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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第5章 希望を巡る謀略
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第22話 既にバレている

 読んでくださりありがとうございます。データベースの書き換えはどうやらバレているようです。


 彼が開いているデータは元々マークと言う騎士の個人情報が載っているものである。マルクの顔を知るこの男はマルクのデータが違う人間と入れ替えられていることにすぐに気が付いたのだ。個人情報が入れ替えられているのは別に珍しいことではなく、むしろよくあることである。現に彼自身何度もデータベースの個人情報を入れ替えた経験があるのだ。


 見張り以外誰もいない自室の中で1人彼は微笑んでいた。彼のアクセス権限を持ってすればマルクの個人情報にアクセスした人物のログを見ることも出来るのである。そして目的のログを突き止めた彼は一瞬真顔になったのだ。彼にとっては意外な人物のログがそこに記されていたからである。


「……ふむ、一応聞いておくか。……見張りの君。すまないがマギーを呼んできてくれ」


「かしこまりました」


 見張りの男はすぐに部屋を去りマギーと言う名の彼の側近を呼びに行った。その間に彼は表示されているログをゆっくりと確かめていた。このログによればつい先程アクセスして数点のデータを確認しているようだ。そしてそれより前のアクセス履歴はもう何年も前のことである。その履歴はアクセスが不自然なものであることを如実に現していた。


 やがて扉をノックされ初老の男がゆっくりと部屋の中へ入って来た。少し困惑の表情をしているようだ。身に覚えが無いのだから仕方ないだろう。


「……団長、お呼びでしょうか」


 団長。そう呼ばれた彼はゆっくりと顔を上げた。神聖の騎士団ユニコーンの騎士団長ガブリエル・クラーク。それが彼の名前である。


「あぁ、マギーか。君にひとつ尋ねたいことがある。……答えてくれるね?」


「……何でしょうか」


「君のアクセス権限でデータベースへのアクセスが確認されている。……心当たりは?」


 マギーの眉間のしわがさらに深くなった。相当困惑しているようだ。身に覚えの無いことを聞かれているのだから無理もない。


「……ありませんねぇ。団長が言うんですから私のアクセス権限なのは間違いないんでしょうが、私には何の心当たりもありません」


 マギーのその返答はガブリエルにとって満足のいくものだったようだ。ガブリエルは微笑みながら手の甲に頬を乗せた。


「……よろしい、質問を変えよう。マギー、君のアクセス権限を使ってアクセスを試みようとする人間に心当たりはあるか?」


「……なるほど、それならあるかもしれませんね。……まあ、今何をしているかも分からぬ人ですが。そもそも坊ちゃんは生きておられるんです?」


 マギーが坊ちゃんと言ったのは昔を思い出したからであろうか。そしてマギーの言う坊ちゃんが誰のことなのかはガブリエルにも分かっていた。


「ふふ、やはりあいつか。……マギーは傭兵希望者の顔写真を見たか?」


「いえ、見てません。……それが何か?」


「傭兵希望者の中に名前こそエヴァンとあるが、エルヴィスの顔写真が写っていたよ。そしてあいつのログで少し面白いことが分かった。……どうやら傭兵の中に勇者候補が紛れているらしい」


「……勇者候補と言いますと。暗殺したとかいうあの男の息子ですか?」


「そうだ。まだ若いが半数以上の秘宝を手に入れているらしい。……これ以上手に入れさせるわけにはいかないな」


 ガブリエルはそう言うとニヤリと笑った。マシューたちの存在もマシューたちがデータベースで何を見ていたのかも全てガブリエルに筒抜けだったのである。






 そして朝がやって来た。太陽はまだ昇っていないがマシューは既に目覚めていた。何となく心がざわついているのを感じる。それは傭兵が始まる緊張感かそれとも心のどこかで不安を感じているのか。とにかくマシューは朝早くに目覚めてしまったのである。


 起きてしまったものは仕方がない。マシューは他の皆を起こさないよう注意しながらベッドから降り早々に準備を始めたのだ。


 音は出していないはずだがベッドが動く気配がした。様子を伺うとエルヴィスが起きて来たらしい。眠そうな顔で目を擦っていた。


「……おはようマシュー」


「おはようエルヴィス。……もう起きるのかい?」


「あぁ。目が覚めてしまったからね」


 そう言うとエルヴィスは静かにベッドから降りた。静かな部屋でマシューとエルヴィスの声だけが少し響いたが他の2人はまだ眠っているようだ。2人とも静かに寝息を立てている。


「……もう朝食の支給は始まっているだろうか」


「どうだろう。……騎士団の仕事は朝早くのものもあるからもう支給は始まっているかもしれないな」


「それなら貰いに行こうか。4人いる必要は無いみたいだしね」


 昨日の夜支給される食料を貰った際に食料の支給は部屋ごとにされることを4人は知ったのだ。つまり今起きているのはマシューとエルヴィスだけだが2人だけでも4人分受け取ることが出来るのである。


 2人が食料を貰って部屋へ帰って来るとそのタイミングでレイモンドとエレナも起きて来たようだ。あまり眠れなかったのかレイモンドは眠そうにぼうっとしていた。


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