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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第5章 希望を巡る謀略
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第10話 ポールの答えが聞きたい

 読んでくださりありがとうございます。マシューは何を考えているんでしょうか。


 マシューは呟いたきり黙って何も言わなくなった。ポールはしばらく様子をうかがっていたようだがマシューからこれ以上の質問が来ないと判断したのだろう。わざとらしく咳払いをしてから再び口を開いたのだ。


「……私が偽名を使って君たちに出会ったのはそれが理由だ。そして今君たちにわざわざ偽名であることを明かしたのも理由は同じだ」


「どういう意味だ? もっと分かりやすく具体的に言ってくれ」


「要らぬ不信感を買わないようにということだよ。理由は詳しく知らないが、君たちはどうやら私が聖騎士だと不信感を抱くらしい。だから最初会った時私が聖騎士であることを伏せた。……しかしこれは私が聖騎士であることを君たちが知ればたちまち逆転してしまう危険な方法でもある。……実際私と嵐馬平原で出会った時、君たちは多少の不信感を持っていたんじゃないかい?」


 ポールのその言葉にレイモンドは素直に頷いた。確かにポールと嵐馬平原で会った時4人とも身構えたのである。それはどうしてここにポールがいるのかという困惑がそうさせたのだが、多少の不信感を持っていたことも事実である。何せその前に会った時にエルヴィスから聖騎士ではないかと疑いを持たれているのだ。そんな状態で会えば誰だって不信感を持つだろう。


「……遠慮なく言っていいならば、俺はかなり不信感を持った。いまだに俺はあんたが嘘をついている可能性を捨てていない」


「それは別に構わない。私がレイモンドの立場なら私でも不信感を持つからね。……ただ、その上で私はアンガス様からの指示を遂行するために君たちに傭兵として来てもらいたいのだよ。多少の不信感を持った状態で、私が偽名を使っていたことが分かれば……。レイモンド、君ならどうする?」


「……俺が判断することじゃないが、俺ならすぐに逃げるな。気味が悪すぎる」


「私も同感だ。だからこそ君たちが私の名前をパウロだと思っているということに気付いた瞬間に、君たちに本当の名前を明かすべきだと思ったのさ。何度も言うが、私はあくまでも上官であるアンガス様の指示に従う。故にアンガス様が君たちを傭兵にと思われた以上は、私と君たちが思い違いをすることは本意ではないのだよ」


 ポールはまっすぐ前を見てそう言ったのだ。その表情はとても嘘をついている人間には見えなかった。これでもし全てが嘘ならば、見抜けなくても仕方ないだろう。


「……なるほどね。それで偽名だと明かした訳なんだな」


「そういうことだ」


「……ひとつ聞いてもいいか?」


 ずっと黙り込んでいたマシューだったがようやく口を開いたのである。いったいマシューは何を聞くのだろうか。ポールだけではなく、全員の視線がマシューに集まっていた。


「……アンガスはなぜそこまでして俺たちを傭兵にしようとしているんだ?」


「……それはなんとも分か」

「分からないのは知っている。……ポール自身はどう思うのか聞かせてくれ」


 マシューのその質問はポールが答えられるようなものでは無かった。それこそ会えるかは分からないが本人に聞くべき質問である。当然ポールの返答は分からないであるし、そしてそれをマシューも分かっていた。そしてその上でマシューはそれ以外の答えを求めたのだ。そのことを理解したポールは目を閉じて考え始めた。


「……私自身がどう思うかの答えになっているかは分からないが」


「聞かせてくれ。俺はポールの答えが聞きたいんだ」


「分かった。……私が思うにアンガス様は、自分の正しいと思う道を進む方なのだ。そしてその道を進むために努力を惜しまない方なのだよ。それはアンガス様が副団長となられてからも変わる事はない。……恐らくだが、君たちが今回傭兵として《希望》の象徴の警護をさせようとしているのにも何か理由があるはずなんだ。なにせ随分と前からそんなことを考えておられたようだからね」


「……随分と前から?」


「あぁ。……私が君たちと初めて会った時を覚えているかい? あの時には既にアンガス様は君たちにこの傭兵の仕事を頼むことを考えておられたらしい。……本当かどうかは分からないがね」


「……なるほどね」


「やはり答えになっていないな。……申し訳ない」


 ポールは少し申し訳無さそうな表情である。ポール自身の答えを聞こうとしたのにはマシューなりの理由があるのだろう。それに上手く答えられなかったことに申し訳無さを感じているのだ。


 だがその予想に反してマシューは満足そうに微笑んだのである。どうやらマシューの求める答えが出来たようだ。


「いや、ありがとう。これで俺は迷いなく新興都市に行くことができる」


「そうか。……それならば良かった。それでは改めて、これより新興都市へ案内しよう。ついて来てくれたまえ」


 ポールはそう言ってにっこりと笑うと再び前を向いて紅玉の祠から広がる森の中へ入っていった。道のない獣道のような険しい道を4人はポールの後に続いて歩き始めた。


 歩き始めて数分が経過しただろうか。険しかったその道が比較的歩きやすい砂利道へと変わり、目の前には殺風景な街並みが広がっていた。どうやらここが新興都市の入り口のようだ。


「ここが新興都市か」


「いや、残念ながらここはまだ新興都市ではない。私たちが目指す新興都市はまだここからさらに進まなければいけない」


「……新興都市ではない?」


 新興都市ではない。そんなポールの言葉を聞いたマシューは思わず眉をひそめていた。そしてそんなマシューたちに気付いたのか見張りらしき人物が一番近い建物から出て来たのだ。その人物の顔を見た瞬間にマシューとレイモンドは顔が強張った。出て来たその人物に見覚えがあったのだ。


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