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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
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第27話 バイコーンを求めて

 読んでくださりありがとうございます。さて、バイコーンとはどんなモンスターなんでしょうか。


「……バイコーン? いったいどんなモンスターなんだ?」


「バイコーンは二本の角を持っていて縄張り意識が強く下手に近づくと襲いかかってくるモンスターだ。もちろん接近戦も強いが風属性の魔法も使って来るらしい」


「聞く限りだと凄く強そうだな。それほど強いモンスターなら戦闘を避けた方が良いかもしれない」


「あぁ、恐らくかなり強いモンスターだろうな。だけど勝てるなら積極的に戦っておくべきモンスターだよ。昨日ギルドで依頼ボードを見ただろ? 俺の記憶が正しければバイコーンの角が依頼対象だったはずだ。報酬は銀貨8枚」


 それを聞いてマシューは思わず唸った。討伐出来るかは分からないが討伐すれば銀貨8枚が手に入るモンスターと言うのはかなり魅力的である。もちろん討伐報酬が高いのならバイコーンはそれ相応に強いだろう。


 1体倒すのにかなり苦労したエイプウォリアーの報酬金をバイコーンは遥かに上回るのだ。それ故に今の2人では呆気なく負けてしまう可能性も大いに有り得る。


 だが、2人は武器を新調し魔法も習得したのである。エイプウォリアーと戦った時より2人は遥かに強くなっているはずである。2人はそれを信じ嵐馬荒原へ足を踏み入れることに決めた。


――

嵐馬荒原

――


 風が穏やかだった林道を進み2人は嵐馬荒原へ足を踏み入れた。2人を拒んでいるかのようにやや強い風が吹いている。だが足を踏み入れた2人はそんなことを全く気にしていなかった。気にならなかったと言う方が正しいのかもしれない。


「……この石像、動かないよな?」


「あぁ、恐らくな」


 2人は嵐馬荒原に入ってすぐ大きなモンスターの石像を見つけたのである。石像となっているのは大きな馬のモンスターなのだが鋭い角が1本だけ額にまっすぐ生えていた。先程バイコーンの絵を見たからだろうか、マシューにはこの石像には何かが足りないような気がした。


「さっき見たバイコーンの絵とかなり似ているけど角が1本しか無いか。角の形も違うからこれは別のモンスターなのかい?」


「……悪いが俺もこのモンスターが何なのか分からない。……だがもしかするとバイコーンの祖先にあたるモンスターかもしれない。絵には描かれていないが一角獣ユニコーンと言う名の伝承のモンスターの特徴とかなり一致しているからな」


 そう言ってレイモンドは先程マシューに見せたバイコーンが描かれたページをもう一度開いた。確かにそこには右下にユニコーンなる伝承のモンスターの特徴が書かれていた。


「なるほど、ユニコーンか。……角が1本だけだからかな、何だか見ていて不安になる石像だよ」


「それは俺も思ったよ。この石像は今にも動き出しそうなくらい精度が高いのにどこか未完成に感じるんだよな。……まあ、その理由は分からないけどさ」


 レイモンドも同じように石像から不安を感じていたようだ。だが2人ともいくら考え込んでもその理由の結論が中々出せなかった。やがてマシューは結論を出すかのように口を開いた。と言っても理由が分かった訳では無い。諦めるという結論をだしたのだ。


「……ひとまずバイコーンの討伐に集中しよう。バイコーンはこの先に生息しているんだろう?」


「あぁ、そうだ。バイコーンは単独でも確認されてはいるが群れも確認されている。群れに遭遇してしまわないよう注意して進まないとな」


 2人は石像からさらに奥へと進んで行った。嵐馬荒原は荒原であるが故に視界を遮る障害物が少ない。数少ない草の茂みや岩のかげなどを駆使して2人は慎重に奥へと歩みを進めてた。


「(……お、レイモンド。あそこにいるのはモンスターじゃないか?)」


「(あぁ、あれはミニマムサボテンだな)」


 マシューが見つけたモンスターは30センチほどの大きさの小さな動くサボテン型のモンスターである。トールサボテンの幼体であるこのモンスターは比較的力が弱い故にここ嵐馬荒原で遭遇出来るモンスターの中では討伐しやすい部類に入るモンスターなのである。


「(ちなみに依頼ボードには確か掲載されていた。報酬金は結構安くて銀貨2、3枚だったかな)」


「(嵐馬荒原での最初の戦闘だからね。多少報酬金が低くても難易度は低い方が良い。さあ、討伐しに行こう)」


 そう言ってマシューは勢いよく茂みから飛び出した。ミニマムサボテンは驚いて固まってしまっている。飛び出した勢いそのままにマシューはウェイトソードで3回程斬りつけた。ミニマムサボテンは体力が低いモンスターであり、たったそれだけで討伐は完了したのである。


「よし、討伐完了だな」


「ウェイトソードってかなり凄い武器なんだな。俺が戦闘に加わるまでも無く討伐するなんてよ」


 そう言いながらレイモンドがマシューに近づいた。レイモンドは遠距離用の武器である木彫りのアトラトルを持っているはずだがその手には銀の大盾以外のものは無い。つまりただの口だけと言う訳である。


「そう言う割には武器を出してないようだけど?」


「要らなかったんだから別に良いだろうよ」


「確かに実際必要無かったな。ミニマムサボテンの討伐の証はどこになるんだ?」


「……依頼があったことは覚えているんだが、討伐の証までは覚えて無いんだよな。とりあえずそこまで大きくないんだから全部収納袋に入れてしまったら良いんじゃないか? 収納袋はまだまだ余裕があるからそれくらいならきっと入ると思うぜ」


 どうやらレイモンドも討伐の証がどの部位なのか把握していないようだ。仕方なくマシューは自分の収納袋にミニマムサボテンを仕舞い込んだ。


 ミニマムサボテンを収納してもなお容量が満たされてはいない。この小さな革袋にどれだけのものを入れられるのだろうか。マシューは感心するようにしばらく収納袋を見つめていた。


「……マシュー。感心するのも分かるがひとまずそれは後にしてくれるか?」


「……! あぁ、済まない。何か見つかったのか?」


「見つけたとも言うし見つかったとも言うな。こいつはどうやらミニマムサボテンが好物らしくてな。ミニマムサボテンと遭遇出来れば遭遇出来るだろうとは思っていたよ」


 レイモンドは少し遠くの方を見上げているようだ。マシューもその方角を見てみるとなるほど、先程図鑑で見た通りの姿をしたモンスターが鼻息荒くこちらを見下ろしていた。


「バイコーン……か」


「あぁ。どうやら好物が食べられなくて少し興奮しているようだ。さすがに俺も戦闘に加わるぜ。上手く当てられると良いんだがな」


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