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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
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第40話 不安は隠せない

 読んでくださりありがとうございます。ブラックイーグルとの戦いが始まります。


「……ブラックイーグルだな」


「あぁ。……強引に突破するのは無理だな。討伐するぞ」


 2人は応戦するためにそれぞれ武器を構えた。それを見たブラックイーグルは翼を大きく広げて風を起こすようにこちらへ向けて羽ばたいた。目に見えるほどの鋭い風の流れがマシューに向かって巻き起こる。これを右に回転するようにしてマシューは回避を試みた。


 擦りさえしないよう距離に余裕を持って回避したはずのマシューだったが左手に刺すような痛みを感じたのである。見れば左手首に黒い羽根のようなものが刺さっている。なるほどあのブラックイーグルは風を起こすと同時に自身の羽根を飛ばしているようである。


「マシュー! 大丈夫か⁈」


「あぁ、なんとか大丈夫だよ。あいつは風と一緒に羽根も飛ばして来るようだ。だからあの攻撃は避けるではなく防ぐことの方が効果的だろう」


「だったら俺の後ろに回れ。お前のその小さな盾じゃ体全部は守り切れないだろ。近づくのは難しいから魔法で攻めるぞ」


 確かに盾や鎧の防御力で言えばレイモンドの方が優れている。回避が難しい攻撃をして来る以上防御はレイモンドに任せる方が無難だろう。無言で頷いてマシューはレイモンドの後ろに回った。それを見ていたブラックイーグルは再び同じ攻撃をしようと翼を大きく広げてこちらへ羽ばたいた。


 目に見えるほどの鋭い風の流れと少し遅れて鋭く光る黒い羽根がレイモンド目掛けて放たれた。レイモンドは冷静に銀の大盾を正面に構え風の流れと黒い羽根の両方をシャットアウトしてみせた。ブラックイーグルは困惑した様子でありそれを見たレイモンドはしたり顔である。


「さて、今度はこっちが攻める番だよなぁ! マシュー頼むぜ!」


「あぁ! 【火球ファイアボール】‼︎」


 レイモンドの後ろから飛び出したマシューはブラックイーグル目掛けて真っ直ぐに【火球ファイアボール】を発動させた。反応が遅れたらしくブラックイーグルは回避が出来ない。直撃した【火球ファイアボール】によって体力が尽きたのだろうブラックイーグルは力無く地面に落下し動かなくなった。討伐完了である。


「……ん? どうやら討伐出来たようだな」


「そうみたいだな。……接近するのが難しいタイプのモンスターだからかな。体力はそこまで多くないのかもしれない」


「苦戦するかもって思ったけど案外何とかなるものだね。……ええと、討伐の証はどの部位なんだ?」


「……ブラックイーグルは確か尾羽だったかな」


 それを聞いたマシューは討伐したブラックイーグルに近づきナイフで尾羽を剥ぎ取ると尾羽と体の両方を収納袋に入れた。それを見たレイモンドは驚いたように目を見開いてすぐに納得した表情を浮かべた。


「……さ、進もうか」


「あぁ。橋からかなり歩いたからもうそろそろもう1つの橋に辿り着くんじゃないかな」


「だと良いけどね」


 確証が持てないまま進んでいるからだろうか、2人には少しばかり疲れが見られるようだ。だが元の場所に戻るには前に進むしか無いのだ。今進んでいる道が元の場所に帰ることに繋がっていることを信じて2人は一歩ずつ前に歩みを進めた。


 やがて2人の目の前に大きな橋が現れた。これが川の向こう側に渡るもう1つの橋に違いない。前のものよりは大きく頑丈なら代物のようだ。少なくとも渡るのに何も心配することは無さそうである。


「……さて、橋だな」


「あぁ、橋だ。これを渡って進んでいけばいずれ目指す場所には辿り着けるだろう。……ただ」


「この道もまたイナズマの巣に通じている可能性がある……だよね」


「否定は出来ない。今の俺たちではあのモンスターと戦ってさらに奥に進むことは不可能だ。……通じてないことを祈るだけだな」


 マシューはレイモンドのその言葉を聞きながら目の前の橋のさらに奥の景色を見ていた。これと言って何かあるようには見えない。だが何も無いようにも見えない。ただひたすらに不気味である。唾が上手く飲み込めない。どうやらひどく緊張しているようだ。


「……行こうか」


「待った! ……その前にやっておくべきことがある」


「……何を?」


 マシューがそう言って振り返るとレイモンドは収納袋に手を突っ込み何かを取り出すとそれを投げてよこした。両手で受け取りよく見てみるとそれは回復薬ポーションの瓶のようだ。


回復薬ポーション?」


「あぁ、そうだ。これも渡しておく」


 そう言ってレイモンドは小さな瓶も投げてよこした。それが何かは何となく予想がつく。落とさないよう丁寧に両手で受け取り見てみるとやはりミニ魔力回復薬マナポーションである。意図がイマイチ掴めないマシューは首を傾げた。


「……これがどうしたんだ?」


「せっかく偶数あるんだ。収納袋にも余裕はあるんだから2人で分けて持っておく方が良いだろう」


「……なるほど。いざ必要になった時に受け渡しをしている暇は無いだろうと言うことか?」


「あぁ。……使わないでいる方が絶対に良いんだけどな」


 レイモンドはそう言いながら苦笑いを浮かべている。確かにこうした回復手段を使わずに済むならそれが一番良いだろう。だが、ブラックイーグルと戦っている時でさえ多少のダメージを食らってしまっているため無傷で済むとは到底考えづらい。


 準備は出来るだけ万全な方が良い。マシューは微笑みながら左の腰に下げた収納袋に丁寧にしまった。準備を整えたことで肩の力がやや抜けたようだ。先程よりも視野が広がったように思える。マシューはもう一度橋の先を見つめた。やはり橋の先には何も見えない。


「……でも行くしか無いよな」


「あぁ、行くしか無い。……渡った先に何があったとしても、何とか出来るさ」


「だと良いけどね。……そう言えば、レイモンドはあの場所には何があると思う?」


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