表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第2章 知恵の果実は近くもあり遠くもある
55/234

第7話 頼みがあるんだ

 読んでくださりありがとうございます。彼はなぜ2人にダンジョンの攻略の協力を頼んだのでしょうか。


「ええと、何の話だかさっぱり分からない。……とりあえず確認したいんだが、ダンジョンと言うのは最近出現したって言うあのダンジョンか?」


「あぁ、そのダンジョンで間違いない」


「……そうだとして、なんでまた俺たちに?」


「それを説明する前にちょっとこれを見てくれ」


 そう言うとその男性は手に持っていた本のページをパラパラとめくり始めた。その本の表紙には中級回復魔法についてと書かれていた。


「……中級回復魔法が覚えられる本なのか?」


「いや、これはそうじゃない。この本は中級回復魔法について説明している本だ。……お、このページだな。ちょっと見てくれ」


 表紙からこの本は中級回復魔法が覚えられる本だと思ったのだがどうやら違うようだ。見せられたページには【解呪ディスペル】と大きく書かれた見出しと共に魔法の説明がつらつらと書かれていたのだ。


「……【解呪ディスペル】と言う魔法があるんだな。効果はモンスターによって様々な症状が見られる呪い状態を回復するための魔法だと」


「その通りだ。そしてこの本に書かれている以上は中級回復魔法が覚えられる本で習得出来る魔法だと言うことだ」


「……なるほど、つまりあなたは最近出現したと噂のダンジョンの奥で中級回復魔法が覚えられる本を手に入れて、【解呪ディスペル】を習得したいと言うわけだ」


「あぁ、その通りだ。君たちに見せた本には【解呪ディスペル】の他に【範囲回復エリアヒール】、【大回復ハイヒール】、【自己治癒セルフキュア】など多数の中級回復魔法が書かれている。そしてこの本は全てを記している訳では無いとも書かれている」


「……つまり本を手に入れても【解呪ディスペル】が習得出来るとは限らないのか」


「そこで僕は君たちに頼みたいのだ。君たちのような幸運な人たちなら、例え僕が習得出来なかったとしても2人のうちどちらかは習得出来ると思うんだ」


 目の前の男性は真剣な表情である。彼はどうしても【解呪ディスペル】にこだわる理由があるのだろう。真正面から真剣に頼まれると2人としては断りづらい。それにヴィクターからダンジョンの話を聞いてから行ってみたくて上の空になっていたことも事実である。


 だが、快諾するにはまだ理由が足りない。マシューはそう考えたのだ。


「1つ条件がある」


「条件? ……それは何だ」


「そこまでしてこの【解呪ディスペル】にこだわる理由を教えて欲しい」


「なるほど、それは確かに気になるな。【解呪ディスペル】だけにこれほどこだわるってことは、要は呪い状態になってしまった人がいるってことだよな。そしてあんたはその人に【解呪ディスペル】をかけてあげたいって訳だ」


「……その理由を言えば受けてくれるのか?」


「もちろん。……レイモンドも良いよな?」


「俺はそうだな……、それに加えてもっと魔法について教えてくれたら喜んで受けるかな」


 レイモンドは笑って条件を付け足した。どうやらレイモンドは先程からずっと魔法について教えて欲しかったようである。それを聞いて男性は2人に向かって頭を下げた。


「ありがとう……。これであいつを助けてやることが出来る」


「あいつ……?」


「理由が聞きたいんだったな。案内しよう」


「あ、ちょっと待ってくれ。その前に持って来たこの本たちを読んでからでも良いか?」


「そこにある本なら僕が以前読んだことのあるものばかり。内容は全部頭に入れているから後で魔法について教える時についでに教えてあげるよ。……あ、そうだ。自己紹介を忘れていたね。僕の名前はエルヴィス、魔法使いさ」


「俺はマシューで、こっちはレイモンドだよ」


「マシューにレイモンドだね、よろしく。それじゃあ早速案内しよう」


 そう言ってエルヴィスは2人が持って来たカゴに本を全て入れてしまうとそれを両手で軽々と持って近くにいた職員に手渡したのである。2人で運ぶなら特に問題無いが1人で運ぶとなるとやや大変な重量のはずだがエルヴィスは軽々と運んでいた。


 そうは見えないが案外力持ちなのだろうか。そんなことを考えているといつの間にかエルヴィスが既に遠くまで歩いており、待っているかのようにこちらを振り返っていたのだ。慌てて2人も長テーブルに忘れ物が無いか確認してからエルヴィスの後を追いかけたのであった。


「……ここか?」


「あぁ、ここだ」


 書庫を出たエルヴィスはとある民家の前で足を止めた。エルヴィスの自宅だろうかと思っているとエルヴィスは呼び鈴を鳴らし始めた。どうやら自宅では無いようだ。


 少し待っていると民家の扉が開いた。中から40代くらいであろうか、少し疲れているような表情の女性が現れたのである。その女性はエルヴィスの知り合いのようで少し安心したような表情をした後で後ろにいる2人を見てやや表情を曇らせた。


「ええと、……あの子たちは誰?」


「エレナを助けてくれようと協力してくれる人ですよ。今日はこの2人にも見舞いに来てもらおうと思って」


「そう、それなら全然構わないわ。さ、中へ入って」


 エルヴィスの言葉でようやく警戒心が解けたようだ。警戒されていた2人も家に迎え入れられたのである。先程の会話からするとエルヴィスが助けたい人物の名前はエレナと言うようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ