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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
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第22話 雑貨屋の店主は爆弾魔(ボマー)

 読んでくださりありがとうございます。どうやらレイモンドはメリッサに気に入られたようですね。


 どうやらメリッサは2人……と言うよりレイモンドにかなり興味を抱いたようだ。となればマシューの口から聞くよりレイモンドが言った方が良いだろう。そう思ってマシューはレイモンドの方を見た。視線に気が付いたレイモンドは少し面倒くさそうに首の後ろを掻きながら口を開いた。


「……俺がレイモンドで、そっちがマシューだ」


「ほう、覚えておこう。それでええと、……なんだったかの。あぁ、そうか。爆破液オイルの話じゃったな。その赤い液体は爆破液オイル、要するに爆弾じゃよ」


「……それが何で色んな場所に置いてあるんだ?」


「もちろんそれにも理由がある。察しの良いレイモンドなら何故だか分かるんじゃないかい?」


そう言ってメリッサは期待の眼差しでレイモンドを見た。レイモンドはそんなこといきなり言われても困ると言いたげな顔をしている。そもそもレイモンドは察しが良い訳では無く、たまたま当たったのが続いただけなのだ。


「……いや、ええと。……さっぱり分からない」


「ふむ、まあこれすら見抜けたならば冒険者より経営者になるべきじゃな。分からないのも仕方がない。点在して配置された爆破液オイルは強盗や万引きを逃がさないためじゃよ。この銀の針で起爆させてそんな奴をこの店から絶対に逃がさないのさ」


「……それ店ごと爆破したりは?」


「その可能性もあるの。盗みは悪じゃ、軽率にそんなことをする輩には爆破の鉄槌を下してやるのさ」


「……」


「ま、それはさすがに冗談だがね。さて、冒険に必要なものを買い揃えたいだったか? 今お前さんたちはいくら持ってるんだい?」


 メリッサは表情ひとつ変えず話題を変えた。そのことから絶対に冗談では無いと確信した2人だが無闇に追求しないことに決め、自分たちの用件を優先することにした。自分たちの所持金は収納袋を確認するまでもなく把握している。マシューは静かに口を開いた。


「……銀貨3枚」


「……だけか? 買い渋るとロクなことが無いぞ?」


「……あいにくそれだけだ」


「ほう、その顔は嘘を言っていない。……なるほど、先に武具屋に行ったな? しかもライアンの爺の所だろう?」


「! ……どうして場所まで分かるんだ?」


「簡単じゃよ。あそこは良質な武具が数多く並ぶがその代わり値段も相応。駆け出しの冒険者があそこで揃えようとすると大概金が無くなるものさ。まあ、あって無いような装備でモンスターに突っ込んで死んじまうよりはお前さんたちは遥かに冒険者向きではあるの。あそこで揃えた判断は決して間違っちゃねぇ」


「……知り合いなのか?」


「あぁ、知り合いだとも。なにせ同じように冒険者相手の商売をして長いからね。……あの爺の目立てはかなり正確じゃよ。この私に匹敵するくらいな。さて、手持ちは銀貨3枚だけだったな。そうだの……その装備なら回復薬ポーションはそこまで要らんだろうな。むしろこっちが必要になるだろう。……これ全部でちょうど銀貨3枚じゃ」


「……これは?」


回復薬ポーション2つに携帯食料2つそしてサービスのミニ魔力回復薬マナポーションが2つだ。銀貨3枚で冒険を無事に終えたいのならこのくらいを揃えておくと安心出来るぞな」


「……」


「ふむ、何か不満でもあったか? 回復薬ポーションは銀貨1枚、携帯食料は銅貨5枚じゃから全部合わせて銀貨3枚。そこにミニ魔力回復薬マナポーションまでおまけで付いているとかなりお買い得なのじゃが……」


 メリッサの言う通りかなりお買い得なのは2人とも分かってはいた。だがしかし銀貨3枚を出す前に2人には知っておきたいことがあるのだ。


「……実は俺たち地図も買いたいんだ。地図はここで買えるんだろう?」


「なるほど、確かに地図は雑貨屋でしか買えない。冒険するとなると欲しくなる気持ちは分かる。地図だけあっても当てにならないと分かっていても欲しくなるのは地図がある安心感からなのかね。」


「……当てにならないとは?」


「お前さんたち地図をどう活用する気だい? その時の現在地と目的地がはっきりしてなけりゃ地図なんて持ってても何の意味も無いぞ? 地図なんて金が無いうちから買い揃えるものじゃあ無いの。駆け出しの冒険者なら素直に慣れるまで近場でモンスター狩りをしてある程度お金を稼ぐことだな」


 メリッサの言うことはもっともである。地図は現在地と目的地がはっきりしていないと上手く活用出来ないのだ。それは古びた地図という地図を持っていながら地図を欲しがっている自分たちが証明していた。


「……確かにそれはそうかもしれない。だがいずれ必要になることも確かだ」


「ふむ、そのことを理解した上でなお地図を欲しがるか。……となるとお前さんたちは地図を持っている。それも目的地しか分からない地図だ。例えば宝の地図とかだの」


「……」


「おっと、警戒の必要はないぞ。私は別に宝なんぞいらんからな。こうやって雑貨を売りながら孫の成長を見るのが生きがいでね。どんなにすごい宝だとしてもここを離れて冒険なんてする願望は湧かないね。それで? こいつらは買うのかい?」


「買っておこう。お買い得なのは間違い無いからね」


「毎度。……さて、地図が欲しいんだったな。それなら金貨3枚持って来な。それだけあれば大抵の地図は手に入るだろうね」


 そう言うとメリッサはニヤリと笑った。何はともあれ金を稼がなくてはならないのは間違い無いらしい。メリッサに会釈をして店を出ると2人はゆっくり歩いて緋熊亭へ戻るのであった。満月に近い大きな月が2人の歩く影を伸ばしていた。


 (追記)展開を分かりやすくするため文を少し追加しております。ご了承ください。

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