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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
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第15話 討伐の証

 読んでくださりありがとうございます。二コラはプロフェッショナル精神の持ち主です。


 そう言うニコラは真剣な表情である。こうして持ちもの一つにもこだわっているその姿はプロフェッショナル精神が感じられマシューは自身の騎士への見方が良い方へ変わって行くのを感じていた。だがその一方で少し気になることもあるのだ。ニコラに負けないほど真剣な表情でマシューはニコラに問いかけた。


「名前を聞くだけでどうしてレイモンドの父さんが誰か分かるんだ? 名前が同じ別の人かもしれないよ?」


「それは簡単な話だよ。騎士以外で帝都で仕事をする際は全騎士団へ申請が必要なのさ。だから副団長以上の人なら帝都で仕事をしている人の名前は大体の年齢と一緒に全て頭で記憶している。君らくらいの歳の子どもがいる大人で名前がリチャードと言われればもうそれは1人に絞られるさ」


「なるほど。俺の親父が誰か分かったからこの図鑑の入手経路も違法では無いと判断した訳だ。……納得は出来るが親父が疑われていたのはちょっと気分が悪いな」


「あぁ、それはそうだよね、申し訳ない。……ただ僕は騎士団長だからね。例え気分を悪くさせたとしても確認を怠る訳にはいかないのさ」


 今までを見ていてもニコラがかなり実直な騎士であることは2人ともに伝わってくる。帝都を守る騎士として仕方のない行動であることは2人とも理解が出来るのだ。言葉にこそ出さないが納得したように2人とも静かに頷いてみせた。それを見てニコラは少しだけ安堵の表情を浮かべた。


「……説明を再開しますね。先程お渡しした収納袋は冒険者登録をされた皆さんに差し上げているものでございます。どんな風に使うかは個人の自由ですが皆さんは大抵討伐の証や素材、お金などを入れておられますね」


「討伐の証?」


 聞き慣れない単語に思わずレイモンドは反応を示した。何となく何を指しているかは分かるが知っていて当然のように扱われると知らない2人にとっては困るのだ。


「討伐の証は簡単に言えばモンスターを討伐したという証拠になるものでございます。先程お渡しした収納袋の中に入っているナイフを使われると比較的簡単に採取出来るかと思います」


 どうやら収納袋の中には既にナイフが入っているらしい。2人ともほぼ同時に収納袋の中に手を入れ中に入っていたナイフを取り出した。ナイフと言っても小型のものであり武器としては使えそうに無い。完全に採取用の代物なのだろう。


「モンスターを討伐した時はそのナイフで討伐の証を採取して冒険者ギルドに納品することでお金が貰えるのさ。君たちは闘猿の森でエイプウォリアーを討伐しただろう? エイプウォリアーなら討伐の証は左耳になる」


「……つまり左耳をこのナイフで剥ぎ取ってここに納品してくれば良いと」


「そう言うことだ。ただ、モンスターから剥ぎ取った素材の多くは血が付着しているから入れる収納袋を専用のものにしている冒険者が多いかな。僕も収納袋を大抵3つは持ち歩いてる」


 そう言ってニコラは自分の左側の腰を指差した。確かにそこには2つの革袋がぶら下がっていた。手に持っているものと合わせればちょうど3つになる計算である。


「君たちがこれからも一緒に行動するなら今貰った収納袋のどちらかは素材専用にしたら良いんじゃないかな。元々持っていた分と合わせると合計3つになるからね」


 そこまで言うとニコラは受付の女性に手に持っていた収納袋を手渡した。


「この中に今日の納品分が入っている。そのうちエイプウォリアーは彼らが討伐した分だ。彼らにも報酬を支払ってもらえるかな?」


「かしこまりました。それでは報酬についてを含めましてこれからマシューさんたちに納品についても説明させていただきます。それではまず受付へ戻りましょう」


 受付の奥では職員が忙しなく動き回っていた。マシューたち以外の冒険者もまたこのギルドへ来ているのだ。受付に戻ってからすぐに次の説明という訳にはいかない。マシューとレイモンドは近くにある椅子に腰掛けながら待っていた。


「……あ、そうだ。帝都周辺の地図が欲しいんだが、どこに売ってるんだい?」


「地図なら雑貨屋に行けば良い。夜も営業しているから宿屋を探し終えたら行ってみれば良いよ」


「……宿屋! そうか泊まる場所を早く探さないと野宿になっちゃうや」


「なんだって‼︎ 俺に野宿は無理だぞ⁈」


 2人とも宿屋のことをすっかり忘れてしまっていたのだ。まさか帝都まで来て宿無しで野宿する訳にはいかない。窓の外を見るとかなり暗くなっている。早いところ宿屋を確保しておかなければ野宿の確率がなお一層上がってしまうだろう。


「宿屋を探すのは早くても遅くてもそう変わらないかな。冒険者たちの多くは連泊で宿屋を利用していることが多い。だから日付が変わっても宿屋が埋まったままなんてのはよくある話だよ」


「……それじゃあやっぱり俺たちは帝都まで来て野宿なのか⁈」


 実はレイモンドは帝都の寝具に大きな希望を抱いていたのだ。誰にも言わないがこっそり楽しみにしていたレイモンドの顔は既に真っ青である。そんな彼を見てニコラは穏やかな笑みを浮かべていた。


「良ければ馴染みの宿屋を紹介しよう。一泊あたり銀貨2枚と値段は少し高いが連泊すると安くなる宿屋さ。部屋数も多いからきっと今からでも空いてると思うよ。気になるなら地図を書いてあげようか」


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