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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第5章 希望を巡る謀略
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第28話 眠気との闘い

 読んでくださりありがとうございます。警護中も支給はあります。


「起きたところで申し訳無いけど、今から支給される食料を貰って来てくれるかい? どうやら警護中でも支給はされるみたいだからさ」


「了解。それじゃあちょっと行ってくるぜ」


 そう言うとレイモンドはゆっくりとテントの外へ這い出てきた。体は結構固まっていたようでレイモンドは軽く伸びをしてから建物へ向けて駆け出した。時間は余っておりそれほど急ぐ必要は無い。そのことを伝え忘れたと駆けていくレイモンドの後ろ姿を見ながらマシューはため息をついたのである。


 程なくしてレイモンドは戻って来た。その手には袋が握られており問題なく支給された食料が受け取れたことがそれで分かった。


「貰ってきたぜ」


「ありがとう、助かったよ」


「ところでみんなずっと座って警護していたのか? 体を動かしておかないといざって時に動かなくなるぜ?」


「最初は僕もそう思ったよ。だが目の前に広がる景色を見てみな。……とてもじゃないが何か起こったようには見えない平和な景色だ。……多分今日のところは何も起きないんじゃないか。それが君が寝てる間に出た結論だよ」


 エルヴィスの言葉を聞きながらレイモンドは目の前の景色をずっと眺めていた。確かに目の前に映るその景色はとてもじゃないが誰かが攻めてくるような雰囲気には感じられない。


「……なるほど。それでみんな暇そうに見えるのか」


「警護をしていれば自然と分かってくるさ。……さて、今度は僕が仮眠を取ろう。寝袋を使えば良いんだよね?」


「あぁ。少なくとも俺よりは疲れが取れるはずだ」


 エルヴィスはゆっくりとテントの中へ入っていった。これでエルヴィスとレイモンドは交代したことになる。レイモンドはエルヴィスが座っていた場所と同じ場所で警護を再開させた。最初に仮眠を取ったレイモンドは当然次の交代が最も遠い人となる。レイモンドにとって長い警護がこの時始まったのだ。


 警護をしながらレイモンドはエルヴィスの言うことが正しかったことを実感していた。何も起こらないただただ時間が過ぎるだけの無駄な時間。警護の時間を端的に言い表せばそういう表現になるだろう。


 夜になりエルヴィスがテントから出てきて次はエレナが入って行った。続けての警護はあまりに暇であるが同時に疲れも出てくるようでまだ交代の時間では無いマシューは眠そうに首を上下に動かしていた。そして仮眠を取ったはずのエルヴィスもまた同じように首を上下に動かしていた。テントの中であまり眠れなかったのだろうか。2人の様子を見てレイモンドは小さく笑った。


 そして夜も更けてマシューとエレナの交代の時間がやって来た。だがエレナはすっかり深い眠りについてしまったようでテントから出てくる気配が無い。寝袋を使うとここまで熟睡してしまうらしい。それならば自分と同じようにテントの床で寝た方がマシなのかもしれない。皆の様子を見てレイモンドはそんなことを考えていた。


 続けての警護にいい加減飽きが来はじめていたレイモンドは深夜のとあるタイミングでふとあることに気が付いた。何ひとつ物音がしないのだ。人が起きていれば何らかの音がするはずだが全く聞こえなくなっていたのである。


 振り返るとエルヴィスもマシューも座ったまま寝てしまっていたのだ。そして相変わらずエレナは熟睡している。マシューはずっと仮眠も取れずに警護をしていたためにこうなってしまうのも分かる。レイモンドだって仮眠を取っていなければ間違いなく寝てしまっていただろう。だがエルヴィスは仮眠を取ったはずである。彼はなぜ今座ったまま寝ているのだろう?


「……確か食料と同じタイミングで毛布も支給されていたんだったか」


 やや眠そうなおぼつかない足取りでレイモンドは支給された袋から毛布を2枚手に取るとマシューとエルヴィスそれぞれに優しくかけたのだ。自分の分を取らなかったのは今自分が毛布を被れば一瞬にして寝てしまいそうだったからである。恐らく何も起こらないだろうが、だからと言って警護をせずに全員寝ている訳にはいかないのだ。


 レイモンドは自分は決して寝るまいと気合を入れて干し肉を手に取り思い切りかじった。何かを噛んでいれば眠気も紛れるだろうという判断からのその行動だったが、少し失敗だったかもしれない。先程より眠気が増した気がし始めた。空腹が少し満たされたからだろうか。ならば干し肉をかじらない方が良かったかもしれない。レイモンドは1人苦笑いを浮かべた。


 次の瞬間レイモンドはさっと表情を変えた。新興都市の方から誰かの足音が聞こえたのだ。暗闇で誰の足音かは分からない。もし暗闇に紛れて騎士がやって来たのならば迎え撃たねばならない。眠気を振り切ってレイモンドは立ち上がった。シュバルツスピアを握るその手は少しばかりの汗が滲んでいた。


「誰だ?」


「……私だ」


 暗闇から声が聞こえた。その声には聞き覚えがある。だがまだ安心は出来ない。シュバルツスピアを握ったままレイモンドは暗闇に目を凝らした。


「……少しだけ君と話がしたい。時間が無いんだ」


 そう言って暗闇から現れたアンガスは鬼気迫る表情をしていた。そしてなぜか着ている鎧は無数の傷がついていた。


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