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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
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第39話 霊鳥イナズマ

 読んでくださりありがとうございます。2人はいったい何を見つけたんでしょうか。


 2人の視線の先およそ80メートルほどの場所に1体のモンスターが巣のようなものを作っていた。見た目としてはかなり大型の鳥と言えば良いだろうか。体の色は全体的に黄色ではあるが淡く青に輝く雷のようなオーラを纏っており、静かにただこちらを見つめていた。


 そのモンスターはそれ以外は何もしていない。そのはずなのだが2人は、ただそこにいるだけのそのモンスターに威圧感を感じてしまったのだ。


「……逃げられるか?」


「……分からない。だが一つ確かなのは戦いを挑めば間違いなく返り討ちに遭う。……背を向けるのは危険だろう。……ゆっくり、ゆっくり後ろに下がるぞ」


 感じた威圧感から考えるに速度は圧倒的に向こうが上である。2人は決して刺激しないようゆっくり着実に後ろに下がり距離を離していった。もうそろそろ思い切り逃げても逃げ切れそうな距離だろう。そんなことを考えていたからか2人の足がほんの少しだけ緩んだ。


 その時ずっと動かずにこちらを見ていたモンスターが口を開いた。マシューはおぞましいほどの寒気を感じ咄嗟に地面に体を伏せた。


 つんざくような轟音と共にマシューの頭の上を青白い球体が過ぎ去った。その球体はさらに先の木の幹に当たると電気を放ちながら木全体を焼き切ったのである。もしこれがマシューに直撃していれば無事では済まないことは明白である。


「マシュー! 動けるか⁈」


「大丈夫! 早く逃げるぞ‼︎」


 マシューはすぐさま起き上がると後ろを振り返らずに思い切り駆け出した。強い風も今は追い風となり2人が逃げるのを後押ししている。あのモンスターは既に攻撃の意志を示していない。だがそのことに気付くこともなく2人はただ必死に逃げた。渡るのに少しためらった橋も気にすることなく走って渡った。


 橋を渡りきってようやく2人は安心したのか地面にへたり込んだ。2人とも息が切れており目の前の人物と自分が今かなり荒い呼吸であることを2人とも自覚していた。


「……あれはいったい?」


「……分からん。俺もあんなモンスターを見るのは初めてだ。……それらしきモンスターで良いなら心当たりが無いことも無いが……」


 そう言ってレイモンドは図鑑を取り出しページをめくり始めた。かなり最後の方のページで手を止めマシューにもよく見えるように図鑑を広げた。


 そこには雷を纏って大きな翼を広げる鳥型のモンスターのイラストが描かれていた。そのモンスターのイラストは今まで見たイラストと比べるとやや解像度が低い。そのイラストの右下には小さく霊鳥イナズマの想像図と記されていた。


「霊鳥……イナズマ?」


「あぁ。霊鳥ってのはこの世に三種のみ存在すると言う伝説の霊獣種の1つだな。図鑑によればこのモンスターは雷をその身に宿し数カ所を点々としながら自身の領域となる場所を守っているらしい。さっきのモンスターの特徴の大部分と一致する」


 聞けば聞くほどレイモンドの言う通りのように思えて来た。想像図でしか無いようだが描かれているイラストも先程のモンスターに心なしか似ているとマシューは思い始めた。


「……だが、伝説の霊獣なんだろう? そう滅多に遭えるようなモンスターじゃ無いんじゃ? ……いや、そうでもないか。今いるこの場所がまず普通じゃないしな」


 そう言ってマシューはため息をついた。今2人がいる場所は嵐馬荒原から転移した嵐馬荒原に似た場所なのである。そもそも転移したことがイレギュラーでありそこに普通の感覚を持ち込んでも正確な推察は出来ないだろう。


「あぁ、ここはいったいどこなんだろうな。あの黒い雲が渦巻く場所に行って元の場所に帰って来れると良いんだが……。あの橋はもう使えない。どうする?」


「決まっているさ。もう1つの橋を渡ろう。そっちの橋もイナズマのところに繋がっているかもしれないが、試さない訳にはいかない」


 マシューは語気を強めた。それに応えるようにレイモンドは力強く頷き立ち上がった。その時一段と強く風が吹いた。横を向いたマシューの視線の先には目指す黒い雲が渦巻く場所が見える。


 あの場所に行けば元の場所に戻ることが出来るだろうか。確証の無いまま進むのは不安が付きまとう。だが今のところそれしかやるべきことが見出せないのだ。不安だなんて言ってられない。やるしか無い。改めてマシューは自分を奮い立たせたのである。


 川沿いをゆっくり歩いて進んでいた2人は少し先に鳥の巣のようなものを見つけた。鳥の巣と言っても先程のイナズマの巣よりはかなり小さなものである。巣のサイズから考えるに宿主の大きさは30センチメートルくらいだろうか。


「鳥の巣…だな」


「あぁ。どうやら宿主は今いないようだ。無視してすぐに進もう」


 今いないとは言えいつかは帰って来るだろう。帰って来る前に通り過ぎてしまおうと2人は歩く速度を上げた。鳥の巣のちょうど真横に差し掛かったその時マシューはあることに気が付いた。


 その鳥の巣にはヒナがいたのである。そのヒナは空中に目を向けながら口を目一杯開けていた。その理由をマシューは瞬時に理解し空中に目を向けた。視線の先にはヒナたちの親であり巣の宿主であろう鳥ががこちらを見下ろすようにして睨みつけていた。


 狩りを終え巣のヒナたちに餌を運んで来たのだろう。その鳥は空中から2人の進路に立ちはだかるようにしてゆっくりと降りてきた。全体的に黒い羽根に猛禽類を思わせる鋭いくちばし。その特徴は嵐馬荒原に行く前に図鑑で確認したブラックイーグルの特徴とほぼ一致していた。


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