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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第2章 知恵の果実は近くもあり遠くもある
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第2話 2人とも上の空

 読んでくださりありがとうございます。ダンジョンですか、行ってみたいですねぇ。


「……? 覚えられる魔法の種類は既に分かっているのか?」


「あぁ。ダンジョンで出てくるモンスターが使ってくる魔法で大体割り出せるんだ。あくまでも噂でしか無いが恐らくそうだろうって話だぜ。……まあとにかく最奥部まで行かないんなら撤退するのはそう難しくは無いはずだ。一度行ってみたらどうだ?」


 そう言うとヴィクターは外へ出て行った。残された2人はひとまず予定通り食堂へ向かうと朝食を食べた。いつも通りの美味しい食事ではあったのだが、2人とも先程の話が気になって上の空である。


 朝食を食べ終わった2人はその後予定通り武器屋へ向かって歩いていた。相変わらず2人とも上の空であり、緋熊亭を出てから一定の距離を保って後ろを歩く人の姿に全く気付いていなかったのである。


――

武器屋

――


 店に入った2人は手分けしてレイモンドの武器を選び始めた。武器が手広く揃っているのは選びやすくもあり同時に選びにくくもあるのだ。どの武器が良いのだろうかとマシューは迷いながら武器を見ていると不意に背後に気配を感じた。振り返ると見覚えのある老人が微笑んでいた。相変わらずこの人物は気配を消すのが得意なようである。


「いらっしゃい、マシュー。何を探しておるのじゃ?」


「レイモンドの武器に何か良いのが無いかなと思って……」


「ふむ、なるほど。ならあやつが選んだものを買うと良い。……前にも言ったが、わしは武器が人を選ぶと信じておる。あやつが良い人ならば自然と良い武器があやつの元へやって来るさ」


 そう言うとライアンはにこりと笑った。それはレイモンドが良い人であると分かっている人間の笑みでありそれを見てマシューは嬉しく思うのだ。だが次の瞬間ライアンは真顔になった。何事かと驚くマシューに向かってライアンは少し声を落として話し始めたのだ。


「……じゃが、それはあくまでも武器に限る話。人間はそれの対象外じゃ」


「……つまり?」


「レイモンドの方を見てみな」


 そう言われてマシューはレイモンドの姿を探した。どうやらレイモンドは誰かと話をしているようである。その人物は最近新調したかのような真新しい鎧に身を包んでおり駆け出しの冒険者のようである。


「あの男が手に持っている武器は2つともうちのものだ。目立つように置かれた鈍に飛びつくような人間が良い人物だとわしは思わんの。……まあ、幸いもう片方の武器はそれなりに良いものだ。そっちを選んでくれるとまだ良いんだがね」


 ライアンは吐き捨てるようにそう言った。よく見てみると男性は2つ武器を持っていた。片手で扱えるようなサイズの剣で右手にあるのは装飾品が全体に散りばめられた派手な出来であり、左手にあるのは簡素な出来だが鋭い光を放っていた。どちらがライアンの言うそれなりに良い武器なのかは非常に分かりやすい。


 遠くからではあるがじっくり見られていたことに気が付いたのだろう。その男性は急にこちらに顔を向けた。少し遅れてレイモンドもマシューとライアンが見ていることに気が付いたようだ。嬉しそうな表情を浮かべこちらへ歩いて来た。


「良い武器は見つかったか?」


「いや、まだ俺の武器は決まって無い。中々しっくり来る武器が見つからないんだよな。それよりマシュー! この人にどっちの武器が良いと思う? ちょっとお前の意見を聞かせてくれよ」


「……この人に?」


 レイモンドは真剣な表情である。どうやらこの男性はレイモンドにどちらの武器が良いか聞いていたようだ。マシューとしては別に武器の相談に乗ることに不都合は何も無い。だが、即答する訳にはいかないのだ。遠くからどちらの武器が良いか考えていたことをバレてしまうのは結構恥ずかしいのである。


「……そうだな。俺はこっちの剣の方が良いと思う」


 少し考えるポーズを取った後にマシューは男性が左手で持っている方を指差した。男性の隣でレイモンドは満足そうに頷いていた。


「やっぱりな。俺もそう思ってたよ。ええと……、パウロだっけ? どっちかを買うんだったらこっちを買うべきだよ。良い武器だと思うぜ」


「ううむ、……やはりそうなのか。それじゃあこいつを買うことにするよ」


 どうやらこの男性は名前をパウロと言うようだ。武器屋の客である2人に推されるかたちで無事それなりの武器を買うことに決めたのである。こう言う時にあまり助言はしない方が良いのではとマシューは思ったがパウロは満足そうにしているので一旦気にしないでおこうと決めた。


「ええと、店主はどこに」


「店主ならわしじゃ。そいつを買うのか?」


 パウロは2人の近くにいたライアンをただの客のひとりだと思っていたようである。遠目からでも増えたことが分かりそうな驚きによる瞬きがしばらく続いた。


「……いやぁ、びっくりした。すみません、これいくらで?」


「そいつは金貨3枚だ。買うか?」


 金貨3枚。やや高めと思われる値段設定にマシューは少し目を見開いてパウロの様子を伺った。パウロもまた高いと思ったのだろう。マシューには一瞬パウロが右の眉を上げたように見えた。


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