの奥へと進み始めた。残された火の着いた木の枝が3人が何事もなく進めるよう足元を明るく照らしていた。


 狭い通路を【着火イグナイト】で火を着けた木の枝の明かりを頼りに3人が進んでいくとやがて少し開けた空間へ出たのである。そしてその部屋には待ち構えるようにしてモンスターがこちらを見ていたのだ。


「お、モンスターだな。……赤い甲羅?」


「あれはレッドタートルだな。かなり硬いモンスターだから物理的なダメージは期待出来ない。魔法で削るのが得策だろう」


 図鑑で知った知識なのだろう。マシューには見たことも聞いたこともないモンスターなのだがよどみない説明をしてみせた。エルヴィスはそれを聞いて感心した表情である。


「すごいね、よく知ってるな。レッドタートルは直接攻撃に対してかなりの防御性能を誇るモンスターだ。単純に攻撃していたら間違いなく討伐は不可能。魔法への防御性能は全然無いから魔法で攻めるべきモンスターだよ」


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