第5話 さあ、冒険を始めようか!
読んでくださりありがとうございます。ところどころ読めない古びた手紙を見つけました。誰が何のために書いたものなのでしょうか。
マシューは手に取ったその手紙をゆっくりと黙読していた。中に何が書いてあるのか相当気になったらしいレイモンドは背中越しに書いてある内容を見ていた。レイモンドは読むのがかなり早く早々に読み終えると考えをまとめ始めた。
やがて考えがまとまったらしく、手紙を手にしたまま動かないでいるマシューの正面に回り込むとレイモンドは口を開いた。
「……なるほど、この手紙を書いた人は《七つの秘宝》とやらを集めようとしていたんだな。そして、一緒に置いてある剣は恐らくだがその《七つの秘宝》の1つ。地図は残る《七つの秘宝》の場所を示している。……この読みどう思う?」
「それに関しては良く分からない。そもそも《七つの秘宝》というものがどういうものか知らないし、その剣がそうであるか判断する方法は無い。けど、俺は1つ確信していることがある。この手紙は俺の父さんが書いたものだ」
「へぇ。それはまた、……どうしてだ? 名前らしきものが書いてあるけど、ところどころ擦れて見えないからこれから判別するのは難しいと思うぜ?」
「レイモンドも知ってると思うけど俺の父さんの名前はケヴィンだよ。途中が擦れているから分かりにくいけど多分ケヴィンって書かれていると思う。……そして何より俺はこの字を知ってるんだ。この字は間違いなく俺の父さんが書いたものだよ」
マシューは自信たっぷりにそう答えた。レイモンドはそれを見て微笑んでいた。目の前のこの男がこんなにも自信を持っているのを見たのは実に久しぶりのことである。あの日以来もう見れないと思っていた表情に出会えたレイモンドはそのことをとても嬉しく思っていた。
「……なるほど、それじゃあ間違いなくお前の父さんが書いたものだろうな」
「うん。……俺は《七つの秘宝》を集めるよ。父さんは何かをしようとしていたんだ。それにレイモンド、……君はあの日見た騎士たちが言っていたことを覚えているか?」
「いや、覚えちゃいねえ。あの時は隠れることに必死でそんなところに頭は回らなかったしな」
「あの日……。騎士たちが俺の家を出たちょうどその時だ。彼らは何か話をしていた。俺は確かにあの時「地図」と聞いた。……奴らが探していたのは、これなんじゃないか?」
マシューはゆっくりと無造作に置かれている地図を指差した。あの日にいた騎士たちに直接聞いた訳では無い。だが全く無関係とは言えないだろう。なぜならこの地図は騎士たちがあの時訪れたマシューの家の地下にあるのだから。
「……なるほど、その確率は高そうだな」
「もし奴らが探していたのがここにあるこの地図なら! ……《七つの秘宝》を奴らもまた探していることになるだろう。多分、……いや絶対そうだ。だからこそ俺は《七つの秘宝》を集める。集めるよ……! 俺は父さんが何をしようとしていたのか。なぜ殺されなければならなかったのか。……知りたいんだ」
マシューはまっすぐレイモンドの瞳を見ていた。その眼差しには確かな決意が感じられた。
「おう! お前はそうするべきだと俺も思う。……知りたいんだろ? なら全部解き明かすしか無いな」
「レイモンド。……頼みがあるんだ」
先程まで決意を抱いていたとは思えないほどマシューの声は弱々しいものになっていた。不安なのだろう。これから口に出す頼みが断られるんじゃないかと不安なのだろう。それをレイモンドはよく知っていた。マシューを一番近くで見て来た親友である彼は口に出さずともマシューが何を頼もうとしているのか知っていた。
「……《七つの秘宝》を、俺と……一緒に」
「探してくれないか。……か?」
「! ……どうして分かったんだ?」
「どうしても何も、お前の顔がそう言っていたから、……かな。何年一緒にいると思ってる。お前の考えてることなんて口に出さなくても分かるさ。……もちろん一緒に行くよ。当たり前だろ?」
そう言ってレイモンドは裏表ない笑顔で笑った。マシューはそうやって笑う彼を見るのが久しぶりであった。あの日以来見れなくなっていたその笑顔を見て思わずマシューは涙がこぼれそうになっていた。
「何だよ、なんか泣きそうになってねぇか? 泣くほど嬉しいって訳じゃ無いだろ?」
「あぁ、ごめんよ。つい涙が出そうになったよ。……せっかく探しに行く決意をしたんだ。涙なんて要らないな。……さあ、冒険を始めようか!」
「おう!」
2人は2人を鼓舞するように拳を合わせた。2人とも決意と自信に満ちた表情であった。2人のその表情はここ3年では決して見れなかったものである。
あの日止まってしまったマシューとレイモンドの時間はこうしてゆっくりとまた動き始めた。
これにて序章は終わりとなります。次回よりマシューたちの冒険が始まります。これから先の物語を見守っていただけると嬉しいです。