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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第6章 その正義は誰がために
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第15話 状況を打破するために

 読んでくださりありがとうございます。この状況、マシューたちはどうするのでしょうか。


 目の前の人物は感心したようにマシューを見つめていた。だがこんな人物に感心されてもマシューはちっとも嬉しくはない。それに今マシューが考えねばならないことはそんなことでは無い。どうやってこの状況を打破するのか。それが一番重要なのである。


 単純に撤退するだけならばニコラが【転移ゲート】を発動させればそれで終いである。しかし持っている《希望》の象徴が偽物だとなれば話は変わってくる。あの台座の上に置かれている本物の虹色の紋章を手に入れなければ撤退しても意味がそれほど無いのだ。


 理想は虹色の紋章を手に入れてここから安全に撤退すること。そしてその理想は実現すべき最低条件である。目の前のガブリエルを無視してそれを行うのはどう考えても不可能。故にマシューたちは神聖の騎士団騎士団長ガブリエル・クラークを正面から打ち破ることを強いられたのである。


「(……マシュー、なんとかしてあの場所へ行くことは出来ないかな)」


 いつの間にかレイモンドがマシューの近くへやって来ていた。どうやら何か考えがあるようだ。だがレイモンドがその場所へ行くことは誰かのサポートが無ければ到底不可能である。そしてマシューにはなんのサポートもすることが出来ないのだ。


「(何か考えがあるのか?)」


「(……上手くいけばいいけどな)」


「こそこそと何を喋っている? ……まあ、君たちが考えそうなことなどほとんど分かりきったものだがな」


 ガブリエルがそう言ってこちらを見下ろしている。話し声が聞こえずとも話し合っていることは分かるのだろう。そしてガブリエルはマシューたちよりも遥かに経験が豊富であり、こうした状況を打破しようとする人間の動きは手に取るように分かるらしい。


 つまりマシューたちがこの状況を打破するには少ない経験の中でガブリエルの思考を出し抜かなければならないのだ。だがそれは容易ではない。マシューたちには経験がどうしようもなく足りないのだ。


「……そう言う時は私を頼れば良い。そのために騎士団長はいるのだからな」


 そう言ってニコラはにこりと微笑むと前へ歩を進めた。その微笑みは覚悟が混じっていた。


「深緑の騎士団、騎士団長のニコラ・ハロルド……だったか?」


「へぇ、家名まで知っているのかい?」


「当然だろう? 自分にとって障害となろう人間の名前は把握しているさ。……もっとも、もう覚えておく必要は無くなったようだがな」


 ガブリエルはその場から動かずニコラをただ見下ろしていた。ニコラもまたその場から動かずガブリエルを見上げている。ガブリエルは煽るように言葉を投げかけることでニコラが取り乱すことを狙ったのだろうか。だがそれは何の効果も無かった。覚悟を決めた男はどんな言葉でも乱されはしないのだ。


「……悪いが、目的は果たさせてもらおう」


「正面から《希望》の象徴を狙うか。威勢は買うが、とても不可能だな」


「そんなものやってみなければ分からないさ」


「……【認識阻害インビジブル】でも使うつもりか? そんなことをしても目的は決して果たせない。使った瞬間にあの者たちの首をはねてやろう」


 ガブリエルは剣を持ち不気味に笑っている。アンガスを執拗にいたぶっていたガブリエルである。マシューたちの首をはねることに何の抵抗も無いだろう。つまりその言葉はハッタリではなさそうである。ニコラとしてはマシューたちの誰一人として殺させる訳にはいかなかった。騎士団長としての誇りがニコラを前に進ませていたのだ。


「……マシューたちは今を生きる人々にとっての希望だ。決して殺させやしない」


「……なるほど、希望か。ならばその希望は踏みにじってくれよう! ……【認識阻害インビジブル】‼︎」


 叫んだガブリエルの姿は一瞬にして消えたのだ。【認識阻害インビジブル】。相手から認識されなくなる魔法でありいわゆる初級魔法のひとつである。その精度は騎士団長ともなれば凄まじく誰も消えたガブリエルが今どこにいるのか気付くことが出来なかった。……レイモンドを除いては。


 レイモンドは剣を構えて前へ足を踏み込むとガブリエルの剣を受け止めてみせた。【認識阻害インビジブル】の効果も切れガブリエルの姿ははっきりと見えている。受け止められると思っていないガブリエルはさすがに焦った表情である。どうやら少しは出し抜けたようだ。


「……貴様、私の姿が見えているのか⁈」


「そうじゃなきゃ受け止められないだろうよ」


「……なるほど、だが凡夫だ。長くは保ちまい」


 ガブリエルは手にした剣に力を込めた。片手で持っているガブリエルに対してレイモンドは両手である。だがそれでも力はガブリエルの方が上回っていた。少しずつ少しずつ、レイモンドは後ろに押し込まれていたのだ。


「……片手でこんなにも押し込まれるとはな」


「ふん、……貴様など片手で充分」


「……そう言うがよ。ニコラはもうたどり着いたぜ?」


 ガブリエルの剣をレイモンドが受け止められると見るやニコラは目的の場所へ急いでいたのだ。ニコラはもう既に数段の階段を登り試練の台座へとたどり着いていた。


 だがその場所に《希望》の象徴は無い。台座の上には何も乗っていない。虹色の紋章は今ガブリエルの手の中にあるのだ。レイモンドにもよく見えるようガブリエルは剣を持っていない方の手を広げほくそ笑んだ。


「貴様らのちゃちな考えなどお見通しだ。貴様らに《希望》の象徴は渡さん!」


「……何か勘違いしてねぇか? 俺たちは別にそのペンダントを目指していた訳じゃ無いぜ?」




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