表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
36/234

第31話 【着火】

 読んでくださりありがとうございます。さて今日の昼食はなんでしょうね。


――

緋熊亭

――


 2人は勢いよく扉を開けたがその先のカウンターに誰も居なかったのである。ポーラはどこに行ったのかと周囲を見渡していると食堂の方からポーラが現れたのである。なるほど、先に到着したヴィクターの食事を出していたようである。ポーラは2人に気付くとにっこりと微笑んで近づいて来た。


「おや、お二人ともおかえりなさい。お食事はどうされますか?」


「お願いします」


「かしこまりました。それではすぐにお持ちしますので、あちらの食堂でお待ちくださいませ」


 そう言うとポーラは厨房へ引っ込んでいった。2人は言われた通り食堂へ向かうと予想通りヴィクターが先に到着して昼食を頬張っていた。今日の昼食のメニューはどうやら海鮮丼のようである。


 そしてヴィクターの他にもう1人食堂の奥で座っている人物がいた。その人物は右手を軽く上げて2人を出迎えた。どうやら今日はたばこを我慢しているらしい。


「おう、ちょうど今あんたらの話をしていたんだ」


「俺らの話?」


「あぁ、そうだ。前回あれを教えてやるって言っただろ? ……ええと、火属性の適性があるのはどっちだ?」


「……それなら俺だな」


「よし来た。これを読めば1発で習得出来るぜ」


 そう言ってバーナードはまだ食事が運ばれていないテーブルに一冊の本を置いた。薄っぺらいその本の表紙にはたった一言【着火イグナイト】とだけ書かれていた。マシューはその本を手に取ると表紙を開け1ページめくった。


 開いたページにはたった2文字、【着火イグナイト】と記されていた。マシューがそれを視認した瞬間文字が浮かび上がったかと思うと頭に吸い寄せられるかのように入り込んだ。


 マシューが魔法を習得するのはこれで2度目であり相変わらず不思議な感覚である。何はともあれこれで無事マシューは【着火イグナイト】を習得することが出来たのだ。


「……ん? なんか不思議そうな顔してるな。魔法を覚えたのは初めてじゃないんだろ?」


「習得した魔法はこれで3個目になる。だから初めてでは無いな。……しかしこの本はなぜここまで薄いんだろう? 俺が最初に読んだものはもっと分厚かったんだが」


「あぁ、それはそうだろうな。あんたが最初に読んだのは初級〜魔法って書いてなかったか?」


「そうだな。表紙にはそう書いてあったはずだ」


「そう言う本は開いたページによって習得出来る魔法が変わるものだ。対してこれは書かれた魔法しか習得出来ない一点もの。1つしか書く必要が無いからページ数が要らないのさ」


 なるほど魔法を習得出来る本にも種類があるようだ。数ある候補の中からランダムに選ばれるよりはどの魔法が習得出来るか事前に見れるこちらの種類の方がありがたいのかもしれない。もっとも強力な魔法なら争奪戦になってしまうため、こうした本は初級魔法以外存在しないかもしれないが。


 マシューが【着火イグナイト】の本を興味深く手に取って眺めていると食堂の扉が開きポーラが2人の昼食を持って現れた。大きめのトレーに大きな丼が2つ乗っており小柄なポーラが持って運ぶには少し重そうに見える。その様子を見て運ぶのを手伝おうとマシューが席を立ったその時奥に座っていたはずのバーナードが運ぶのを手伝うために歩いて行くのが見えた。


「やっぱり2つ持つのはちょっと大変だったね。分けるのも面倒だったから思い切って持ってみたけどあんたが食堂にいるなら呼べば良かったよ」


「いや、俺の方こそ。これから昼食が運ばれて来るってのを知ってたんだから早いとこ取りに行けば良かったな。ちょっと話が盛り上がってよ。すまんかった」


 昨日言い争いをしている2人を見ていただけに今目の前で見ている光景はかなり微笑ましいものであった。その思いを共感しようとマシューは後ろを振り返った。レイモンドは同じような表情であったのだが、ヴィクターは左眉が上がった微妙な表情である。どう言う表情なのかと考えているとバーナードによって目の前に丼が置かれた。やはり今日の昼食は海鮮丼であるらしい。


「今日の昼食は海鮮丼になります。調味料はテーブルにあるものを好きに使ってくださって構いません。それではどうぞごゆっくり召し上がってください」


 そう言ってポーラは去っていった。マシューとレイモンドは丼の蓋を開け勢いよく食べ始めた。昨日の夕食もそうだが緋熊亭の料理は相当美味しいようで2人とも夢中になって食べ進めかなりの大きさの丼が僅か2分足らずで無くなったのである。一部始終を見ていたバーナードは微笑んで2人を見ていた。


「こんなに美味そうに食ってくれると作った訳でもねぇのになんだか嬉しくなって来るな。食器は俺が下げておいてやるよ」


「それはありがたいな。……灰皿?」


 レイモンドが礼を言ったその時バーナードは腰に下げた収納袋から灰皿を取り出したのだ。確か食堂でたばこは吸ってはいけなかったはずなのだがバーナードはもちろんヴィクターも気にする素振りは見せない。


「せっかく魔法を覚えたんだ。練習しておかないといけないだろ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ