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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第6章 その正義は誰がために
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第13話 暗闇で待つもの

 読んでくださりありがとうございます。書庫の地下にはいったい何が待ち受けているんでしょうか。


 目の前にある階段は下り階段であり、その先に何が待ち受けているのかは肉眼では確認出来ない。目に映る暗闇はまるでマシューたちを飲み込もうとしているかのように深くその先へ足を踏み入れるのは少し覚悟が必要であった。警護の聖騎士ですら決して近づくなと厳命されていたこの階段を降りた先にはいったい何が待ち受けているのだろうか。


「……この先へ進む前に確認をしておく。【転移ゲート】の魔水晶は私が持っている。もし、何か危険を感じ取ればすぐに私の近くに集まってくれ。そうすればすぐに【転移ゲート】によって脱出出来るはずだ」


「……了解。……この先はかなり暗そうだ。明かりが欲しいところだが、【着火イグナイト】では心もとない。エルヴィス、【暗視クリア】を発動させてくれるかい?」


「分かった。……【暗視クリア】」


 エルヴィスは【暗視クリア】を発動させた。目の前の階段はかなり続いているようでその先に何があるのかまでは見えなかったが明瞭な視界はこれで確保出来たのである。事前に出来ることはこれくらいである。後は前に進むだけだ。


「それじゃあ、……進もうか」


 迷いを消すかのようにひとつ息を吐いてからマシューは階段を下るために前へと足を進めた。階段を踏む足音が静かに暗闇に響いていた。


 随分と階段を降りた。階層で言うと地下5階ほどだろうか。そこまで階段を降りてようやくマシューたちはひとつの部屋の扉の前にたどり着いたのである。特に厳重に鍵はかかっておらず少しの力で押すと簡単にその扉は開いた。扉の先にはかなり奥行きのある広い空間が広がっているようだ。


「……これはまた広い場所だな」


「あぁ、……だが何も無い。……奥に何かあるかもしれない。行ってみよう」


 これだけ広い空間だと隅々まで探すのは時間がかかりそうだ。何も見逃さないように周囲にも気を配りながらマシューたちはその部屋の奥へと進んでいった。


 ……数十メートルほど歩いた頃であろうか。先頭を歩くマシューは目の前に見える光景に目を疑った。どうやら一番奥の壁に男が1人、磔にされているようである。そしてその人間の横にはもう1人の男が何も言わずにただ立っていたのである。


 マシューたちは【暗視クリア】によって明瞭に見えているが、この場所は本来真っ暗闇の空間である。そんな場所で1人は壁に磔にされ、もう1人はそれをただ何も言わず見ている。暗闇で待ち受ける光景としてはこの上ないほどの不気味な光景が目の前に広がっていたのだ。


「(……磔?)」


「……喜びたまえ、どうやらこれが最後の痛みのようだ」


 男はそう呟き腰に下げた剣を抜き、磔にされている男の肩の肉を抉った。言葉にならないほどの呻きに似た声が漏れる。男はかなり疲れているようだ。恐らく相当長い間こうしてこの場所で痛みを受けてきたのだろう。【暗視クリア】を通して見ることの出来る光景はマシューたちにそれを痛々しいほどに伝えていた。


 だが、それ以上の衝撃をマシューたちは感じていた。今剣を持ち男の肩の肉を抉った男のその声には聞き覚えがある。後ろ姿で分かりにくいがどうやらその人物は立派で威厳のある髭を顎にたくわえているようだ。


「……ガブリエル・クラーク⁈」


「……いかにも君たちの言う通り私の名前はガブリエル・クラーク。こうして君たちに直接会うのは初めてになるかな」


 ゆっくりと男はこちらへ顔を向けた。やはり目の前にいるこの男は神聖の騎士団騎士団長のガブリエル・クラークである。……だが、彼は他でもないマシューたちの手によって死亡したはずである。それに直接会うのが初めてであるとはどういう意味なのだろうか。


「……なるほど【暗視(クリア)】を発動させているか。それで君たちにも我々の姿が見えていると。……だが、暗闇故に本来見えているはずのものも見えなくなるものだ。この男のようにな」


「……どういう意味だ?」


「分かるようにしてやろう。【暗視(クリア)】に頼らずともよく見えるようにな‼」


 ガブリエルはそう言って持っていた剣の先端で床を突いた。それで何か仕掛けが作動したのだろう。マシューたちの周囲に火の灯った明かりが数基現れたのだ。そして明るくなったことで顔が伏せられていても判別できるようになったのである。磔にされた男が誰であるかに最初に気付いたのはニコラである。ニコラに続いてマシューたちも男の正体に気が付いた。


「アンガス⁉ ……いったい何が起こっている⁈」


「目の前で起こっていることこそが現実なのだよ。まさか若くして騎士団長にまで上り詰めた君がそれを分からないこともあるまい」


 そう言ってガブリエルはニヤリと笑った。この場にいる誰もが困惑を隠せなかった。目の前にいるのはガブリエルの足止めが出来ず命を落としたはずのアンガスと、その後マシューたちを襲撃し絶命したはずのガブリエルである。これが現実だとはとても信じられない。


 だが目の前の光景は確かにそれが現実であるとマシューたちに伝えているのだ。


 


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