表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第5章 希望を巡る謀略
181/234

第17話 今日くらいは

 読んでくださりありがとうございます。マシューたちの役割が決まりました。


「ポール。彼らを部屋に案内してやってくれ」


「かしこまりました」


「……部屋?」


「君たちが寝るための部屋さ。簡素なものだが一応手配しておいた。明日から傭兵としての時間が始まる。……今日くらいはゆっくり休んでもらおうと思ってな」


 どうやらアンガスはマシューたちのために部屋を手配してくれたようだ。それ自体はすごく嬉しいことではあるものの、今日くらいという単語が少しばかり気になって素直には喜べなかった。


「さ、案内しよう。ついて来たまえ」


 早速案内してくれるようでポールはマシューたちに部屋の外へ出るように促した。そうしてマシューたちが部屋を出た後、アンガスはひとり部屋の中で静かに茶を飲んでいた。飲んでいる茶はいつも愛飲するものであり普段なら茶葉の甘味をゆっくりと舌で味わうのだ。アンガスはそうやってお気に入りの茶を飲む時間が好きであった。


 ……だが今静かに飲んでいる茶から甘味は感じられなかった。それは飲んでいる茶がいつも飲むものではない訳でも、アンガスの味覚がおかしくなった訳でも無い。人知れず緊張に沈む自分を自覚しながらアンガスは再び味のしない茶を口に含み小さく笑ったのだ。




「ここが君たちに手配された部屋だ」


 ポールに案内されてたどり着いたその部屋は人数分のベッドとやや大きなテーブルがひとつ置かれているだけの簡素な部屋であった。だがマシューたちからすればそもそも自分たちの部屋は無いと思っていたためこんな部屋でも相当ありがたいものなのだ。


「ありがとう。……ちなみにゲートタウンで食事が取れる場所はどこ?」


「それは諦めてくれ。ゲートタウンはそもそも客人をもてなす場所ではない。新興都市に行けば多少はあるんだが、大抵皆支給される携帯食料で誤魔化している。携帯食料の支給は朝と夕方の2回、この建物の一階で配られているな。通行証を出せば問題なく受け取ることが出来る。……これで質問の答えになっているか?」


「ありがとう。それじゃあ夕方に食料をもらいに行くとするよ」


「そうしてくれ。……他に何か質問はあるか?」


「……ええと、俺たちが傭兵として警護に加わるのは明日からなんだよね?」


「あぁ、なるほど。そういえばその辺りの詳しい説明はまだだったか。そもそも警護自体はまだ始まっていないのだよ。私が聞いた話では明日の朝集会をしてから警護が開始となるそうだ。朝と言っても携帯食料が配られ始めた後の話。それまでは自由に行動してくれて構わない」


「分かった。……これでもう特に質問は無いかな」


「そうか。それじゃあ私はこれで」


 そう言うとポールはさっさと部屋を出て行った。部屋にはもちろん4人しかいない。だが念には念を入れておく必要があるだろう。マシューはエルヴィスの顔に視線を向けた。何が言いたいかそれで理解したエルヴィスは収納袋から魔水晶を取り出すと小さく魔力を込めた。


「【遮音インスレイト】」


 エルヴィスが取り出した魔水晶の効果は【遮音インスレイト】。先程アンガスも使った魔水晶であり、かつてエルヴィスが書庫で使用したものでもある。そして【遮音インスレイト】が発動された状態でまずマシューたちが行ったのは部屋の点検である。


「……特に問題なさそうだな」


「あぁ、特にこれと言った魔水晶の類は見つけられない。問題ないと考えていいだろう」


 マシューたちが探していたのは魔水晶である。例えば【聴覚共有ヒアリングシェア】や【記録レコード】の魔水晶が見つかったならば部屋の会話が盗み聞きされる可能性があるのだ。【遮音インスレイト】で4人以外に聞かれないようにするのならここまで対策する必要があるだろう。


「……ふぅ、とりあえず一息つけそうだな」


「そうだね。……しかしまさかあんなに重要な役割を頼まれるとはね」


 エルヴィスのその呟きに他の3人もほぼ同時に頷いた。マシューたちは傭兵として《希望》の象徴を警護するのだとばかり思っていたのだ。


 だが実際にここまで来て頼まれたのは《希望》の象徴の警護に加え、マルクとしてやって来る騎士を無力化し撃退することである。しかもそのことを知っているのはマシューたちのみ。かなり重要な役割を頼まれたと考えていいだろう。


「……まあ、アンガスとすればあの内容を色々な人に話すことは出来ない。どこで話が漏れるか分からないからな。話す人は限定しておくべきではある」


「それは分かるがよ。……俺らからすれば他にも保険はかけておいて欲しいもんだぜ」


「まあ、それはアンガスからの信頼ということだろう。僕たちはそれに応える以外の選択肢は無いさ。話をもう受けた後だしね」


「それもそうか。……まぁ、そもそも新興都市に行くことを決めた時点で危険に飛び込むことは分かってはいた。話を受けた以上は頑張るしか無い」


 そう。4人には頑張る以外の選択肢が残されていないのだ。アンガスがマシューたちを信頼してその役目を任せてくれたのだ。その思いには応える必要があるのだ。


「……そういえば」


「……? 何か気付いたのか?」


「傭兵は5人で班を組むんだろう? 俺たちは4人だからあと1人追加される。それはいったい誰なんだろうか」


「話では1人で警護出来るだけの実力者であるらしい。だから僕は最初アンガスが加わるのではと思っていた。……だがそれはどうも違うようだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ