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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第6章 その正義は誰がために
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第7話 助けに来た

 読んでくださりありがとうございます。どうやらエリックはマシューたちの助けになってくれるようです。


 マシューは以前帝都の書庫へ行った時のことを思い出していた。修羅の国についての情報を知るために書庫で調べものをしていた4人がその時出会ったのが目の前にいるエリックである。確かあの時エリックは書庫の警備としてレイモンドの持っている図鑑が本当にレイモンドのものであるかを確認していたはずだ。


「マシューはこの男が誰かを知っているのか?」


「一応ね。……エリック、あなたについて行く前にひとつ質問が」


「……何でしょう?」


「エリックにこの場所の警護を要請した人は誰かを教えてくれ。申し訳ないがそれを知らない限り俺たちがあなたについて行くことは無い」


 マシューはまっすぐエリックの顔を見つめてそう言った。その態度は毅然としたものであり、聖騎士に囲まれているとは思えないほど堂々としたものである。そしてその態度でマシューはエリックに要請した人物が誰かを聞いたのだ。


 本来であれば当然エリックにこの場所の警護を要請したのはエリックの上官である人物と考えるのが普通である。しかしエリックはある方の要請とわざわざそれが誰であるかを伏せた。……となると上官では無い可能性が出てくるのだ。そしてマシューはその可能性に賭けたのである。


「なるほど、それではお伝えしましょう。その人物は深緑の騎士団騎士団長のニコラ。これで満足いただけましたかね?」


 エリックのその言葉にマシュー以外の4人は一斉にエリックの表情を見て、マシューへと視線を移した。マシューはまるでその答えが分かっていたかのようにずっと堂々としていた。


「あぁ、満足だ。すぐに案内をお願いしたい」


「ええ、かしこまりました」


 エリックはにこりと微笑んで後ろへ振り返った。彼は今神聖の騎士団としてではなく深緑の騎士団騎士団長ニコラの要請で動いている。彼が神聖の騎士団として動いていないのをマシューには何となく分かっていたのだ。


 とは言えこれから案内される場所がどこなのかはマシューにもさっぱり見当がつかなかった。


 そして歩くこと数分。目的地にたどり着いたエリックはその足を止めた。その場所はエレナ以外のマシューたちにとって馴染みのある家である。それ故にエレナはどこかが分からず首を傾げ、他の3人はなぜこの場所に案内されたのか分からずもっと首を傾げた。


「……無事に帝都へ入ることが出来たか。ひとまず第一関門は達成されたと言えるな」


 その家の扉を開けて中へ入ったマシューたちをそう言って出迎えたのはニコラである。そして彼の横にはこの家の持ち主であるデービッドがマシューたちを見ながら泣きそうな表情をしていたのだ。


「ええと、色々と説明して欲しいんだが……」


「アンガスから連絡があってね。この手紙には勇者候補である君たちが危険な状態であると書かれていた。そしてどうか君たちの助けになって欲しいともね」


「アンガス……が?」


「あぁ。深緑の騎士団と神聖の騎士団、所属こそ違えたがアンガスは僕にとっての戦友であり親友だ。彼がその命を捨ててでも勇者候補である君たちの命を繋いだんだ。僕も全ての力をもって君たちの助けになろう」


 ニコラはアンガスからの手紙を持ちながら優しく微笑んでいる。マシューたちにとってこれほどありがたいことはないだろう。ニコラがマシューたちの助けになってくれると言うのはとても心強いのだ。そして同時にあの切迫した状況でニコラに手紙を出していたアンガスの判断が相当なものであるとマシューたちは感じていた。


「ニコラが助けてくれるなんて思っていなかったよ。本当にありがとう。……それで、その。どうしてこの場所を?」


「君たちを帝都で匿うには拠点が必要だ。だが、深緑の騎士団にいる騎士たちの家は全員知られており不適格でな。どうしたものかと困っていたんだが、ここにいるデービッドから君たちへ自宅の提供があった。そこで当面の拠点としてここで君たちを匿うことに決めたのだ」


「君たちには随分と世話になったんだ! 今度は俺があんたたちの助けになる番だよ!」


 デービッドは感極まっているのか今にも涙が出そうである。どうやらデービッドはマシューたちの助けになろうと深緑の騎士団に申し出てくれたようである。そしてそれを受けてニコラはマシューたちの手助けをしようと行動に移していたようだ。


「拠点をどこにするかがひとつの懸念材料でしたが、何とかなりそうで良かった」


 ポールはそう言って胸を撫で下ろした。そしてマシューたちも同じことを思っていたのだ。


 帝都に住んでいた関係からエレナとエルヴィスはある程度帝都に知り合いはいる。しかしそれらの人々は少なからず神聖の騎士団と関わりがある人たちでこの場合頼ることが出来ない。そしてマシューたちにも帝都に知り合いはいるが、聖騎士の警護の目を潜って会うことが難しく知り合いに頼ることは諦めていたのだ。


「ふふ、君たちは色々な人に恵まれているようだな。神聖の騎士団に指名手配されているにも関わらずこれだけの人が助けてくれる人もまた珍しい。……これもまた勇者候補たる理由かもしれないな」


「……なんだか恥ずかしいな」


 ニコラは感心したようにそう呟いた。マシューたちもこれだけの人に助けてもらえるとは思っておらず、ニコラにそうして褒められるのが少し照れくさくあった。


「恥ずかしく思う必要は無い。むしろ誇りに思うべきだよ。こうして色々な人が助けてくれるだけの行いをして来たという証だからね。……さ、君たちはあまり食事が取れなかったんじゃないかい? 今後どうするかを決める前にまずは腹ごしらえだ」


 ニコラはずっと優しく微笑んでいる。どうやら誰かが食事を作ってくれているようだ。確かにマシューたちはあまり食事を食べれておらず腹は減っている。腹ごしらえと聞いて思い出したかのようにマシューの腹は空腹を訴え始めた。


そしてマシューはデービッドの家にある台所に目を向け、そしてレイモンドの方へ顔を向けた。レイモンドもまたマシューの方を向いて驚いた表情をしていた。


「お、ようやく気付いたか。実は俺もあんたらの助けに来たんだよ」


 そう言いながら台所から出てきたのはバーナードである。そしてポーラの姿も台所で見えた。どうやら緋熊亭の2人もマシューたちの助けに来てくれたようだ。


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