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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
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第24話 予定通り……?

 読んでくださりありがとうございます。バーナードは絶体絶命ですね。


 バーナードが恐る恐る振り返るとポーラが恐ろしい顔でバーナードを睨んでいた。小柄なはずのポーラだが不思議と今はバーナードより大きく見えた。


「いや、……あの、その」


「あのもそのも無いね。言い訳は聞かないよ。あんたがここでこっそりたばこを吸ってた事実は変わらないんだからね。……さ、お2人ともお待たせしました。こちらが本日の夕食になります」


 何事も無かったかのようにポーラは2人に向き直ると手に持っていた料理を2人の目の前に置いた。こんがり焼けた肉とにんにくのにおいが2人の食欲をこれでもかと刺激する。2人は箸を手に取ると目の前の夕食を勢いよく食べ始めた。


「……あぁ、美味え」


「あぁ、……とても美味しいな」


 遅めの夕食を食べ満面の笑顔の2人を見てポーラは先程の顔が嘘のように穏やかに微笑んでいた。手際良く着ていたエプロンを畳むと腕に抱えてポーラは口を開いた。


「ただのステーキ定食なのにそう言ってもらえると嬉しいですね。食後にはフルーツタルトがありますのでよろしければどうぞお食べになってください。そこでふてくされてるおっさんに聞けば持って来てくれるはずです」


「……俺がか?」


「あんた以外誰がいるのさ。ついでに片付けも頼んだよ」


「……」


「私は毎日朝が早いんだ。今日くらいあんたがやりな。毎日遅くまで飲むか吸うかしてるんだから片付けぐらい出来るだろうさ」


 そう言うとポーラはさっさと食堂を出て行った。バーナードはそれを横目でずっと見ていたかと思うとマシューとレイモンドに振り返った。その手には新しいたばこが既にあったのである。


「さて、……あんたたちたばこは別に平気だったな」


「あれ? 怒られたのにまだ吸うのか?」


「もちろん。さっきはしっかり吸えなかったからな。……どうせ明日の朝怒られるのは一緒だ。なら吸う本数が多少増えても違いはあるまい」


 そう言ってバーナードはたばこを咥えると火をつけた。なるほど相当な愛煙家らしいと2人は苦笑いを浮かべて残りの夕食と食後のフルーツタルトを平らげた。もうすぐ0時。腹を満たした2人は部屋へ戻るとすぐに眠りについた。冒険を始めた2人の初日はこうして終わり次の日を迎えるのであった。




 マシューは目を開けてベッドから出るとすぐに窓へと歩き勢いよくカーテンを開けた。心地の良い朝日がいっぱいに部屋に差し込んで来た。マシューはこの時間が大好きである。物心ついた時から朝起きて窓を開け朝日をからだいっぱいに浴びるのが習慣となっているのだ。


「……あぁ、もう朝か。おはよう、マシュー」


「おはよう、レイモンド。良く眠れたかい?」


「あぁ、よく寝たさ。……今日の予定を決めないとな」


 そう言ってレイモンドも立ち上がった。2人とも睡眠をバッチリ取ったのですこぶる体調が良いのだ。マシューは古びた地図を取り出すとテーブルの上に置いた。そこに記された 7つのバツ印を2人はじっくり見ていた。


「この地図の真ん中に描かれているのがここ帝都だとして残りのバツ印は周囲に5つと上空に1つになるのかな。どう思う?」


 7つのバツ印は古びた地図の中心に1つ、その周囲に5つ、そして中心の上空に1つ記されているのだ。普通に考えれば地図の中心に描かれているのは帝都と考えて良いだろう。だが少し納得がいかないのかレイモンドは首を傾げていた。


「……ここの上空に何かあるとは到底思えないんだがな。まあそもそも帝都にある《七つの秘宝》自体見つけられていないんだが」


「まあそれはひとまず置いておいて、地図の左部分を見てよ。この描き方からして多分この部分は森だと思うんだ」


 そう言ってマシューは古びた地図の左部分を指差した。なるほど、確かにそこには森のようなものの上にバツ印が記されていた。


「そうだな、かなり広いみたいだが森で間違い無さそうだ。となると、……闘猿の森か?」


「その可能性が高いと俺は思っている。ただ、闘猿の森はモンスターも強いし地図無しで往復するのはちょっと厳しいと思うんだ。だからひとまずは森部分の隣の隣、この草原か荒原かとにかく広い地点を探索してみるってのはどうだろう?」


 言いながらマシューは指で地図をなぞった。マシューが指を止めた場所には確かに荒原らしきものが描かれていた。探索するにはやや広いような気がするが帝都からの行き来は闘猿の森よりも楽そうである。


「良いね。……そう言えば書庫にも行くって言ってなかったか?」


「そうだったね。確かレイモンドの親父さんが仕事でいるんだったっけ? すごい量の本があるのなら1冊くらいは《七つの秘宝》について書いてある本があると良いんだけど」


「きっとあるさ。俺らが見つけられなくても親父に聞けば出てくると思うぜ。それじゃあ書庫で情報を集めたら早速その場所を目指して出発しようか」


 今日の予定が大体定まった2人は朝食を食べ、緋熊亭を出発しまず書庫を目指したのである。2人は書庫でレイモンドの父に会い、《七つの秘宝》についての情報を手に入れるつもりなのだ。だが2人の予定は最初の時点で狂ってしまったのである。


「……ええと、もう一度言ってもらえるか?」


「書庫を利用される際には利用者カードを提示してもらう必要があります。発行には一律で銀貨1枚を頂いております」


「……つまりお金を払わなければ利用することは出来ないと?」


「はい、そうなりますね」


 帝都にある建物で2番目に大きい建物、それが書庫である。1番大きい建物は宮殿であり宮殿に行く用事がほぼ無い2人にとっては書庫が1番大きな建物になるのだ。建物の大きさにやや気圧されつつ中へ入った2人は受付の女性に利用者カードを作るように言われたのだ。


 発行に必要なのはたったの銀貨1枚。それを払えば書庫にある本を全て閲覧出来るのだからむしろ良心的と言って良い。だが今2人は何ひとつ硬貨を持ち合わせていない全くの無一文なのである。2人は書庫へ入るのを諦めることにしたのだ。受付の女性は不思議そうな表情を浮かべていた。


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