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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第5章 希望を巡る謀略
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第23話 始まりは近づく

 読んでくださりありがとうございます。とうとう警護が始まる朝がやってきました。


「……おはよう」


「あぁ、おはようレイモンド。……眠そうだね」


「いやぁ、どうも眠りが浅くてね。……緊張しているのかな」


 どうやらレイモンドもどこか緊張していたようだ。4人の中で最も普段通りなのはエレナであるようだ。……もっともその自覚は無いようだが。


「先に起きていたからエルヴィスと2人で食料を貰って来たよ。ちょっと早いけど朝食にしよう」


「お、もう貰って来てくれたのか。それはありがたい」


 朝食が食べられるとあってレイモンドは嬉しそうである。マシューは貰った袋から水の入った瓶と乾パン、そして干し肉を取り出した。中身は昨日の夕方に支給されたものと変わらない。どうやら毎回同じものが支給されるようだ。


「……これ毎回中身は同じなのか?」


「かもね。それがどうした?」


「さすがに毎回乾パンだと飽きて来そうだなって思ってよ。……まあ干し肉は飽きないだろうけどさ」


 そう言いながらレイモンドは干し肉にかじりついていた。大量の人数に支給する都合上レパートリーがそう多くないのは理解出来る。だが毎度毎度同じ中身では後が辛くなるのだ。声にこそ出していないがマシューも薄らと同じことを考えていた。


 その時、扉がノックされた。4人の視線が瞬時に扉に集中する。鍵をかけていない扉がゆっくりと開き扉からポールが顔をのぞかせた。


「お、もう起きていたか」


「おはようポール。……何かあったのか?」


「もうすぐ集合がかかることを知らせておこうと思ってな。今から30分後にこの建物を出た広場で集合がかかっているのさ」


 《希望》の象徴の警護がいつ始まるのか知らないマシューたちにとってそれは有益な情報である。知らないかもしれないとポールは気を利かせてくれたのだ。


「そうか、もうすぐ集合時間なんだな。教えてくれてありがとう。……それでええと、広場ってのはどこなんだ?」


「あぁ、そうか。広場と言っても通じないか。……それじゃあ私が案内しよう。20分後に一階で待っていてくれ」


「了解」


 それだけ伝えてポールはまたどこかへ去っていったのだ。案内してくれるのはかなりありがたいことである。マシューたちは支給された食料を全て胃に収めるとすぐに身支度を始めたのだ。


 身支度と言ってもそう時間はかからない。装備がきちんと装着されているか確かめたり、収納袋を縛っている結び目が緩んでいないように結び直す程度のものである。約10分で身支度を整えたマシューたちは約束の時間まで少し時間を持て余していた。


「……もうすぐだな」


「あぁ。……せっかく呼ばれたんだ。役割はきっちり果たさないとな」


 今マシューたちは【遮音インスレイト】を発動させていない。発動させるつもりもない故にここでの会話は全て筒抜けである。聞く人がいれば……の話だが。


 とは言え不用心にベラベラ話すことはしない。当たり障りのない話をしながら徐々にマシューたちは来るべき時に備えて言葉を交わしながら気分を高めていた。そしてそろそろ約束の時間である。


「……さて、そろそろ出ようか」


「おう。……いよいよ……だな」


「あぁ。……悔いのないようにしよう」


 こうして気持ちを高めたマシューたちは真剣な表情で傭兵としての敬語に向かうためにポールとの待ち合わせ場所である一階へ向かったのである。


 階段を降りると既にポールは来ていたようで柱にもたれながら4人が来るのを待っていた。それに気付いた4人は急いでポールのもとへ駆け寄ったのである。


「……お、来たか」


「申し訳ない。もう来ていたとは思ってなかった」


「準備に思ったより時間がかからなくてね。君たちが来たのも20分より少し早いくらいだ。申し訳なさを感じることは無い。……さ、広場に案内しよう」


 そう言うとポールはゆっくりと建物の入り口へ歩き始めた。もうすぐ警護が始まる。緊張と高揚を感じながらマシューはポールの後に続いた。


 建物の外に出ると前方に聖騎士らしき人が何人か見えたのである。彼らはどこかを目指して歩いているようだ。ポールもまた同じ方向を向いて歩いている。どうやら先に行く聖騎士も同じ場所を目指しているようだ。しばらく歩くと何やら騒がしい人の声が聞こえて来る。広場の近くまで来た。そんな実感をマシューは感じていた。


「昨日も思ったが凄い人数だな。……彼らは全員が聖騎士なのか?」


「もちろん。神聖の騎士団ユニコーンは最も規模が大きい騎士団だからね。それにマシューはこの人数に驚いているが、今日この場所に神聖の騎士団の全ての聖騎士が集まっている訳じゃあない。一部の聖騎士は帝都での仕事があるからね」


「……」


 マシューは言葉を失っていた。マシューの目の前には今回の警護に参加するであろう聖騎士たちが並んでいたのだ。その人数は昨日の夕方、食料の支給の際に見たよりも多く感じられる。もしこの人数が一度に集結したならばあの建物の一階は軽く埋まってしまうだろう。


「それに全員が聖騎士という訳じゃ無い。よく見ると分かるが聖騎士特有の白と銀の鎧を着ていないものが何人か点在している。……彼らはマシューたちと同じく参加を要請された傭兵だよ」



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