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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
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第36話 嵐馬平原

 読んでくださりありがとうございます。どうやら2人は嵐馬平原にいるようです。嵐馬荒原と何が違うのでしょうか。


――

嵐馬平原

――


「おいっ! 起きろ!」


 そんな声と共に体が大きく揺れているのを感じる。いやこれは揺れているのでは無い。揺らされているのだ。どうやらいつの間にか気を失っていたらしい。そのことに気がついたマシューはゆっくりと目を開いた。


「……やっと起きたか」


「あぁ、悪い。……すごく風が強いな。ここはどこだ?」


 マシューは周囲を注意深く見渡した。今いる場所は嵐馬荒原のはずである。だが前から強く吹きつける風を全身で受けながら細目で見たマシューの目の前にはだだっ広い平原が広がっていたのである。


「ここがどこかは俺にも分からない。……マシュー、ちょっと後ろを見てくれ」


「……こっ、これは⁉︎」


 マシューは後ろを振り返って目を疑った。目の前には後ろ側に顔を向けているユニコーン像があったのである。しばらく無言で見ていたマシューははっと我に帰ると急いで前に回りユニコーン像の左前脚部分を確認したのだ。蹄がきちんと取り付けられている。嵐馬荒原にあったもので間違い無いだろう。


 が、そうだとすれば周囲の景色がおかしくなるのだ。ユニコーン像は嵐馬荒原にあったはずでありこんな平原には無かったのだ。目の前のユニコーン像と平原としか思えない周囲の景色、そして今まで気を失っていたことの全てを含めて考えた時、出されるべき結論はひとつしか無かった。


「……どこか別の場所に転移したか?」


「マシューもそう思うか。俺もそう思う。……本来なら帝都に戻るべき道があるはずだが、そこには森が見える」


 マシューはゆっくりと後ろに振り返った。嵐馬荒原と帝都を結ぶ林道があるはずなのだが目の前にはどこまででも続きそうな森があるのみである。こんな森をマシューは見たことが無い。もしかするとこの木々の間を進んでいけば帝都に戻れるのかもしれない。


 だがこの森が帝都に繋がっている保証も再びこの場所に戻ることが出来る保証も無いのだ。故に目の前の森の奥に進んでいくのはリスクが余りにも高すぎる。少なくとも今の時点での最善策では無いだろう。


「……転移したのが仮に本当だとすると、今いる場所がどこなのかはそれほど大した問題じゃ無いな。解決するべき問題はどうやったら元の場所に戻ることが出来るか……だよ」


「……なるほど確かにそれはそうだな。となると進むべき方向は2つになるな。今いる位置から左側には森が、右側には平原がそれぞれ広がっているようだ。マシュー、俺らはどっちを進むべきだろうか」


「それなら確実に平原の方に進むべきだな。もし間違っていた場合森だと引き返すことが難しくなるだろ。引き返すことを考えるなら視界が確保出来る平原の方に進むべきだよ」


「……それもそうだな。それじゃあ平原を進んで行こうか」


 こうしてマシューとレイモンドの2人は慎重に平原を進み始めた。前からかなり強い風が吹きつけて来る。2人にとっては逆風であり慎重に進んでいることもあって中々思ったほど快調に前に進むことが出来ないでいた。それでも2人は一歩ずつ着実に前に進んでいった。


 しばらく歩いた2人はなだらかな傾斜を登り終えそこから見える景色に思わず息を呑んだ。視線の先には平原を横切るようにして大きな川があったのである。そしてその川を越えた先には黒い雲が渦巻いている場所が見えたのだ。


 前方から強く吹きつける風は恐らくあそこから吹いているのだろう。そして何となく2人は自分たちが目指すべき場所があの場所なのだろうという思いが芽生えたのだ。


「……あの場所に行けば何かが分かりそうだな」


「あぁ、俺もそう思うよ。……もしこの場所が、嵐馬荒原と変わらないのなら。あの場所には《七つの秘宝》があるのかもしれない」


 マシューのその言葉でレイモンドは当初の目的を思い出していた。古びた地図に記されていた7つのバツ印のうちひとつは平原のような場所に描かれていたのだ。お金を稼ぐためにとモンスターの討伐のことばかりを考えていたためレイモンドはすっかり忘れていたのである。


「……それならなおさらあの場所に行ってみないとな。あの場所に行くためにはひとまずあの大きな川を越えないと駄目なんだが、ここから見る限りでは2つ橋が掛かっているみたいだ」


「……そうだな。右と左どちらの橋を目指そうか、……悩ましいな」


「見た感じではどっちでも良さそうな気がするな。ひとまず目的地に近そうな方にしたら良いんじゃないか?」


「なら右側の橋だね。そっちの方が遠くに見えるからきっと目的地には近いはずだよ」


 2人はまず右側の橋を目指すようである。やや起伏のある道を慎重に進んでいた2人はバイコーンを見つけすぐさま木の陰に隠れて様子を伺った。バイコーンはそこらじゅうに生えている草を呑気そうに食べており、こちらに気付く気配が無い。こうなれば狩りには絶好のチャンスである。


「(……気付かれて無さそうだな)」


「(あぁ。……先制攻撃として槍を投げるかい? それとも魔法を仕掛けるかい?)」


「(……どれだけの回数魔法が撃てるか分からないからな。なるべく温存しておきたい。ここはこいつで仕掛けるとしよう)」


 確実に槍を当てるためにレイモンドは木彫りのアトラトルを収納袋から取り出しゆっくりとバイコーンとの距離をつめた。少し近づき過ぎたようでバイコーンはレイモンドに気付き大きく啼いた。レイモンドはそれに構わず思い切り槍を投げつけた。


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