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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第5章 希望を巡る謀略
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第14話 情報は人知れず入れ替わる

 読んでくださりありがとうございます。ヒントとはいったい何なのでしょうか


「……この世界にいる人々はほぼ全員、写真データを含む個人情報をデータベースへ記録される。無論漏れはあるものの、帝都に訪れた人ならば全て登録されているものと思ってくれて良い。そしてそのデータベースは各所で自由に閲覧され活用されている。……例えばゲートタウンでの傭兵登録のようにな。……そしてそのデータベースの編集権限は騎士団の副団長以上の役職に就いているものに限られているのだ」


 どうやらこれがヒントのようだが、アンガスが何を言っているのかよく分からなかった。分かることはアンガスがそのデータベースとやらの編集権限を持つ限られた人であることくらいである。


「編集? ……ということはアンガスはそれを自由に書き換えられる?」


「そうだ。私は神聖の騎士団副団長。当然自由に編集することが出来る。……人間は面白いものでな。変化すると予告されていてもそれが少しずつの変化ならば中々気付くことが出来なくなる生き物なのさ。……変わると思っていないものであれば、なおさら気付くことは不可能に近くなる」


 変わると思っていないもの。恐らくこれが指すものは先程話に出て来たデータベースだろう。つまり少しずつ変化させたならばデータベースの内容が多少変わっていても気付けないという意味である。


「……俺たちの個人情報が入れ替わっている?」


「ほう。……入れ替わりにすぐに気付くとはな。さすがは《知恵》の象徴を持つものと言ったところか」


「つまり……元々偽名だった人が存在しているということか」


「ご名答だ。君たちが現在名乗っている偽名は全て元々その名前だった人物が存在している名前だ。彼らは帝都に住み帝都で人生を終える人間。この場所に来ることは決して無い。故に入れ替わっても何の問題も無い。……そしてそれによって例えエルヴィスが顔を見せたとしても誰も君が神聖の騎士団騎士団長のかつての息子だとは気付かない。……なにせデータベースに載っているのはエヴァンというただの人間なのだからな」


 これがエルヴィスが兜を脱ぎ顔を見せても何も問題無かった理由である。そしてポールが登録の直前、少し戸惑ったとしても話を合わせろと言ったのもこの理由からである。職員たちからすれば目の前にいるのはエルヴィスではなくエヴァンなのである。そんな職員に対して自分はエルヴィスだと言えば、それこそ混乱は避けられないだろう。


 アンガスのこの話は先程起こった不可解な出来事を全て説明するものであり、3人はそれぞれで納得の表情を浮かべたのだ。……だがマシューにはまだ不可解な点が残っているのだ。新しい疑問が浮かび上がったと言った方が正しいのかもしれない。


「……なぜそんなことを?」


「なぜ? もちろん君たちに問題無く傭兵として参加してもらうためだ」


「……だがゲートタウンにいる職員は神聖の騎士団関係者じゃないのか? 味方まで騙す必要がどこにあるんだ」


 マシューが言い終わると一気に部屋が静まり返ったのだ。それはまるで【遮音インスレイト】が発動されたような静けさである。その静けさの中じっとマシューを見つめていたアンガスはゆっくりと口を開いた。低くよく響く声が聞こえて来た。


「……やはり頭が回るな。まだ何も言っていないというのにそこに気が付くとはね」


「……なぜかを教えてもらえるか?」


「それはつまり私がなぜ味方であるはずの職員まで欺こうとしているか……という意味だね?」


 アンガスのその言葉にマシューは無言で頷いた。本来ならば味方である職員まで欺く必要は無いはずである。事情を説明すれば欺かずとも思い通りに動いてくれるはずである。ここから考えられる理由は2つあるのだ。1つは目的を果たすためには味方である職員まで欺いておく必要があるからであり、もう1つは……そもそも味方ではないからである。


「……その質問に答える前にまずしておかなければいけない話がある。《希望》の象徴についてだ。《希望》の象徴と呼ばれる虹色の紋章は元々新興都市で守られていたものでは無い。勇者候補が手に入れることを阻むために神聖の騎士団が勝手に持ち出したものなのだ」


「……そうなのか?」


「あぁ、そうだ。そもそも新興都市に試練の台座は存在していない。象徴を守る場所として不適格なのは明白だ」


 確かに思い返せば今まで手に入れた《七つの秘宝》のその全ては何かしらの台座に置かれており、何かしらの試練が行われていたのだ。アンガスの言うように新興都市に試練の台座が無く、試練も何も無いのであれば元々あった場所が新興都市で無いのも頷けるだろう。


「だからこそ私は《希望》の象徴は本来あるべき場所にあるべきだと考えているのだ。……だがそれを騎士団長は許しはしないだろう。なにせ《希望》の象徴を新興都市へ移し、勇者候補の手に渡らぬよう警護を始めたのは他ならぬ騎士団長なのだからね」


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