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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
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第29話 初めての納品は赤面しながら

 読んでくださりありがとうございます。前回の納品はニコラがしたので、実は2人が納品するのは今回が初めてなのです。


――

冒険者ギルド

――


 帝都へ戻った2人はそのままの足で冒険者ギルドを訪れていた。冒険者ギルドは相変わらず独特な緊張感が満ちていた。その雰囲気に気圧されないよう2人は胸を張って受付のカウンターへ向かって歩いた。受付の女性は穏やかに微笑んでいた。そんなことすら恐ろしく思えたがなんとか平常心を保ちながら2人はカウンターへと辿り着いた。


「……納品をお願いしたいのだが」


「はい、納品ですね。それでは収納袋をお願いします」


 言われるがまま受付の女性に収納袋を渡そうとして、マシューはその手を止めた。袋の中にはクラウンソードも入っている。武器を納品することは恐らく無さそうだがこのまま渡せば全て納品扱いになってしまうのでは無いか。マシューはそう思ってしまったのだ。


「……どうかされましたか?」


「この中に武器も入っているのだが……。袋ごと渡しても良いのだろうか」


 少し遠慮がちにマシューはそう言った。収納袋を渡そうとして途中で止まっているマシューを不思議そうに見ていた受付の女性はそれを聞いて納得した顔を浮かべた。


「あぁ、それなら構いません。こちらで討伐の証だけ納品として受け取りまして後はお返しいたしますので」


「それはものすごくありがたい。それではお願いします」


「かしこまりました。それではしばらくお待ちくださいませ」


「……あっ! それから、ええと」


 受付の女性はマシューから収納袋を受け取ると奥へ去って行ったのだが、そのタイミングでマシューはミニマムサボテンの討伐の証が分からず丸ごと入れていたことを思い出したのである。慌てて呼び戻そうとしたが受付の女性は既に去った後。誰もいない空間に突然声をかけてしまった構図となったため恥ずかしさからマシューは俯いたのである。


 2分ほど経ち先程の女性が戻って来た。相変わらず穏やかな微笑みを浮かべていた。


「あの、……討伐の証がどの部位なのか把握してなくて……」


「あぁ、なるほど。それで丸ごと入っていたんですね。ミニマムサボテンは外殻部分を討伐の証として依頼が出てますので納品としてはあれで大丈夫ですよ」


 丸ごと納品してしまったことを説明しようとしていたマシューだったが受付の女性は全く気にしていないようだ。そのことに安心したマシューはほっと胸を撫で下ろしたのである。


「依頼には部位の名前しか書かれてませんから一部の依頼では剥ぎ取るのがかなり難しい場合があるのです。ギルド内には剥ぎ取り専門の職員もおります。慣れないうちは自分の判断で剥ぎ取らずにこうして丸ごと納品される方がこちらとしても助かります」


 なるほど、ギルドには討伐の証を剥ぎ取る専門の職員がいるようだ。冒険者になって日が浅い2人よりも慣れていることは間違い無い。迷った時は丸ごと納品するのも手だとマシューは頭に刻み込んだ。そんなマシューの横でふと何かに気付いたようにレイモンドが口を開いた。


「……ええと、その場合納品するモンスターの大きさの上限に何か決まりはあるのか?」


「はい、上限はございます。具体的に言いますと、……そうですね。バイコーンを超えるくらいの大きさならば納品自体を遠慮する場合がありますね。ですが、巨大なモンスターの討伐の証は剥ぎ取るのが難しい場合が多いのです。その場合ですと討伐の証の部位が含まれるように大きく切り分けていただけるとこちらとしては助かりますね」


 そう言われて2人はバイコーンの大きさを頭に思い浮かべた。バイコーンは2人の身長より少し低いくらいである。高さと幅とで考えれば2人のからだより少し大きいくらいであろう。今想像したサイズを大きく超える場合、大きく切り分けることを考えれば良い。


 そこまで考えた2人はそもそもその大きさのモンスターを自分達は討伐出来るのだろうかとマシューは少し不安になった。そんな不安からかマシューはそのまま黙り込んでしまったのである。


「お待たせいたしました。計算が終わりましたので今回の討伐報酬をお渡しします。今回の報酬は金貨が1枚と銀貨が1枚になります。確認をお願いします」


 受付の女性は後ろを振り返って他の職員から受け取ったお金と収納袋を2人の前に差し出した。目の前には金貨と銀貨が1枚ずつ置かれている。バイコーンの角は銀貨8枚で掲示されていたはずでありそれならミニマムサボテンは銀貨3枚と言う計算になる。頭の中でそう計算したマシューは1枚ずつ手に取りレイモンドに手渡して収納袋を手に取った。


 後は宿屋に帰るだけである。そんな2人にどこからか鋭い視線が注がれていた。実は2人とも先程からいくつかの視線を感じていた。それは納品のために受付に並んだ時から何度か感じていたのである。


 好奇心からなら良いのだがどこか品定めをする視線のような気もするのだ。だから2人ともそれとなく振り返る時に視線の主を探したのだ。だが2人は見つけられなかった。


 ふと2人は真横の人物からの視線を感じた。顔を向けるととその人物は笑って2人に近づいて来たのである。2人ともその人物が誰か知っていた。


「やぁ、あんたらも納品に来たのかい?」


「あんたは確か、緋熊亭にいた……」


「ん? ……あぁ、そういや名乗って無かったか。俺の名前はヴィクターだよ。よろしくな」


 ヴィクターはそう言うと笑って右手を差し出した。一瞬固まってしまったがすぐに理解したマシューはその手を握り返した。ヴィクターは満足そうに微笑んでいる。


「……俺はマシューでこいつはレイモンドだ。こちらこそよろしく頼む。……あんたも納品に来たのか?」


「そう! 俺もあんたらと一緒で納品しに来たのさ。……ところでもう昼は食ったかい?」


 ヴィクターのその言葉を聞いた2人は今すでに昼が過ぎていることに気が付いたのだ。なるほど、確かに今空腹である。


「そういえばまだだな」


「お! そうなのか。俺もそうなんだよ。早くしないと飯の時間が過ぎちまうからよ。一緒に緋熊亭に戻ろうぜ。ほらほら早く歩く歩く!」


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