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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
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第14話 その図鑑は

 読んでくださりありがとうございます。この革袋はいったい何なのでしょうか。


「……ええと、これは?」


「それは収納袋になります。最も小さいサイズではありますがそれでもかなりの容量がございます」


 なるほどこれが収納袋と言うものらしい。手のひらの上の革袋を2人ともじっと見つめた。収納袋のことはニコラから少しだけ聞いた覚えがある。そう思い出したマシューは顔を上げるとニコラを見た。それだけでニコラはマシューが何を言いたいのかを理解したようである。


「あぁ、僕が言ってた収納袋はそれだよ。ギルドや騎士団でもよく配布される上に、自前で持っている人も中にはいるからね。君たちもあの時持ってないか確認したのさ。……ところでレイモンド。君それ2個目だろ? さっきからちょっと気になっていたんだよ」


 ニコラの指摘は正しい。マシューもまた同じことを考えていた。2人の視線はレイモンドの腰辺りに集中していたのである。視線の先にはお金を入れてある小さな革袋が下げられていた。レイモンドは静かにそれを手に取りよく見えるように顔の前に持ち上げた。


「……これがそうなのか。確かに何でも入る不思議な袋だとは思っていたんだが」


「それなら収納袋で間違い無いね。収納袋は補助魔法がかけられている故に見た目では想像もつかないほどの容量を実現し、その上に入れた物が相互で干渉しないように個別で保存してくれるとても便利な魔道具のことだよ。ちなみにその中には何が入っているんだい?」


「これの中身か……。そんなに大したものは入れてないけど」


 そう言われてレイモンドは収納袋に入れていたものをひとつひとつ取り出し始めた。マシューの知る限りではお金以外のものは入っていないはずである。だがあの革袋はレイモンドのお母さんが持たせてくれたものである。2人のために入れてくれたものがお金以外に何かあるのだろうかとマシューもまたレイモンドが何を取り出すのかを注視していた。


 金貨に銀貨、そして銅貨。価値の違う3種類のその効果はそれぞれ5枚ずつ収納袋に入れられていたようだ。思ったより数多く入っていた貨幣を全て取り出し終わり次に取り出したものを見てマシューは思わず声を出していた。


 マシューはずっと不思議だったのである。収納袋が何か分かった後ならばあのサイズの物を出し入れするところを見損なっても納得出来る。


「……ん? マシューはこれを知ってるだろ?」


「ずっとそれをどこに入れて持ち歩いているのか不思議だったんだよ」


「ええと、レイモンド。それはなんだい?」


「これはモンスター図鑑、4年前くらいに親父が俺にくれたのさ。特徴とか分布とかかなり詳しく書かれているからこれを見ればモンスターのことが良くわかる凄いものなんだよ」


 レイモンドはモンスター図鑑を手に得意気な表情である。このモンスター図鑑は帝都周辺に生息するモンスターの特徴や分布が掲載されている優れものなのである。レイモンドはこの図鑑をすごく気に入っており、マシューとの冒険を始める際絶対に必要になると思い持ち込んでいたのだ。


「へぇ、それは興味深い。ちょっと中を見ても良いかい?」


「もちろん。是非見てくれ。すごさが分かるから」


 ニコラは図鑑の中身が気になるようだ。レイモンドから快く図鑑を手渡されるとしばらく中をじっと読んでいた。しばらくしてニコラは図鑑を閉じ顔を上げた。その表情は良いものを見た時の表情と困惑している時の表情が入り混じった複雑なものであった。


「……レイモンド。さっき君は親父さんからこれを貰ったと言っていたな。お父さんは何をしている人なんだ?」


 どうやら何か気になることがあるようだ。しかしレイモンドは自分の父親は帝都で仕事をしていること以外知らないのである。故に帝都でどんな仕事をしているのか聞かれても答えられないのである。


「……親父の仕事か。……帝都で何かしている以外知らないや」


「なるほど、ちなみに親父さんの名前を聞いても?」


「親父の名前はリチャードだよ。それがどうかしたのか?」


 レイモンドはニコラに聞かれたことを素直に答えた。レイモンドとしてはニコラが何を気になっているのか分からずやや居心地が悪い。レイモンドの父親の名前を聞いてようやくニコラは納得がいった顔に変わった。


「なるほど、リチャードか。それなら問題無いな。僕の記憶が正しければレイモンドの親父さんは帝都の書庫の役人をしているはずだよ。書庫に行ってみると良い」


「へぇ、親父は書庫で仕事をしているのか。……ちなみにその書庫ってのはどう言う場所だ?」


「書庫は様々な本を保存していて許可が得られれば自由に閲覧が出来る施設のことだよ。貴重な本が数多く保存されているから帝都にとってかなり重要な施設になるね。書庫に保存されている本の一部は買い上げることが出来る。その図鑑は見たところかなり貴重な本だ。それこそ書庫に置いてあるようなレベルのね」


 ここまで聞いてようやく2人はニコラが何を知りたがっていたのかが分かった。ニコラは図鑑の入手経路を知りたがっていたのだ。


 確かにレイモンドの持つ図鑑は帝都周辺のモンスターの特徴や分布が詳しく記されたものであり、ニコラの言う書庫に保存されて然るべき代物だろう。帝都に来たことがないレイモンドがなぜそれを持っているのか疑問に思っても無理は無いだろう。


「書庫に置いてあるような本をレイモンドがなぜ持っているのか気になったと」


「まさにそう言うことだよ。もしレイモンドの親父さんが違法に入手していたのなら僕は騎士としてそれを見過ごすことは出来ないからね」


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