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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第2章 知恵の果実は近くもあり遠くもある
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第5話 本の中身は白紙?

 読んでくださりありがとうございます。書庫です。


 それから2人はレイモンドの父親のリチャードを探し始めた。顔を知っている人物を探すとは言え来たことも無い場所で人を探すのは中々難しいのである。職員らしき人に何度か声をかけることでようやくリチャードは見つかった。少し疲れたのかリチャードを見つけた時に2人は少し息を荒くさせていた。


「……おや、そこにいるのはマシューくん、そして息子じゃないか」


 眼鏡をかけて白衣に身を包んだ男性が2人に気付いてこちらを向いた。この人物こそレイモンドの父親であるリチャードである。正直言ってレイモンドの対極にいるような人物だが不思議と仲は良いのだ。


「……ここ広すぎないか? 親父を探すのにこんなに苦労するなんて思わなかったよ」


「帝都の書庫だからな、当たり前だ。これでも少し足りないくらいだ。……さて、君たちはそんな格好をしていると言うことは冒険者になったんだな?」


「はい。……父の無念を晴らしたいので」


 マシューは別に敵討ちがしたい訳では無いのだがリチャードはマシューの言葉を敵討ちと取ったようで少しばかり目をつぶってからまた口を開いた。


「敵討ち……か。君の気持ちはよく分かる。ただ、あまり良い気分にはならないと言うことは言っておく。それを分かった上で好きにすると良いさ。僕はただ君たちが無事でいることを願うことにしよう。……さて、僕を探していたと言うことは、僕はここを案内すれば良いのかな?」


 2人はその言葉に無言で頷いた。それを見てリチャードはニコリと笑って書庫の案内を始めた。


 書庫の役人だけあってどの本がどの本棚にあるかを完璧に把握しているようだ。わずか10分程度で目的の情報が手に入るであろう本が揃ったのである。机の上に積み上げられた本は全部で10冊以上。これら全てを閲覧するのはちょっとばかり疲れそうである。


「2、3冊程度なら立って読む人もいるが、この量なら閲覧室に移動した方が良いだろう。レイモンド、そこに立てかけてあるカゴを 2個取って来なさい」


 そう言ってリチャードは壁を指差した。その先を見てみると確かにカゴが何個か積み上げられている。レイモンドは素直にそれを2個取って来た。そのカゴを受け取ったリチャードは流れるようにそれぞれ5、6冊程カゴに入れ始めた。こうして1人で運ぶには重く運びにくい本が運びやすく2つに分散されたのである。


「……ん? これ何で2つに分けたんだ?」


「もちろんカゴを君たちが運ぶからだ」


 当然のようにそう言ってリチャードはカゴの1番上にある本を1冊手に持った。どうやらその本はリチャードが運んでくれるようだ。……もっともそれは積み上げた本の中で1番薄くて軽い本なのだが。


「着いたぞ。ここが閲覧室だ」


 そう言ってリチャードは引き扉を開けた。そこには長テーブルと椅子がある他に何も無い空間であり、本棚すら置かれていなかった。閲覧するための場所に特化した空間であることが一目で分かった。


「ここなら長テーブルや椅子もあるから落ち着いて調べものが出来るだろう」


「ありがとう親父。助かったよ」


「何かあればまた僕のところへ来なさい」


 そう言うとリチャードは去って行った。頼りがいのある背中であり、今後書庫を利用する際にはどんどん頼ることにしようと2人とも思ったのである。


「さて、まずはどれから調べようか」


「そうだな……、最初は魔法が覚えられる本を読むのはどうだい? せっかく持って来たんだし気になるだろう?」


 そう言いながらマシューは積み上げた本のうち、上の方に置いてある本を数冊手に取った。厚みに差はあれどそれらは全て魔法を覚えられる本なのである。


「確かに気になるな。順番に1個ずつ読んでいこうぜ。俺はまずこれから読むよ」


「それなら俺はこれから読もうかな」


 レイモンドが手に取ったのは初級補助魔法。そしてマシューが手に取ったのは初級回復魔法である。ヴィクターによれば出現したダンジョンには回復魔法の本があるという話だったのでどう言う魔法が覚えられるのか少し興味が湧いたのだ。


 マシューは少しの期待を胸にまず1ページ目を開いた。そこには今までの本と同様の文言が書かれており、今回ならどんな魔法が覚えられるのかマシューの期待はかなり高まった。


 だが開いたページは白紙であり、そこには何の魔法も記されていなかったのである。


 何かの不具合なのだろうかとマシューはもう一冊持って来ていた初級回復魔法の本を手に取り今度はすぐに適当なページを開けた。そこにはただ一言【回復ヒール】と記されていた。その文字がマシューの頭に吸い込まれマシューは【回復ヒール】を習得したのである。


 魔法が習得出来たのでマシューはそれを素直に喜んだがその後すぐに首を傾げた。一冊目に習得出来なかった理由が分からなかったからである。ふと前に顔を向けるとレイモンドもまた同じように首を傾げていたのだ。


「……?」


「どうした?」


「いや、何にも書いてないんだよ。この本って魔法が絶対習得出来るものじゃ無いのか?」


「それなら俺もそうだったよ。こっちの本を読むと【回復ヒール】と書いてあって【回復ヒール】が習得出来たんだが、こっちの本には何も書いてなかった。なぜかは俺もよく分からない」


 そう言いながらマシューはレイモンドの手元を見ると初級補助魔法と初級水属性魔法と書かれた本が見えた。レイモンドが読んだ本はこの二冊なのだろう。マシューは自分の読んだうちの一冊をレイモンドに差し出しながら口を開いた。


「レイモンドもこれを読んでみなよ。俺はこの本を読んで魔法が習得出来たんだからレイモンドも出来るはずだぜ?」


「分かった。読んでみよう」


 レイモンドはマシューから差し出された初級回復魔法の本を開き読み始めた。だが、すぐにその本を閉じた。首は傾げていないがレイモンドの眉間にはかなりしわが寄っていた。いったいどうしたのだろうか。


「……何も書いてなかった。これはどう言うことだ?」



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